スリジエ

俺は小さい頃から心臓の病気を患っている
だから恋愛とかそんなのはしないって決めてた

だがある日、俺は恋に落ちることになる

高校2年の春

学校に咲いているソメイヨシノを見ていると1人の女性が話しかけてくる

遥:君も桜見るの好きなの？

○:うん
この桜はソメイヨシノって種類なんだけどソメイヨシノの寿命は70年って言われてるんだ

遥:そうなんだ
詳しいんだね

○:何かに似てると思わない？

遥:なんだろ？

○:答えが出たら教えてよ
いつもここで見てるからさ

遥:わかったよ

そういうと遥香はスケッチブックを出して絵を描き始めた

○:へぇ
絵を描くのが好きなの？

遥:ちょっとだけね

○:完成したら見せてよ

遥:わかったよ

○:じゃあまた

久しぶりに人と話した気がした
そして俺は気づいたあの感覚は味わったことがない

これが恋ってやつなのか…
俺はあの子が好きなのか…
この想いは閉まっておこう
俺の命はもうそんなに長くないんだから

何事もなく昼休み

俺はまたあの場所へ

○:桜は綺麗だな

遥:また会ったね

○:朝の…

遥:遥香でいいよ

○:遥香か俺は○○
答えは見つかったかい？

遥:人の寿命に似てるのかなって

○:正解だよ

遥:私ね
医者になるのが夢なんだ

○:へぇ
じゃあ医学部に行くの？

遥:そのためにもっと勉強しなきゃ

○:遥香ならやれるよ

遥:そんな簡単じゃないけどね

○:だって桜のように綺麗な笑顔で夢の話をしてるんだやる前から諦めちゃダメだよ

遥:そうだよね

○:俺は応援してる

遥:まず○○くんより成績良くならないと

○:それは無理かな

遥:そこはちゃんと否定するんだ

○:だって遥香は優しいから友達との約束を断れないだろ？

遥:それは…

○:そういう優しい所もいいと思うよ
そんな遥香に恋してしまっているんだと思う

遥:えっ？

○:遥香が好きなんだよ

遥:私でいいの？

○:遥香がいいんだ

2人は付き合い始めた

○:遥香

遥:ん？

○:今日はどこに行こうか？

遥:家で映画でも見よっか

○:わかった

俺は悩んでいた

心臓のことを遥香に話すかどうか

遥:どんな映画がいい？

○:遥香が好きなやつ見よ

遥香の部屋には絵が飾ってある

○:それよりも絵…すごいね

遥:そうかな？

○:すごいと思うし
遥香の描く女の子って可愛いよね

遥:嬉しい

○:俺と遥香もこの絵みたいになれるかな

遥:んっ///
なれたらいいね///

この絵は男の子はタキシードを着て
女の子はウエディングドレスを着ていた

自分がなれないって1番わかってるのに…

俺は無意識に遥香を抱きしめていた

遥:○○…？///

○:照れてるの？
遥香はほんとに可愛いね

ちょっと離れてても聴こえる
遥香の心臓の音…少しはやい

○:来年の桜が咲く頃
桜を背景にして俺を描いてくれないか？

遥:描くよ！

○:ありがとう

1本映画を観終えて解散した

数ヶ月で遥香と色んな所に行った
そして遂にこの時が来てしまった

俺は目を覚ますと天井は真白
なぜ生きてるんだろう

冠動脈バイパス手術というのをしたらしい

手術後は何事もなく身体が動く

ただまた再発する可能性があり
その時は…という話も担当医から話されていた

久しぶりの学校

遥:久しぶりだね

○:あぁ久しぶり
なんか嬉しいな遥香の顔がまた見れて

遥:私も嬉しいよ
でもなんで休んでたの？

○:ちょっとした事情があってね

遥:浮気とか…してないよね？

○:んなことしないよ
いつもの場所行こうか？

遥:うん！

真:かっきー

遥:真佑ちゃん今日はごめんね

真:あっ愛しの彼氏くんか

じーっと見られている
この子は遥香の友達の田村真佑だ

○:田村さんは面白い人だな
俺の顔になにかついてますか？

真:別に○○くんなにかかっきーに隠してるでしょ？

○:は！？

なんでバレた？
田村さんは超能力者なのか？

遥:やっぱり…浮気…

○:遥香違うから
田村さんも変なこと言わないでよ！

真:ごめんごめん

遥:○○はここ好きだよね

○:この場所というより
桜が好きなんだよ

遥:もう花は散っちゃってるけどね

○:そうだな
来年が楽しみだよ

描いて貰った絵のタイトルは｢スリジエ｣にしようと思っている

真:やっぱりここか〜！

○:田村さん

真:真佑も一緒に食べる！

遥:○○いいかな？

○:いいよ

真:やったー！

これを許してしまったからこの日から昼休みを遥香と2人で過ごすことは少なくなった

まぁ3人で食べるのも楽しくないわけじゃない

遥香も田村さんも可愛いからね
いつまでもこれが続けばいいなと思ってる

3人仲良く進級して同じクラスになった

少し前に俺が頼んだ絵を描き始めてくれた遥香

遥:まだ途中だけどどうかな？

○:すごいや
完成が楽しみだよ

真:かっきーなに描いてるの？

○:桜と俺だよ
めっちゃすごいよな

真:ほんとだ
すごい！

遥:そんなにすごくないよ

○:完成まであと少しだな
楽しみすぎるよ

遥:待っててね

この時、俺は自分の身体に時間が無いことに気づいていなかった

数週間後…

遥:完成！

○:すっげぇいいや！
この絵は遥香に持ってて欲しい

真:この絵の名前つけよ

遥:絵に名前って

遥香は笑って言うと…

○:スリジエにしよう

遥:スリジエ？

○:そう
フランス語で桜って意味を持つ言葉なんだ

真:○○くん頭いいんだね

○:そうか…な…

○○が倒れてしまった

遥:○○くん！？

真:やばい！
先生呼んでくる

救急車で運ばれる…
学校の近くの病院に運ばれた

先生が1人同乗した
遥香と真佑は病院まで急いだ

すると数十分後に○○の母が病院に来た

お母さんは笑顔で話し出した

○母:どっちが遥香ちゃん？

遥:私です

○母:ありがとうね
この1年間○○楽しそうで嬉しかった

遥:そうなんですね

○母:あの子…元々病気で
今回はもう助からないかもって言われてるの
遥香ちゃんが持ってる絵素敵ね

遥:これは○○に描いて欲しいって頼まれて…
タイトルは｢スリジエ｣だって言ってました
フランス語で桜って意味みたいで

真:それより…助からないかもって…

遥:真佑ちゃん
その話は一旦終わり

○母:2人ともスリジエはフランス語で桜
花言葉はわかるかしら？

この質問と同時に手術中のランプが消えて中から先生が出てくる

先:すみません…
私たちでは力不足でした

○母:そうですか

真:かっきー！

遥香は泣き崩れてしまった

○母:遥香ちゃん泣かないで
あの子は泣いて欲しくないと思うよ
それが嫌で彼女すら作らなかった
でも本気で遥香ちゃんのこと好きだったのね

遥:○○…

真佑はぎゅっと遥香を抱きしめる

真:かっきー前向いて歩こう

遥:無理だよ…
○○が居なきゃ…

○母:そうだ2人ともこのあと家に来て

遥:わかりました

この後○○の家に行った…

○母:これを遥香ちゃんにあげてって言われててね

ダンボールを遥香に渡す
中身は参考書とか医療に関係するものが入っていた

遥:○○…

真:○○くんは本当に優しいなぁ

○母:実は○○も医者になるのが夢だったのよ
だから遥香ちゃんは夢叶えてね

遥:はい！
○○の分も勉強頑張ります！

真:あとさっきの花言葉って？

○母:あ〜それはね
｢私を忘れないで｣

遥:そっか…
○○のこと忘れないし
これからも空の上で私を見守っててね

遥香と真佑は帰るために外に出た

太陽がいつもより強く光を放っている気がした

遥:○○が照らしてくれてるのかな
ありがとう私頑張るからね！