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:Classic: Air Ship PE SP Performance Review
新年あけましておめでとうございます。(〜から既に3週を過ぎてしまいましたが…。)
新年一発目はなんの因果かシューズに置いても原点からのスタートとなりました。
最新のパフォーマンスシューズから始められず申し訳ありません。
今年も引き続いてお楽しみ頂ければ幸いです。
”原点”
このシューズの存在を知ったのはかれこれ数年前。
初めてJordanブランド、Jordanナンバリングのシューズを取り上げる際に、その歴史を調べていた時でした。
もちろん、調べている当初の原点は”Air Jordan 1”からだと思い込んでいたしましたし、それ以前なんて知る由も無かったんです。
…が調べてみるとこのシューズの存在がポンッと。
そして、そんな存在が出てくると”見てみたい”・”履いてみたい”となるのが世の常なんですが(少数派)、この存在を知った当時、AJ1は復刻されまくっているのに対して、このシューズは全く復刻されていない事実を知り、一番気になったタイミングでどうやっても手に入れることの出来ない葛藤と対決する羽目になりました…。
それから数年。2020年の復刻を皮切りに、ここ近年では断続的にではありますがラインナップに並ぶ様になって来てくれました。
当初はラインナップも数もあまり多くなかったのですが、ここ近年は数色並行展開等、選びやすい・手に取りやすい環境になってきてくれた結果、やっと長年の興味を解消することが出来ました。
というわけで今回は”Nike Air Ship (PE SP)”を見てみようと思います。
”The 1st”の名を欲しいままにしているAJ 1のその更に祖先、如何に。
今回チョイスしたカラーはちょうど昨年の今頃に登場した"Diffused Blue"というカラー。
ホワイトベースにくすみブルーのライニング・スゥッシュの配色で、どことなくカレッジらしさを感じられる仕上がり。
では早速!
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■ディティール
ではまず外観から。
何と言っても、な当時のスタンダードなハイカットスタイル。
なんでしょうね、当時は踝・足首を守るために一番合理的な形だっただけなんでしょうけど、このスタイルが今尚、シューズと言うアイテムとして映え続けるというところにプロダクトの素晴らしさを感じます。
オンコートでもオフコートでも、機能だけを考えたらもっともっと先進的で最適・快適なもので溢れている世の中の筈なのに、今尚このスタイルを履きたいと感じさせる魅力。もはや伝統的な製法で作られているブーツや革靴と同じような域に達しているように自分は感じます。
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話を戻しまして、このシューズ自体に目を向けてみます。
外観としては、こちらも当時としてはスタンダード・現代では豪華な、ふんだんに使われたレザーによって構築されてます。
今よりもマテリアルのバリエーションが多くなかった当時、バスケのみならずスポーツ全般の強いストレスに耐えるにはレザー以外の選択肢ってあまり無かった故だと思うんですが、それ故に現代でみると高級なそれに見えてしまうから面白いです。
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プロダクトのデザインに関してもう少し深く見てみようと思います。
シルエットに関して、さすが元祖なのでAJ1と瓜二つなシルエット。
これをベースにAJ1でアップデートされた部分の違いが如何ざっくり2点。
・踵/踝下/足首それぞれのフィットに最適化する為にアッパーの切り替え/レイヤー構造の見直し(特徴的なウィングもここ)
・フォア横のブレ防止のためのウィング形状見直し
小さな手直しだったのかもしれませんが、それによってここまで伝説的なデザインなったAJ1の完成度の高さって本当に凄い事だなと思います…。
…あ、違うやw
そこから遡ってこのAir Shipというモデルのプロトタイプとしての価値もやはり凄い事だなと感じます。
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■フィット
では早速堪能させて貰います。
まずはラストですが、厳密に当時のものと同じラスト・同じ形状では無いと思いますので、その点は何卒ご了承の程。
改めてまして。ラスト感、AJ1のそれを想像していたんですが…うん?大分違う印象。
もしかしたらAJ1に移行するに辺りラスト・トゥボックス形状自体も見直しを掛けたのかもしれません。
AJ1比較で、縦方向:若干短め / 横方向:同等 / 高さ:若干高め。同じサイズで購入すると大分印象違いそうです。幸い自分は店舗購入だったので慎重にサイズ比較しながら購入出来ましたが、見れずに購入する場合は十分な注意が必要そうです。
縦方向はハーフ〜フルアップまで様子見たいところ。ただ高さ方向の兼ね合いがあるので、それも踏まえて慎重にチョイスされるのがお勧め。
私は総合的にハーフアップを今回チョイスしましたが、それでもベストなフィットは探り探り未だやっているという感じです。
それを難しくしているのはインソールの存在なのですが…これは後ほど。
構造としてはオールドスクールなアッパー + シュータンの組み合わせ。
シュータンは最下部のみ縫いつけされている本当にプレーンな構造。
全体的なフィット感としては、クラシカルなシューズ構造故の狭い間隔のシューレースホールも相まって各所各所でロックダウン調整が効くのと、レザーによる素材の馴染も相まってかなり快適に足を包みこんでくれます。
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ヒールパッドは…絶壁と表現して良いと思います。
パッドは入っていますが、ヒールロックを目的としているわけではなくどちらかというと足当たりの為の対処に過ぎません。なのでヒールは結構動きがち。ハイカットなので抜ける心配はありませんが、動きとしては決して快適なものではないので、ソックス調整などで物理的に埋めてしまう等の対策を施されるのが吉かと。
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トゥ・ヒール周りが少し遊びやすい事以外はフィットに関して過不足無し・むしろシューレースポイントの間隔と厚手のレザーによるしっとりとした足馴染みが心地よい感触。
当たり前ですが、シューレースホールはすべてアッパー貫通式。
フォア横に補強の為レザーレイヤーをさらに1枚追加されてます。
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■ソールフィール
続いてソールフィール。
まずはインソールから。個人的にはこれが結構な鬼門になって来ようかなと…。
これまた元祖を知らないので、当時同じ仕様・構造だったか不明ではありますが、少なくとも近年復刻されたバージョン、たまたま店舗にあったほかラインナップを見る限り同構造だったので、もし実プレーに使用したいという方は重々注意頂ければと思います。(おそらくそんな変態いないと思いますが…。)
何が問題かというと、材質と厚み。
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表面は別問題ではないです。一般的なファブリックなので。(サーフェス的には少しツルツル・スベスベ系ですけど、クリティカルじゃないです。)
厚みが曲者。
材質に関しては言及が特に無いので詳細わからないですが、おそらくポリウレタンフォーム。厚みが約6mmくらいあり、熱が加わると少し柔らかくなります。
これにより大きな沈み幅ができる・上部空間に更に隙間ができる・プッシュのタイミンがずれるに繋がって行きます。
そして6mmもあるお陰でアフター系のインソールもマッチするものがありません。=対策しようが無い。
(…わかっています。カジュアルシューズに何をここまで熱くなっている・求めているんだよ、と。その通りです。ただのロマンですのでもうしばしお付き合い頂ければと。
カジュアルシューズとしてのこの仕様は正解、というおこがましい事は言えませんが最適な部類に入ると思います。もともとこの年代のシューズはクッション性が高いわけではないので、インソール側で帳尻を合わせたいが為二この様な構成になっているかと。≠もしこれがオリジナルでもこの仕様だったとしたら大分あれですけど、恐らくそれもないと思います。
※ちなみにAJ1 High OGも一部この仕様の物を見つけています。多分仕様が混在しており、オーソドックスなスポンジ的な薄いインソールの物の方がバスケという競技では使えると思います。)
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上記インソールのお陰で、ミッドソールの影が薄いのなんの。
元々がカップソールとハードラバーの組み合わせで現代のフォーム系のそれに比べて硬い事+狙いとしてソールを薄く仕上げている事もあってダイレクトな乗り味のソールユニット。
それに加えて恐らくこのシューズにおいてはインソール側で調整する故にオリジナルより更に薄く仕上げている可能性があります。
本来のダイレクトなフィーリングが好きな人にはこのインソール仕様は邪魔になる / クッション性が必要な方には必要な仕様変更という感じです。
もちろんヒールにAirが搭載されてますが、これもインソールの柔らかさが先に働く形になるので余計に体感し辛かったです。
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前述の通り”マイナス作用なの?”と言われればそんなことは決して無いです。もちろんこれを求めている方・主戦場も違いますので。
バスケという競技利用に置いても足当たりが柔らかとも取れるわけですから、それは求めるものの違いになろうかと。
自分的にはオリジナルに近しい構造の、素足のようなダイレクト感が好みという話でしか無いです。
なので、純粋にバスケをするということに関しては特別なモデルとかではないAJ 1のMidバージョン等の方が個人的には快適です。
話を戻しまして、このインソール・内部構造、形状的にはよく出来ており、しっかりとしたアーチサポートが作られています。
俗に言う土踏まず部分の立体的形状ではなく、中〜外にかけて直線的に段差が設けられており、アーチ全体をプッシュしてくれている様な形状。
人によっては邪魔に感じるかもですが、自分はこちらのほうが疲れずに歩き続けられそうな良い工夫に感じます。
アウトソールは母指球を中心に放射状に広がるサークルパターン。
ヒール側はAirの形状に合わせたブロックパターン。
AJ1と一緒…じゃなくAJ1がAir Shipと一緒、ですね。
全体的な接地面積も広く、グリップ力としては超強力レベル。
むしろ今の環境配慮型のラバー材質よりはるかに強力です。
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■重量
最後に重量。
26.5㎝で482g。重い・軽いでは無く”妥当”だと思います。
現代モデルのように軽量・高剛性素材がまだ生み出されていない時代ですから、全てレザーを用いて構成していると考えれば特に違和感を感じないです。
大丈夫!Lebron 19の方が重たいよ!(26cm/520g)
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■Over All
ということで、以下に評価してみようと思います。
フィット … 7/10
グリップ … 9/10
ベンチレーション … 5/10
クッション … 6/10
コスパ … 7/10
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ALL … 34/50
この復刻形状ではカジュアルシューズ、でした。至極当たり前の感想ですが。(ただのロマンです!w)
インソール含めたソール構成がオリジナルと違う可能性がありますので、当時のそれとは大きく異なる体験であろうは重々承知。
この個体・単体で見るならばオンコートで使うには少し沈み幅が大きいのでで運用が大変かもしれません。
これであれば、上でも書いた通りお高いOGモデルじゃないAJ1 Midとかのほうがバスケで用いるには快適に動けそうです。
ただ、ぶっちゃけそんな事はどうでも良くってw
各所で書いている通り、Nikeとしては既にパフォーマンスシューズとしては不適当のカテゴライズをしているシューズですので、真面目にバスケするための尺度に当てた場合にどうなるか?というアホなことをしているのは使用者のワタシの方なわけです。
スコア・結果がどうこうより個人的にはこの大きなマイルストーンとなったプロダクトに、オリジナルの仕様・構造とは違うながらも実際に物として触れられた事実だけで本当に感激物なのです。それだけでもトライする価値が十分にあったと感じてます。
だって当時は欲しくても存在しない・復刻目処も立ってないものだったのですから…。
レザーの質感・内部の縫製の仕方、こういったところでクラシックを少しでも堪能出来ただけでも十分に満足です。
AJ1よりアイコニックでは無いかもしれません。装飾も少なくプレーンな見た目です。でも元祖で原点。オフコート利用においても少しでも目を向けてもらえたら嬉しい限りです。
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