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老親が精神科に入院しましたその4

二ヶ月後



この頃から異常行動が目立つようになりました。
印象深かったことを挙げておきます。

  1. 夜中(深夜2時頃)に留守電が延々と入る。深夜なので遅れて気付き、取ると返事はなくその後も延々語り続ける。

  2. いきなり押しかけて来て語り始める。(それまではアポなしで来ることはありませんでした)内容は「目も足も歯も悪くて一人では何も出来ない」ということ。これは深夜もありました。

  3. 「こんなに痩せてしまった」と腕や鎖骨を見せようとする。

  4. 3の歯バージョン。入れ歯を見せられた。「入れ歯の調子が悪く新しく作り直さねばならない」と言った趣旨の話をされた。

  5. 「火を付けたが死ねなかった」と語る。火災報知器が鳴ったり、小火の形跡はなし。

  6. ベランダから飛び降りようと思ったが、迷惑なのでやめたと語る。

  7. お風呂で溺死しようと思い、服のまま風呂に入ったが、死ねなかったと語る。実際に実行したのかは不明。

  8. 住所録をシュレッダーにかける。

これらはBの死から二ヶ月後、十日間くらいの間に起こった出来事です。
相変わらず不眠と食欲不振を訴えたため、再度強く「不調があるなら一度病院に行った方がいい」と進めましたが、行きたがりませんでした。
悠長に様子を見てしまったのは、Cと私が「無理にでも病院に連れて行った方が……」と思うようになって丁度一週間後にかかりつけの内科の予約が入っていたからです。とりあえずそちらの診察を受けてから判断したいと思いました。結果的にこれは間違った選択でした。

 内科クリニック


Aは三ヶ月に一度近所のクリニックに通っていました。診察の当日、Cも私もどうしても外せない用事があったので、Aは一人で診察を受けました。元々一人で診察を受けていましたし、この時、既に異常な行動をしはじめてましたが、それでも普段の行動にはそれほど問題がないように見えたからです。
Aは自分は「何も出来ない」と言いますが、食べ物を腐らせたり、家がゴミ屋敷化することはありませんでした。着ているものもきちんと洗濯してあります。確かに夜は寝れていないでしょうし、バランスの良い食事を出来ていたとは思えません。ですが、渡しておいた栄養補助食品のメイバランスは一日一度は飲んでいたようです。
実は私の親戚が認知症です。異常行動といえばそちらの方がすさまじいものがありました。
食器棚の中にインスタントラーメンが入ったどんぶり鉢を入れる。深夜に家から飛び出そうとする。深夜に騒いで警察を呼ばれる。人前で全裸になるなどです。
これに比べると上記した八項目とも、「そこまで異常ではない」と思えました。
素人判断では、Aは不眠と低栄養で認知の低下はあったでしょうが、認知症ではなかったように思えます。
暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたこともありません。

血液検査の結果は問題なし


クリニックでは先生の診察の一週間前、血液検査のためAは来院しています。Cと私が「病的なのでは?」と思い始めた頃です。その日も一人でクリニックに行きました。その時は看護婦さんが対応してくれて、先生には会わなかったようです。
看護婦さんとはいえ、一応かかりつけのクリニックの医療関係者に見て貰っている――。
今から言っても仕方ありませんが、この時普通に帰ってきたので、「家族には甘えてしまうが、外ではきちんと出来ている」と私達は判断してしまいました。看護婦さんに「死にたい」「つらい」などと話したようですが、流されたようです。
Aはクリニックに行き先生に会うのを大変怖れていました。
「こんな痩せてしまったのだから、きっと入院させられる」と言った趣旨のことを繰り返していました。
「家には居たくない」が「入院はしたくない」ようでした。
そしてAは一人で診察を受けて、戻ってきました。

血液検査の結果は問題なしでした。
確かに短期間で体重が落ちているが、脱水症状も起こしてないとのこと。
Aは不眠と食欲不振、「つらい」「死にたい」と先生にも訴えたようですが、「そういう時期である」と諭されたようです。食欲不振については食欲増進の胃腸薬を処方され、診察はまた三ヶ月後になりました。
Cと私は「ただの気持ちの落ち込みではない」と考えるようになった時期です。
まったく表情がなくなったり、逆に感情が高ぶり泣き出す、強めに抱きついたり、危険な場所でもたれかかる、物を投げるなど危ない行動も増えてきました。些細なことでパニックになり出したのもこの頃です。
内科的に問題がないからとこの状態の人を三ヶ月放置の判断は恐ろしいと思いました。数年継続して診察を受けており、Aが主治医と慕う先生でした。出来れば気付いて頂きたかったです。
この翌日に私は地域包括支援センターに連絡しました。
老親が精神科に入院しましたその5に続きます。

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