哀しいホスト　最終話　ミサへの感謝と共に、新しい人生へ

最終話　ミサへの感謝と共に、新しい人生へ

タケルとのイベントから数か月が過ぎ、俺の生活は以前とはまるで違うものになっていた。地元の人々と関わり、地域に根ざした活動を通じて、心から「自分がここにいる意味」を感じられるようになっていたのだ。

タケルのサポートを受けながら、俺も少しずつ、地元の行事やボランティア活動に顔を出すようになった。人々と直接触れ合い、助け合う日々の中で、俺は自然と心が満たされるような感覚を覚えていた。ホスト時代に感じていた「一瞬の輝き」とは違う、もっと深い充実感が胸に広がっていた。

そんなある日、タケルが俺を呼び止めて話しかけてきた。

「キク、ここ最近の自分をどう思う？あの頃の自分とは違うだろ？」

彼の問いに、俺は笑って頷いた。

「そうだな。昔の俺とは違うよ。だけど、不思議と今の方が、自分らしくいられる気がするんだ」

タケルも頷き、静かに語りかけてくれた。

「キク、お前はやっぱりこういう生き方が似合ってるよ。ミサさんが望んでいたのも、きっとこういう姿だったんじゃないかな」

その言葉に、俺は少し目頭が熱くなった。ミサとの日々があったからこそ、今の俺がいる。彼女が教えてくれた「静かで地道な幸せ」が、俺の生き方を支えてくれている。

その日、俺は再びミサの墓前に立った。あの日以来の訪問だったが、ミサの写真に語りかけるときとは違い、今は心が不思議と晴れやかだった。

「ミサ、俺はお前と一緒に過ごした日々を、何よりも誇りに思ってるよ」

静かな風が頬を撫で、心がどこか安らぎに包まれた。もう、過去の自分に縛られることはない。ホストとしての光も、喪失の痛みも、すべてが今の自分を形作ってくれたものだと、心から思えるようになった。

「ありがとう、ミサ。お前がいたから、俺はこうして自分らしく生きられる」

墓前で頭を下げ、彼女への感謝の思いを胸に刻んだその瞬間、心の中でミサが優しく微笑んでいるような気がした。

翌日、俺は再び地元のイベントに参加し、地域の人々と笑顔で触れ合っていた。どんなに小さな仕事でも、今の自分にはその一つひとつが大切なものに感じられた。ホスト時代の輝きとは違うが、これが本当の意味での「生きる喜び」なのだと実感していた。

これからも、地に足をつけた自分の道を歩む。それが、俺とミサが共に生きた証であり、彼女が望んでいた俺の未来だった。

心からの感謝と共に、キクは新しい道へと歩み始めた。

完