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ばね指(snapping finger)


概要

ばね指とは弾発指のことを指します。
ばね指が生じる現象としては、機械的刺激がその特定部位に連続的に加わることで炎症が生じます。その炎症が大きな原因となります。そのため、日常的に手指の使用頻度が多い方がよく発症します。

男女比率では、女性の方が発症する確率が高く、更年期の女性が最も多く発症します。
更年期の女性の発症比率が多い理由としては、妊娠・出産期の女性にも少なくないため、女性ホルモンの関与が原因と考えられています。

また、糖尿病・関節リウマチ、透析治療中の方では、多種の病態が原因となってばね指が併発する可能性があるため、この場合は、複数指で発生する可能性が多いと考えられます。

発生部位


図1:pully

ばね指はMP関節周辺の屈筋腱腱鞘に生じる腱鞘のことを言います。特に母指と中指が好発しやすいです。AC共に靭帯性腱鞘であり、形状としてはAが輪状靭帯(滑車)、Cが十字靭帯(滑車)となります。そのため、MP関節周辺の屈筋腱腱鞘となるため、A1が好発部位となります。
また、靭帯性腱鞘のことをpulley(プーリー)と呼びます。

弾発現象

ばね指がの原理としては、手指を多用に使用することで腱鞘炎となり、滑液鞘が肥厚することで屈曲・伸展時に腱の滑動がスムーズに行えなくなります。
炎症症状が更に増悪すると、肥厚した病変部位が引っかかるようになり弾発現象となります。


図2:A1 pully

炎症により滑液鞘の浮腫もしくは増生、腱自体の肥厚などにより線維鞘のA1pulleyの入口から中間部の病変部位が引っかかり腱が通過できなくなる。しかし、無理矢理手指を伸展すると、引っかかっていた病変部位が一気に通過することで、弾かれたように手指が伸展する(弾発現象)。屈曲時も同様に弾発現象が出る場合が多いです。

治療

  1. 保存療法:患部の安静、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の投与
         症状が中等度ある場合はステロイドの腱鞘内への局所注射

  2. 手術療法:症状が重度の難治例では腱鞘切開術を考慮する

リハビリ訓練

  1. 保存療法:患部の炎症反応がある場合はアイシングを施行し炎症反応の鎮
         静化を図る。安静時間の延長と共に他関節の可動性低下(拘縮)
         が生じるため、他動運動での可動性維持を図ります。炎症反応
         がある程度鎮静化した場合には靭帯の柔軟性を得るためストレ
         ッチを行います。

  2. 手術療法:手術療法後は術創部の瘢痕化、皮下組織の癒着が生じる可能性
         があります。そのため、術創部のダイレクトストレッチ、手指
         の積極的自動運動が重要になると思います。

ストレッチ方法はA1pulleyを想定したストレッチ方法を記載します。
手指の自動運動に関しては深指屈筋腱(FDP)、浅指屈筋腱(FDS)の分離性も促通した方が
良いと考えられるためgliding exercaseを記載します。


図3:ダイレクトストレッチ


図4:ダイレクトストレッチ


図5:グライディングエクササイズ

小児ばね指

小児に発症するばね指は、母指に発生する頻度が高いです。また、腱自体の滑動が強く制限されてしまうため、弾発母指・強剛母指・強直母指と呼ばれます。(1〜2歳で発症しやすいです)
原因自体は不明であり、長母指伸筋腱(EPL)の一部が肥大することでMP関節周囲のA1 pulleyに引っかかってしまい、IP関節の自他動運動困難で伸展できなくなります。
概ねの方が自然治癒するため治療自体は経過観察とする場合が多いです。また、必要に応じて夜間装具やテーピング固定を行います。改善していかなければ手術療法として腱鞘切開術を行います。

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