おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか第五話感想
おっさんのパンツがなんだっていいじゃないかの第五話が放送された。
色々考えさせられる話となり感想を書いては消して書いては消してを繰り返した。今まで楽しく見れていた分、自分の感じたものが何なのか言葉にすることが難しかった。
我が推し東啓介さん演じる円先輩がたくさん出たのでめちゃくちゃ嬉しかったのだが、円先輩にも色々思うところがあり、非常に大変だった。大変だったが、たぶんそれはいいテーマ、脚本だったということだろう。
おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!
第5回 2024年2月3日(土)放送 あらすじ
妻と娘の○×判定!アプデ成功&大失敗!?渡る世間はおっさんに厳しい!!
昼時、ランチの蕎麦をすすりながら雑誌を読んでいた誠(原田泰造)は愕然としていた。 “10年後、こんな人材はお払い箱!”と書かれた記事はまさに誠そのもの。このままでは自分もお払い箱!? 誠は自分に言い聞かせる。「俺は…大丈夫。アップデートしている…はず?」
一方、誠の息子・翔(城桧吏)は再び学校に行けなくなっていた。心配する母の美香(富田靖子)だったが、今は見守るしかない。そんなある日、翔は愛犬カルロス(こまち)の散歩中に家の近所で、野球部の仲間である長谷川(坂上翔麻)に遭遇する。思わず逃げようとする翔に「相談がある」と話しかける長谷川。そんな二人の様子を誠が目撃して―美香は友人の美穂子(松下由樹)に翔のことを相談していた。だが、美穂子もまた、息子の大地(中島颯太)のことで心配事を抱えていた。「他人だから出来ることもあるかも…」美穂子はとあるイベントを美香に提案する。
沖田家で大地の恋人・円(東啓介)も呼びバーベキューが開かれることになる。しかし、そこで誠は、大きな失敗をしてしまうことになる(https://www.fujitv.co.jp/b_hp/oppan/backnumber/724000001-5.html)
見終えての一番の感想は「みんな大地に期待しすぎじゃね?」ということだ。
大地は誠からの偏見に溢れた言葉を許し、翔の外出サポートをし、実家の病院の手伝いをし、友人達とも友好な関係性を築いている。そんな大地が惚れ、心を許したのが我が推し東啓介さん演じる円先輩だ。獣医学部の先輩で入学式、大地に土嚢が降り注ぎそうになっていたところを円先輩が身を挺して庇い二人は出会った。少女漫画のような出会いに見ているこっちもキュンとしてしまった。大地の恋愛フィルターの掛かった円先輩、めちゃくちゃ恰好よかった。ありがとうございます(ありがとうございます)。
ただ、円先輩には誰にも言えない秘密があった。それは男性が好きだということ。地元では親はおろか友人にも本当のことを話せなかった様子だ。そんな円の目の前で大地は自身のセクシャリティがゲイであることを友人に告げる。円は衝撃で動揺するが、大地の友人はゲイであることに対して興味を向けないままサラッと受け流す。言う方も聞く方もあまりにも淡白で円はカルチャーショックを受けるのだった。円先輩は大地に「凄いな」と告げる。自分のいた世界があまりにも狭く、こんな世界があることを想像すらしなかった。東京に出てこなければ、大地と出会わなければきっと一生胸の内に秘めたままだっただろう。尊敬の念を向ける円先輩だったが、大地の手が震えていたことに気付く。なんでもないように言っていた大地が本当は勇気を振り絞って真実を告げたことを知りそんな健気な姿に円先輩は惹かれていくのだった。
円先輩にとって大地は親鳥だ。誰にも言えないと思っていたセクシャリティを初めて明かせた相手。しかもその人が自分に好意を持ってくれている。円先輩は大地の姿を通じてこの世界で生きるための術を学んでいった。二人だけの秘密。それを抱えたことで関係性が急発展していったことは想像に難くない。しかしそれは円先輩にとって大地があまりにも大きな精神的支柱でもあったということにもなる。自分にだけ弱さを見せてくれるほの暗い喜びと同時に、自分を深く傷付ける相手を受け入れなければならない悲しみもあったはずだ。
今回も大地は円先輩の親の還暦祝いとして渡したプレゼントを「渡せなかった」と返されてしまった。渡すな。マジで。渡すなよ。しかもその後円先輩はショックを受ける大地のことは見ないまま「親を悲しませることができない」と自分の葛藤を話す。話すな。いや話してもいいけど大地のことも考えたれ。めちゃくちゃショック受けとるやんけ。結局大地は円の感情の受け皿になることを受け入れ渡したプレゼントを預かると笑うのだった。
このシーン、終わった後思わず天井を見上げてしまった。みんな大地に期待しすぎ。大地はなんでも受け入れる吸水マットじゃないんですよ。大地だって子供だし、大地だって悲しみを抱えているし、大地だって傷付いている。大地が人間であることをみんな忘れ過ぎじゃない?大地は優しいから、大地は大人だから、大地はなんでもできるからとあまりにも期待しすぎ。生きてる人間、しかも一般人を偶像崇拝するのはただひたすらにグロいことですよ?
誰か大地のことももうちょっと考えてあげなさいよ。いやお母さんがめちゃくちゃ寄り添ってくれてるのは事実なんだけどね。大地の優しさはお母さんの愛情でできているんだろうけどそれでもいつか足りなくなるくらい周囲の人間、大地に期待し過ぎよ。
優しい大地はこのドラマに欠かせないが、いつかフラッとどこかへ行ってしまいそうな雰囲気がある。円先輩、大地がいなくなってから焦ってもダメなんだからね!!!!大事にしてあげて!!!
冒頭の「周囲の大地への偶像崇拝っぷり」にショックを受けたが、後半もまた怒涛だった。先週の次週予告で円が誠に掴みかかるシーンが流れていた。あれがずっと頭の端っこに残っていたため中盤の周囲の理解を得ていく誠が逆に辛かった。誠はアップデートを通じて言動を改め職場や家庭での信頼を回復していく。今まで足蹴にされていた環境で少しずつ認められていく様に誠自身喜びを隠せない様子だった。私だってその姿は嬉しい。嬉しいけど喜びきれない自分もいる。だってこの後掴みかかられるんだもん……。
実際掴みかかられるシーンを見て「あ~……」と思わず頭を抱えた。アウティング、アウティングね、アウティング。アウティングとは円先輩が言っていた通り「本人の同意なしに他人のセクシャリティや性的な関係性を他人に暴露すること」だ。LGBTをテーマにしているなら必ず取り上げなければいけない問題。実際現実世界でもアウティングがきっかけで亡くなった方もいる。
誠、嬉しかったんだよね。みんなから褒められて自分の努力が目に見える形になってきて。変わっていく自分が嬉しくて嬉しくてたまらなかったんだよね。だからぽろっと円先輩に「大地君の彼氏だよね」と言ってしまった。良かれと思って。なんなら言われなくてもわかってるからみなまで言うな、くらいのテンション感で。うん、分かるよその気持ち。でもそれは本当に駄目なことだからね。
アウティングはセクシャリティに関わるワードだと一般的には認識されているが、私は個人情報を勝手に暴露することはすべてアウティングだと思っている。アウティングの残酷なところは、信頼していた人に裏切られた、秘密にしていたことを信頼していない第三者に知られたということがダブルで押し寄せてくることだ。アウティングされた後の感情としてはまずショックが来る。恥ずかしい、どうしてそんなことを言ったんだ、なんなら相手に怒りが沸くかもしれない。その後、暴露された第三者が自分のことをどう思うのか、どうフォローすれば誰も傷付かずに済むのか、その第三者が噂を広めたらどうしようという恐怖心を感じる。そして最終的には軽率に話してしまった自分に失望するのだ。
今回の誠のケースは極々まれだと思う。大地は円のことを誠に話してはいれど、円の顔は見せていなかった。大学の先輩だと紹介するだけのつもりだったはずだ。防ぎようのないトラブル。円からすれば大地に対する不信感につながるかもしれないし最悪二人は別れるかもしれない。そうなれば大地から誠への信頼も地に落ちるだろう。というか既に落ちてるんだけど。
円に怒鳴られた誠は状況を把握できない固まるが、自分がとんでもないことをしでかしてしまったことだけ理解する。ここからどう挽回すればいいのか頭をフル回転させている様子でドラマは終わった。
今回は色々考えさせられる話だった。しっかりしている若者に周囲が全乗っかりしている姿に心がささくれ立ち、無邪気なアウティングに心を抉られた。円先輩と大地のなれそめが可愛かったところだけ救われた。めちゃくちゃよかった。少女漫画的展開センキューフォーエバー。
心が削られた話となったが、とてもいい話だった。きっと同じように削られ意識を改めようと思いなおした視聴者も多いはず。
来週、誠が大地、円との関係性をどのように再構築していくのか楽しみだ。