京都市の国勢調査データで見つけた謎の文字列を追ってみた
5年ごとに行われる国勢調査
国勢調査の最も基礎となるものは人口調査だ。西暦年の末尾「0」の年は大規模調査が行われる。前回の国勢調査は2020年、大規模調査だったはずである。
国勢調査では、町丁目(大字・小字)単位で集計されたものが公表されるが、住所オタクとして気になるのは京都市だ。町名表記が複雑な京都市の町名は、どんな単位構成で整理されているのだろうか。
国勢調査データをざっとみるにはここが手っ取り早いので、ここからダウンロードしてみた。
ここの「6 小地域集計(国勢統計区 及び 町丁別)」からデータをダウンロードすると、住所は「都道府県名」「市区町村名」「大字・町名」「字・丁目名」で区分されていた。眺めてみると、全く聞き慣れない文字列があることに気づいたボク。
市区町村名のあとに一律表示されていた「待賢」の文字。大字、字ではなく「待賢」。京都市の地名か??いや、地名ではない、、はず。全く耳にしない名称かつ読み方すらわからんのでここでは、一旦大人しく「待つ+賢い」で入力。ニホンゴ、ムズカシイネ!
ちなみに上京区には、「嘉楽」「乾隆」「京極」「滋野」「室町」「出水」「春日」「小川」「仁和」「成逸」「正親」「西陣」「待賢」「中立」「桃薗」「翔鸞」「聚楽」と17種類の謎の文字列が並んでいた。最後2つなに?ニホンゴ、ムズカシイネ!レベルではない
地名ではない、学区だった
答えがわかったのは今尾恵介さんの名著「住所と地名の大研究」からだった。
地理・地名マニアで本書を知らない人はいないであろう名著の中の名著。このブログで披露している私の知識もこの本にかなりお世話になっている。
この本の「京都の住所」の章を読んでいるときに思わず声が出たのである。
ほんとにでたのである。
今尾さんは京都市の地番を調べていたときに、そのナンバリングパターンに町を超えたもうひとつ大きな枠組みを見出していた。それは「学区」だ。ここでいう「学区」とは、明治2年に京都の町衆が政府に頼らずに作った小学校の地域区分のことで(もうこの時点で興味深い)、この区割りによって編成された小学校を「番組小学校」呼ぶそうだ。「番組」とは江戸時代の「町組」という住民自治組織が元になっているものである。学区と番組小学校の詳細を知りたい方は、今尾さんの本や下記Wikipediaなどをご覧あれ。
学区が地番のナンバリングの単位になっているならば、町域判別の中間的な単位(大字的なもの)にもなっているのでは?と私は考えた。
京都市には同じ区の中で同一町名が数多くあるため、通り名がないと判別がつかない場合がある。市・区・町名の文字列だけではユニークが取れないのだ。京都市アンビリバボー!
ということで、
学区が入っているデータの住所項目を調べてみたところ、重複はなかった。※ただし、中京区「西大文字町」と「東大文字町」の東西表記が省略されたための重複はのぞく。
つまり現在の京都市の区は、現在の行政都合の編成であって、学区(番組)単位であれば町名はそもそも重複などしていなかったのだ。
この学区は現在も実際の小学校の学区としても概ね存続されている。そのため、区分けとしてはある程度市民にも馴染みはあるようだが、地域名として利用されることはない。
にもかかわらず国勢調査で「大字・町名」編成されているのは、町名重複を放置する訳にはいかないかつ、通り名ではデータ上の適切な区分けはできない、事実上の大字区域に相当する学区が使われているのではないかと推測する。
ちなみにさっきの「待賢」は「たいけん」と読む。Googleでコピペ検索すると一発で学区とでる。先生、さすがだよ…
きっとこれを読んでいる京都市民からしたら「なにをいまさら」という気持ちかもしれない。こちらとしては、京都の町はよそ者を容易には寄せ付けないね、(…好き!)という気持ちである。
ところで
これ弊社😉住所だいすき!データだいすき!