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【実習生・新人必見!】今日から使える。症例検討会1(橈骨遠位端骨折編②)



まえがき


お待たせしました。待っていないかもしれませんが...
前回の症例報告(橈骨遠位端骨折①)の続きとなります。
一個人の簡単な考察になるため、参考程度に利用していただくようにしてください。
その方のリハビリを行う上で正解というものは明確には分かりませんできる限り正解であろうリハビリを施行することが重要と考えられます。
では、続きをどうぞ。

目標の選定

前回、抽出した問題点より目標設定を行いました。

図1:トップダウンとボトムアップ要素
  • 短期目標(1-2ヶ月):右手を使用した身辺動作の自立。
               家事動作の獲得(代償手段あり)。

  • 長期目標(3-4ヶ月):両手を使用した家事動作の獲得。職場復帰。

短期目標としては、まず右手を使用した身辺動作の自立を挙げました。理由としては、家族4人暮らしであり早期の家事・職場復帰をしなければならないことが考えられるからです。今回は予測になっていますが、本来であれば夫の年齢と家事の出来具合・協力可能かどうか、また聞きにくい内容ですが金銭的に早期に職場復帰しなければならない環境なのかを聴取できると信頼性が得られると考えます。もう一つの短期目標として、家事動作の獲得(代償手段あり)としました。妻の方が家事を主体的にやっていたのであれば家事動作を早期に復帰する必要があるからです。また、家事動作を行う上では利き手を早期より使用していく中には関節可動域の不足・疼痛などの動作遂行における阻害因子が生じるために代償手段ありということにしました。
長期目標としては、まず、両手を使用した家事動作の獲得としました。理由としては、右手を参加させることで更に骨癒合を促進し、拘縮予防・筋力向上、両手動作による時間の短縮が図れる可能性が示唆されたためです。もう一つの目標として、職場復帰を挙げました。理由としては、生活費を得るためには共働きでないと不足してしまう可能性が示唆されためです。また、今回は現職に復帰する予定となっていますが症例によっては機能が回復せずに現職に復帰することが困難になる場合があります。その場合は転職を考慮する必要があると思います。但し、転職に関しても高齢の場合は困難になるためその点も考慮が必要になります。

目標に対するアプローチ方法の抽象例

  1. 短期目標:右手を使用した身辺動作の自立

  2. 短期目標:家事動作の獲得(代償手段あり)

  3. 長期目標:両手を使用した家事動作の獲得

  4. 長期目標:職場復帰

1短期目標:右手を使用した身辺動作の自立(1-2ヶ月)
身辺動作いわゆるADL動作に必要な手関節・前腕の関節可動域は手関節掌屈40°、背屈40°、橈屈10°、尺屈30°、前腕回内60°、回外60°と言われています。今現在、クライアントの得られている関節可動域は手関節掌背屈20°、前腕回内45°、回外15°となるため不足している角度が手関節掌背屈20°、前腕回内15°、回外45°となります。また、TPDが2.5cmでありfull grip困難な状態にあります。筋力評価であるMMT・握力などは時期的に困難なため、視診によりある程度の評価となります。予想となりますが、TPD2.5cm程度まで握ることが可能ということを踏まえるとMMTはおおよそ2程度となると思います。また、握る時の制限因子としては浮腫が影響している可能性が考えられます。8の字法により5cmの差が生じています。受傷・術後による炎症反応に伴う浮腫によりfull gripができないていない可能性が示唆されます。
身辺動作(ADL動作)と言ってもどの動作の何処がやりにくいのかということを明確にする必要があると思います。例えば、[食事:普通箸を母指・示指・中指の3指にて把持することは可能。しかし、手関節掌屈と前腕回外の角度が不足していることで、代償的に肩関節外転・伸展が強く働いてしまう。]などを実際に模擬動作などを踏まえて確認することで更に明確化できると考えられます。今回に関しては、これを全て文章化すると長すぎるため割愛します。
不足している手関節掌屈20°、前腕回内45°、回外15°を改善する必要があります。その場合、手関節掌屈に関しては、手関節の掌屈角度はMCJの方が動く比率が高いため、MCJを優位に動かせるダーツスローモーションを取り入れる必要があると考えられます。また、前腕回内外は主に関節としては、遠位橈尺関節(DRUJ)と近位橈尺関節(PRUJ)が関与し、また骨幹膜の関与も同様に大きくなります。そのため、その2つに対してのリハビリを施行する必要があります。浮腫に関しては、弾性包帯などによる圧迫法を施行し循環促通する必要があると思います。MMT(筋力)に関しては、早期より手関節に関与する外在筋の拘縮を取り除き、滑走促通する必要があります。そうすることで、今後は手関節に対してダイレクトに作用する筋群に対してのみのアプローチで済む可能性が高いからです。また、手指に対しては6pack ex,Tendon Gliding exなどを取り入れてもらう所から開始し、ADL上での参加率を向上させることで徐々に筋力向上へ繋げることが可能だと考えます。


2短期目標:家事動作の獲得(代償動作あり)
家事動作に関しては、右手にて重量物を把持する必要性がありますが骨癒合が不足している可能性もあるため代償手段を用いる必要性があると考えます。例えば[調理:包丁を右手で使用可能ですが、強い圧力が必要な野菜・肉などのを切る際には右手で包丁を把持し、左手で右手の不足分の圧力をかける]ことで動作自体が可能となる場合があります。このように、代償手段を用いた上での家事動作の確率を目指していきます。

3長期目標:両手を使用した家事動作の獲得(3-4ヶ月)
骨癒合・掌側ロッキングプレート(VLP)の状態にはよりますが、概ねは骨癒合している時期だと考えられます。そのため、VLPがずれて腱滑走時の制限因子となっているのであれば話しは別ですがそれ以外の方であればどんどん動かして右手の積極的参加を促通していく時期とはなります。そのため、重量物を把持できるだけの筋力・関節可動域制限が生じていないかを確認し、不足部分があれば機能を上げる必要性があります。

4長期目標:職場復帰
最終的には一番負荷量が高い職場での動作確認を施行し、実際の現場でもできるように機能向上を図る必要があります。

必要な作業に対する満足度確認

最後にその時期、時期に対する満足度評価をしていく必要があります。満足度を図る指針としては、DASH,HAND20があります。また、紙面のみではなく本人との面談を施行し実際に満足度を口頭にて聴取する必要もあると思います。

終わりに

簡単ではありますが、空想上の人物を元に橈骨遠位端骨折に対する症例報告を記述させていただきました。本来であれば、もっと複雑にはなると思いますが全てを書くと長文になり過ぎるので割愛させていただきます。少しでも参考になればいいかなと思います。

参考文献

1)工藤慎太郎:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.株式会社 医学書院.第1版第2刷.106

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