第13話 タッパーの使い方
母が病気になりました。
病名は急性骨髄性白血病です。
母は、掃除が嫌いです。
躾の厳しい家庭ではなかったのでしょう。母のお父さん、つまり、私のおじいさんは、母が5歳で戦争が終わった後、働きまくって家にはあまり居なかったようです。おばあちゃんもあまり厳しい方でなかった気がします。
掃除ができないのは構わないのですが、私はお料理が好きなのでキッチンが汚いのだけは嫌なんです。冷蔵庫の中が汚いのも、コンロの周りが汚いのも、もう、ムキーーーっ!ってなっちゃいます(笑)
まあ、でも一緒に暮らしてるので、我慢も必要です。母が病気になってからは、率先してお掃除をして、キッチンを綺麗に保っていました。
もう、100歩譲ってお掃除できないのはよしとします。
ですが、母は、調味料から、なにから、キャップも蓋も閉めません。置くだけです。
もう一度いいます。
置くだけです。
そうなんです、倒れたらこぼれます。
冷蔵庫の扉裏の場所は、こぼれた酢味噌や、謎の液体でいつも汚れています。それでいて、同じ物をたくさん買ってきて、奥にしまい忘れるので、奥の物は賞味期限が切れる。手前の物は、ふたをしない。この魔のサイクルなのです。
病気で抵抗力が下がってるからと注意しても、サランラップもせずに食べ残しを冷蔵庫にお皿のまま入れるし、下手すると、食べ終わって数時間放置してから、しまうなんてこともあります。
もう本当に困ってしまいます。
そんなある日事件がおきました。ちょうどシンクで洗い物をしていて、手を滑らせ飲み物をこぼして床を拭いているときでした。
あれ?
これ、システムキッチンの一部だと思っていたら、タッパーだ!
えええ!
シンクの下に穴が開いていて、タッパーが綺麗に埋め込まれていました。
母にこれはどうしたのかと聞くと、得意の聞こえないふりをしました。
私は、タッパーの奥に、食べ物が落ちていたら・・・と思うと、怖くなり、タッパーはそのままにしました。
母は、タッパーの件だけは、口を割りませんでした。
まー、人間秘密のひとつやふたつありますもんね。
良い子の皆さん、タッパーは穴もふさげますよ!(笑)
(続く)
イラストは元吉茉莉花さんです。twitter(@marika_3o210 )
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