医師年俸の算定根拠を考える
前回<転職の「負のスパイラル」に ご注意 >では、高年俸に拘っても問題のない医師と、そうでない医師の違いについて私見を述べました。
今回は、架空の常勤医師の求人票から、その年俸の算定根拠を考えます。
とはいえ、今回は算数の計算ばかりで、読むには退屈な内容です。
結論は「病棟をしっかり担当していただいて、入院収益を増せる先生は給与アップ交渉をエージェントがしやすい」ということがお分かりいただければ十分です。
勤務医の週5日の年俸は、大体1400~1500万円らしいが・・・
勤務医の年俸は、大学、公立、公的、民間で差があり、科目や年齢、地方や都市によっても異なりますが、凡そは1500万円と言われています。
そこで、よくある求人例をもとにシミュレーションをし、その根拠を確認してみます。下に医師求人例を掲載しますが、よく目にする募集を模した架空のものです。
この求人例では、週5日勤務、当直なし、年俸は1500万円からの募集で、外来は週3コマを担当、病棟は20人の担当です。求人票には表れない前提条件として、DPC算定外の病院で、人件費率を55%とします。
年俸の計算の根拠として、令和3年の全国公私病院連盟「病院運営実態分析調査の概要」を用います。患者1人の1日単価を外来は11,000円、入院は32,600円で計算します。
上記の求人では、毎週3コマの外来で1コマ患者数は20人。週5日で均すと、外来1日あたりの患者数は12人になります。掛け算すると外来1日あたりの売り上げは13万2000円。(11,000円×12人)
病棟管理は20床~30床の希望ですが、初年度は少し届かず18床とします。
同じく1日あたりの売り上げは58万6800円です。(32,600円×18床)
外来と病棟を合わせた医師一人の一日売上は71万8800円 です。
週勤務日数は5日で年間休日を112日とし、年間勤務日数を253日とすると、売り上げは、年間で約1億8000万円(718,800円×253日=181,856,400円)になります。
医療には医師以外の職員も携わります。
人件費率55%で計算すると、給与費は約1億円。年俸1500万円ならば、医師の取り分は給与費の15%になります。これは救急対応、検査や処置などの診療報酬は含みませんが、巷間言われるように給与費の15%が年俸の目安のようにみえます。この15%が高いか低いかは、立場によって意見が別れるところです。
病棟担当数を5人増やせばどうなるのか
次に、同じ条件で病棟担当を5人増やして23人で計算します。
病棟管理を5人増やせば、23床の担当で1日あたり88万1800円。年間収益は2億2309万円となり、給与費は年間1億2270万円になります。給与費の15%で医師年俸を算定すると、約1840万円に相当します。
病棟管理を1日5人増やすと病院は年間で2268万円の増収になります。
病院は入院収益のウェイトが高く、机上ではこうした計算が成立します。
もちろん売上単価や人件費率、その他の要因により結果は違ったものになります。
もし、ご自身の売り上げに自覚的で数値で説明できるなら、エージェントは、これを元に年俸交渉に臨みます。確証が得られたならば、エージェントは次のようなアピールをするでしょう。
・「この先生は、初診外来を大切にされていました」
・「かかりつけ医への逆紹介に力を入れておられ、内視鏡検査の紹介をたくさん受けておられた先生です」
・「高齢者のサブアキュートの入院に積極的で、病床稼働率と回転率を高めてこられた実績のある先生です」
・「後方連携先とのネットワークで、とても高い評価を得ておられました」
どうでしょう、貴院で獲得しませんか?
医師向けの小冊子「転ばぬ先の杖」では、このあと内視鏡専門クリニックの年俸の算定根拠の考察を続けますが、NOTEでの「医師紹介業の舞台裏」は今回で一旦終了させていただきます。
次回は、少しお時間をいただいて「3つの転職戦略」について考えます。
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