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小説「風の華」

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窓をあければ華は空を飛べるように思う癖があった。ずいぶん幼い日の思い出だった。小学生になったばかりの小さな記憶が・・・
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#自分

小説「風の華」序章(3)

小説「風の華」序章(3)

 翌日は、学校を休むつもりでいたが、華は美術部の話し合いがあることを思い出した。
(いいわ ふりまさわされるのはごめんだ)
 華は自分でも、割り切りの速い人種だと思っている。いつまでもごちゃごちゃしているのは嫌いだ。友だちも あとを引かないさっぱりとした華の性格を好んでくれている。
 美術室に入ると、数名の部員が集まっていた。華があいさつをしかけた時、部員たちが話をやめたのがわかった。なんとなく気

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小説「風の華」序章(2)

小説「風の華」序章(2)

 制服の男女は、あきらかに潤と翠だった。
(どうしてふたりで歩いているんだろう)
 華は、その出来事を、まるで別の世界を眺めているような気持ちでいた。けれども、心の中では、もう一人の華が、どこか途方に暮れた姿で立ち尽くしていた。
(いやだな)
 華は、自分のなかに、明らかな嫌悪感が生まれつつあるのを感じた。嫌悪感は、制服の男女に対してなのか、華自身の心の惑いに対してなのかわからなかった。
 はっき

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