五十歩百歩

私のガラケーがついに壊れた
「2026年の3月末日でガラケーは使えなくなるので、部品もないし、修理はもう行ってないですよ」と、NTT ドコモのつれない言葉。
夫のガラケーはまだ健在だ。認知症で要介護3の夫は、デイサービスやショートステイを利用した帰りには「これから帰る」と、必ず私の携帯にかけてくる。そうすれば"帰ったらすぐ飯が食えるから"ということらしいが、とにかくもう習慣になっている。それが中断となり、長引いてしまうと携帯を使えなくなってしまうかもしれない。
それはまずい!と即、日曜日に娘とドコモショップで待ち合わせ、スマホを購入した。と言っても私は軽くて手に持ちやすいもの( あまり どれも差がないが)を選んだだけで後は娘に任せて 隣に座った。
それからは担当者と娘の間で交わされる全くわけのわからない、延々と続く手続きが終わってくれるのをひたすら待つだけだった。
そしてようやく 私の手元にスマホが
「もうお使いいただけますから」と、担当者からにっこり言われても、「はぁ…………」私には単語猫に小判猫に小判なようなもので何の感慨もない。
「明日から会社だから、もう帰らなきゃ」という娘を引き止め、電話とメールの仕方を自宅で何度も教わったのだが…………
娘が帰った後 、一人で何度もやってみるがうまくいかない。
夫が見かねて
「俺の携帯、使っていれば」
まあ 確かに。それも一理あるけれど、 それでは本末転倒 だし……
数日後、NTTドコモから私宛に書留が届いた 。同じカードが2枚も入っていた。
夫に
「ねえ、ドコモって意外と親切だったのね。落としたりしてなくなった時のために、予備まで入れてくれているのよ。銀行も郵便局もカードは1枚しかくれないのに」
どれどれと見た夫が、
「これクレジットカード。もう1枚は家族用、お前が持っていて大丈夫なのかよ」
「大丈夫かって何が?ねぇ、それより クレジットって何?」
「それも知らないで作ったのか 。物を買う時に、現金で払わずに後払い すること」
「えー、今まで現金でしか買い物をしたことないわ。お金、持ってなくても買えるんだ」
「そうだよ。このカードと暗証番号でな」
「私 暗証番号なんて知らないけど、ふみちゃん(夫の名前)知ってる?」
「お前、バカじゃないの。俺が知るわけないだろ。あー、恐ろしいな。子供たちは俺の心配するけど、俺よりお前の方がずっと心配だよ、と言わなきゃな」
そういえば ドコモで娘が手続きの途中に
「お母さん、ここに暗証番号を書いて。4桁ね」
というので「ついでに書いてよ、お母さんの生年月日の○○○○」と大きな声で言ったら「お母さん、それ却下 ね」
結局、娘に全部やってもらったのだった。
無知はとっても恥ずかしいこと、とっても怖いことだけど、認知症とはまた違う。
そう言いたかったけれど、 黙っていた。

無知症という病名があったら私は太鼓判をされるほどの患者になりそうだから

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