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朗読 「蝿」横光利一 後編
前編からのんびりと
それぞれの登場人物の背景を紹介してきた物語はここから後編
一番はじめに登場した気の毒すぎる農婦は
馭者が(最初の馬車は出たばかりだが)
「二番が出るぞ」と言ったきり将棋盤の前から動かず、いつ馬車が出てくれるのかと
その時を今か、今かと待っていて(すでに2時間待ちらしい)はやる気持ちを抑えながら先に出た馬車に乗れなかったことを悔いて自分を責めているのかも知れない
馬車で三時間はかかる、と彼女は言っているので人の脚、それも女性ではとうてい辿り着くのが難しい道のりなんだろうと想像ができるので馬車を頼る事しかできず、本当にお気の毒さま、としか言いようのない苛立ちを読者として馭者に感じてしまうのだけれど馭者には馭者なりの生き様が行動に表れていて
それが彼にとっては
すご〜く大事な事なんだと説明があり、人の気持ちというものは
どうにもできないもんだと思わされる。
蝿は最初は蜘蛛の巣に捕まっていて
そのままだったら蜘蛛が来て食べられていたわけだけれど(死の淵にいる)
自力でそこから逃れる事に成功し、物語最後の場面では生命の象徴として空に飛び立つ様子が生き生きと描かれている
宿場に集まってきた人々の命は
老いたひとりの馭者の手に委ねられ
一連托生、自分たちに何が起きたのか、おそらく馭者自身も理解する間も無いままに
全員が死の淵に沈んでゆく
という物語でした
読めば読むほど深いです
鳥肌が立っちゃいます
長々と書きましたが
読んでくださり
ありがとうございました