【ひといき小説其の一】黄昏
閑散とした駅前の公園には、私しか存在しなかった。
その一時に非日常を感じつつ、自販機に小銭を入れた。
時刻が17時になったらしい。時計台から独りでに響き渡る童歌を口づさみながら、私はコーヒーを飲んだ。
「カラスと一緒に帰りましょ」
先程までは雨天だった曇り空の隙間から、光がはみ出していた。太陽は見えないのに、そこにあるのだろうなと分かるのだから立派なものだ。
私は明日の仕事に憂鬱を感じつつ、スマホのパスワードを入力して放置ゲーのアイテム回収をした。
時刻は数分しか過ぎていないはずだったのに寒くなってきた。
太陽があるであろう場所を見やると、雲で太陽が覆い隠されていた。
「寒いなぁ」
言いつつ職場の上司に言われた言葉を思い出す。
『なんでこんなこともできないの?』
『それさっき教えたよね?』
年を重ねるほどまじまじと見せつけられる己の手際の悪さに嫌気がさしてくる。毎日毎日、私の無能さを堪えながら金を貰っている。
何が楽しいとも感じずに
「はぁ」
ため息は踏み切りの音で掻き消されていた。
カンカンカン____。
「もういかなきゃ」