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毒親 第50話 闇の中の真実

第50話 闇の中の真実

リナの病室には静かな時間が流れていた。窓の外には冷たい冬の風が吹き、雪交じりの雨が降っている。カイはリナのベッドのそばに座り、彼女の手を優しく握りしめていた。リナの顔色は依然として優れなかったが、彼女は微笑みを浮かべ、カイの手に少し力を込めた。

「カイ……私、もう少し頑張れる気がするの。」リナが小さく囁いた。

「無理しなくていいよ。でも、リナがそう思えるなら、俺も全力で支えるから。」カイの声は優しさに満ちていた。

その時、病室のドアが静かに開き、サキが顔を覗かせた。彼女は手に温かいスープの入った容器を持っている。

「お姉ちゃんが少しでも食べられそうなものを作ってきたんだけど……。」サキの声にはほんの少しの緊張が混じっていた。

リナは微笑みながら「ありがとう、サキ。あなたが作ったものなら、きっと美味しいに決まってるわ。」と答えた。

病室に三人の穏やかな空気が流れる中、突然、カイの携帯電話が鳴り響いた。画面には見慣れない番号が表示されている。カイは一瞬迷ったが、電話を取ることにした。

「もしもし……」

電話の向こうから聞こえた声は低く、冷たい響きを持っていた。それは、美和だった。

「カイ、話があるの。今すぐ会えない?」美和の声には緊張と何か隠されたものが混じっている。

「一体何の話ですか?今、リナの病室にいるんです。」カイは警戒心を隠さずに答えた。

「リナのことに関わる大事な話よ。……サキにも関係があるわ。」美和の言葉にカイの眉が険しくなった。

そのやり取りを聞いていたサキが不安そうにカイを見つめた。彼女の心には再び嫌な予感が押し寄せていた。

カイは電話を切り、サキに向かって言った。「ちょっと、美和さんに会ってくる。サキさん、リナをお願いできる?」

「うん……わかった、でも、気をつけて。」サキは心配そうに答えた。


カイが指定された場所に着くと、そこは薄暗い駐車場だった。美和は車の中で待っていた。彼が車に乗り込むと、美和は無言で一枚の書類を差し出した。

「これを見て。」美和の声はいつになく真剣だった。

カイが書類を手に取ると、そこにはリナに関する医療記録と、ある男性の名前が記されていた。その名前に見覚えがあったカイは、目を見開いた。

「これは……何なんですか?」カイは混乱を隠せなかった。

「リナの過去に関するものよ。そして、それがサキにどう関わっているか、知る必要があるわ。」美和は冷静に語ったが、その瞳には迷いが浮かんでいた。

「どうして今、こんなことを?」カイは怒りを抑えながら問いただした。

「リナのためよ。私は、彼女が真実を知らずにこのまま終わるのを見たくない。」美和の声には微かな震えが混じっていた。


この瞬間、物語は新たな局面を迎える。リナの過去、そしてサキに隠された秘密が徐々に明らかになり、家族の絆は再び試されることになる。カイは美和の言葉を信じるべきなのか、それとも全てを拒絶して家族を守るべきなのか。


つづく

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