7秒タイムマシン 第33話 再び家へ
第33話 再び家へ
儀式を終えたレン、エミリ、そしてアヤカは、周囲に広がる静寂の中で互いの手を握りしめた。アルケンの影響が取り除かれたかもしれないという安堵と、まだ見えない未来への不安が入り混じっていた。
「これで、本当に終わったのかな…?」アヤカが不安そうに呟いた。
レンは娘の肩に手を置き、力強く微笑んだ。「ああ、アヤカ。私たちは家に戻ることができる。ここまでやってきたんだ、もう大丈夫だ。」
エミリも優しく微笑み、アヤカの手を握りしめた。「そうよ、アヤカ。私たち家族は一緒だから、どんなことがあっても乗り越えられるわ。」
三人はゆっくりと廃村を後にし、車へと戻った。山道を下りながら、レンはエミリとアヤカに微笑みかけ、「これで元の生活に戻れる」と、自分に言い聞かせるように言った。
やがて、車はレンたちの家の前に到着した。静かな夜が広がっており、空には一つの月が穏やかに輝いていた。
「戻ってきたんだ…本当に家に帰ってきた。」レンは深呼吸をし、エミリとアヤカに向かって微笑んだ。
家に入ると、いつものように温かい空気が彼らを包み込んだ。リビングに集まった三人は、それぞれが安堵の息をつき、ソファに腰を下ろした。
「もう何も心配することはないわね。」エミリが微笑んで言った。
「うん、パパ、ママ、私も安心した。」アヤカも嬉しそうに答えた。
しかし、その安堵感は長くは続かなかった。突然、家の中に微かな揺れを感じたのだ。レンとエミリは顔を見合わせ、何が起きたのか理解しようとした。
「何だ…?」レンが立ち上がり、周囲を見回した。
すると、リビングの窓の外に不自然な光が差し込んできた。レンは驚きながらカーテンを引き、窓の外を見た。そこには、再び現れた薄紫色の月が輝いていた。
「また…あの月が…」エミリが驚きと恐怖を感じながら呟いた。
「どうして…?儀式は成功したはずなのに…」レンも困惑していた。
アヤカは不安そうに両親を見上げ、「パパ、ママ、どうしたの?どうしてまた月が…?」と尋ねた。
レンはアヤカを抱きしめ、「大丈夫だ、アヤカ。何が起こっても、私たちは一緒にいるから心配しないで。」と優しく言った。
しかし、心の中では、レンもエミリも深い不安を感じていた。儀式が成功したと思われたにもかかわらず、再び現れた紫色の月が、何か重大な問題が解決していないことを示しているように思えた。
「レン、私たちが何か見落としていたのかしら…?それとも、まだ何かをしなければならないの?」エミリが不安げに尋ねた。
レンは深く考え込みながら答えた。「わからない…でも、このまま放っておくわけにはいかない。もう一度、何が起きているのかを確かめなければならない。」
エミリも決意を固めた表情で頷いた。「そうね。私たちはここまで来たんだから、最後までやり遂げなきゃ。」
その夜、三人は再びリビングで集まり、これからの対策を話し合った。レンは巻物を再度確認し、何か見落としている点がないかを調べ始めた。
「もしかしたら、儀式の手順自体には間違いはなかったけれど、何かが不足していたのかもしれない。あるいは、もう一つの試練が残っているのか…」レンは自問自答しながら考え込んだ。
「何かの象徴が足りなかったのかもしれないわね。儀式に必要なものがまだあるのかもしれない。」エミリが提案した。
その時、アヤカがふと口を開いた。「パパ、ママ、あの預言者って、神様の意志を伝える人なんだよね?もしかして、私たちが何かお願いすることが大事なんじゃない?」
その言葉に、レンとエミリはハッとした。「アヤカ、もしかしたら君の言う通りかもしれない。」レンは娘を見つめ、再び儀式の場所に戻る決意を固めた。
「もう一度、廃村に行こう。そこで何かがわかるかもしれない。」レンは決意を新たに言った。
翌日、レン、エミリ、そしてアヤカは再び廃村へと向かった。彼らの心には、不安と希望が交錯していた。三人はもう一度儀式の場所に立ち、今度はアヤカの言葉に従い、心の中で神に願いを捧げた。
すると、石板の文字が再び光を放ち始め、周囲の空気が揺らいだ。その光景に三人は息を呑んだが、静かに目を閉じて祈りを捧げ続けた。
やがて、光が消え去り、再び静寂が戻った。三人が目を開けると、空には薄紫色の月はなく、いつもの青い空が広がっていた。
「成功した…」レンはようやく安堵の息をつき、家族を抱きしめた。
エミリも涙を浮かべながら微笑み、「これで本当に終わったのね…私たちは家に帰れる。」と感動の言葉を口にした。
アヤカも嬉しそうに笑い、「パパ、ママ、私たち、また元の世界に戻れるね!」と喜びを爆発させた。
三人は再び家に戻り、今度こそ平和な日常を取り戻すことができると信じていた。儀式は完全に成功し、彼らの世界はようやく安定を取り戻したのだった。
しかし、彼らの心の中には、影の預言者が伝えた教訓が深く刻まれていた。家族の絆を信じ、共に困難を乗り越えることで、どんな未来でも乗り越えられるという確信を持って、彼らは新たな日常へと歩み始めた。
つづく
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