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逃げて生き延びるんや                       ★いじめを断ち切る究極の手段★

「ヒーローショー」という映画を撮った。最近のいじめのニュースを見ると、よく似てる。きっかけはつまらんこと。気ィ弱いとか服がダサいとか貧乏だとか、理由をつけて、うさ晴らしする。殴ったり、金とったり、エスカレートする。僕は「逆境に勝て」とか、カッコつけたようなことは言わない。一つ言えるのは、そんなくだらん世界からは「全力で逃げろ」。迎合を迫る社会からドロップアウトして、孤高を目指せ。

     映画監督 井筒和幸さんの言葉から抜粋(朝日新聞)

黒豹コメント:

以前、少年が仲間から執拗にカッターナイフで切られた上に川に捨てられるという殺人事件が起きました。一方、少女の世界に目を向けると、もっと陰湿で、切られても血が出ない、魂をえぐるような暴力が闇から闇に葬られている現実があります。

社会派の小説を書いてきて、イジメという名のオブラートで包まれた「未必の殺意」は避けて通れない分野であります。ただ、書くに当たって、自分は本当にイジメの現実を理解しているのかという基本的な疑問も頭をもたげてきました。 
 
信じられないような攻撃が自らに降りかかってきたのはそんな時でした。
様々な職業を経験し、命がけのシーンを何度も乗り越えてきて、百戦錬磨と信じていた自分が、手足を切断され荒野に放り投げられたような無残な状況に陥りました。ああ、これが少年少女が立たされているイジメの現実なのだと、その時悟りました。

武道や格闘技の拳は、時には骨を砕くこともあるでしょう。
だが、イジメ、誹謗中傷は、格闘技の打撃とは次元が違う。
ガードをすり抜ける見えない刃は、容易に魂を貫きます。

表裏一体となす人格と魂がなぜここまで破壊されてしまったのか。精神も肉体も限界の闇に覆われようとした時、マインドコントロールに縛られている自分に気がつきました。命を絶った少年少女たちも、おそらく同じような檻に捕らえられたのだろうと思います。

獣の檻は鍵がなければ逃れることはできませんが、人間の檻は往々にして、所有するものを捨て去ればすり抜けることができます。
私は、「すべてを捨てて逃げろ!」と言う神の声に従いました。
それから二年ほどかけて、拙作ですがイジメをテーマにした小説を書き上げることができました。

※ ご参考までに末尾に冒頭のみご紹介しておきます。もし興味があれば…

古くからの友人にこの実体験を話したところ、意外なコメントをもらいました。「後ろから刺されなかっただけ良かったじゃん」 
ウーム……確かに。
ちょうどそのころ東京で、コンサルティング会社の社長が部下に背後から刺し殺されるという事件が起きておりました。殺された社長は友人の元上司で、面倒見は良かったけど、厳しい人だったと、当時を考え深げに話しておりました。

檻の鍵を自由にできる人間は、自らが檻の中をチェックすることを忘れず、もし暗い目が覗いていた時は、夜道など、背後に目を光らせた方がいいかもしれませんね。

最後に、まったく角度が違う格闘技界からのヒントをご紹介。
現実の格闘技の世界も、誹謗中傷の嵐は凄まじいものがあるようです。

今、注目の、ある実力格闘家からの言葉から。

「誹謗中傷は何とも思わないっすね。俺はそこで勝負してないっし」

重要なところは、「そこで勝負してない」という覚悟。

ここは筆者も目から鱗でした。
自分も誹謗中傷の泥沼から抜け出すことができたのは、
「今に見ていろ」という無意識に出た覚悟だったような気がします。
「全力で逃げろ」という井筒監督のメッセージの裏返しか。。

拙作の冒頭部分
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「私が引きこもりになった理由を教えてあげようか」
 未来(みく)は、手あかで黒ずんだ白熊のぬいぐるみにささやきかける。あどけないつぶらな瞳が、じっと見つめてくる。
「はやく話してっ、楽になるよ」と、無邪気な声が聞こえてくる。
 今日こそは話そうと、生つばをごくりと飲み込む。徐々に心臓の鼓動が速くなる。背中がぞくぞくとして、冷たいものがわきを伝う。目がかすみ、歯が小刻みに音を立てる。記憶をたどろうと、重い扉に手をかける。けれども、闇に呑まれた先には、何も見えない。
 ふと、足元から無数の蛭がはい上がってくる。払い落そうとする腕が黒いぬめりにおおわれていく。未来はあえぎながら、カミソリに手を伸ばす。白い皮膚にへばりつき、未来の血を吸おうとする生き物に刃を立てていく。痛い! 生き物が叫び、黒い血を流す。もう少しだ。未来はたえる。黒いぬめりが消え去り、赤い血がしたたっている。未来はティッシュを重ね、押し当てた。むなしい達成感が体をつつむ。
 これでまた、少し生きていける……。
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最後までお読みいただきありがとうございました。

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