【3-WHYsモデル】インナーブランディングを促進する社内研修デザイン
こんにちは。ブランディング×弁護士の三浦です。
コンセプトドリヴン・コンプライアンス: 担当者の9割が見落としている企業コンプライアンスの極意のペーパーバック(紙の書籍)版、現在鋭意作成中です。本の判型や文字の大きさ、フォントなど結構決めることが多く、四苦八苦しています。
さて、今日は「インナーブランディングとコンプライアンス」についてお話しします。
インナーブランディングとは?
インナーブランディングとは、社内に「ブランドの体現者」を増やすことを目的としたブランディング活動です。
これまでブランディングといえば、顧客に自社のブランド、製品やサービスを知ってもらう「アウターブランディング」が中心でした。しかし、単純なモノの所有を目的とする「モノ消費」から、体験や経験に価値を見出す「コト消費」に消費の流れが変わると、商品やサービスの提供に携わる人びともブランドの重要な一部になってきました。
例えば、スターバックスの人気を支えているのは、コーヒーの味だけではなく、コーヒーを提供してくれるスタッフの雰囲気に由来する心地よさです。つまり、スターバックスというブランドは、彼ら「ブランドの体現者」を通じて消費者に対して「コト」を提供しているわけです。
アウターブランディングをもっと強力で消費者を惹きつけるものにするには、このような「ブランドの体現者」を増やす必要があります。こうしたことから、「ブランドの体現者」を増やすインナーブランディングが注目されるようになってきたのです。
社内研修でインナーブランディング?
インナーブランディングの観点から見ると、社内研修はブランドの「想い」への共感を育む格好の場といえます。これはインナーブランディングを目的とする研修はもちろん、そうでない研修でも同じです。
企業には、様々な社内研修があります。営業研修、人事研修、情報セキュリティ研修、私たち弁護士がご依頼を受けることも多い法務・コンプライアンス研修などです。
営業研修や人事研修は、「インナーブランディングにつながりそう」というイメージができますが、情報セキュリティ研修や法務・コンプライアンス研修がインナーブランディングにつながるというのはちょっとイメージしづらいかもしれないですね。
それのそのはず、これらの研修は「知識の習得」と「べからず集」のようなものになっていることが多く、インナーブランディングの取り組みとしてデザインされていることがほとんど無いからです。
「3つのWHY」で研修をリ・デザインする。
インナーブランディング促進のための研修デザインに欠かせないのが、「3つのWHY(3-WHYs)」です。「3つのWHY(3-WHYs)」は、3つの視点から研修の目的を考えるモデルです。
コンプライアンス研修を例として考えてみましょう。皆さんの周りのコンプライアンス研修では、その目的についてどのように語られているでしょうか。
法令知識をつけて、責任ある社会人としての行動を取るため?
社会の潮流に乗り遅れないようにするため?
政府が最近発表したガイドラインに対応するため?
こんなところでしょうか。もしかしたら、「研修の目的」が語られないまま法令の勉強だけをするような研修を受けている方もいるかもしれません。
こんな研修では、インナーブランディングはちっとも進みません。なぜなら、「責任ある社会人」「社会の潮流に乗り遅れない」「ガイドラインへの対応」のいずれも、ブランドの理念や目的との間に距離があるからです。これではいけません。研修をする側は「責任ある社会人」になるということと、ブランドの理念との間にどのようなリンクがあるのかを明確に語る必要があります。
研修の目的と、ブランディングの目的をリンクさせるのに役立つのが3-WHYsモデルです。
3-WHYsは、私が法務・コンプライアンスのコンサルティングで行うワークでよく使っているモデルです。
1つめのWHYは、組織のWHY。ここには、その組織のパーパスやブランド理念を記入します。
2つ目のWHYは、個人のWHY。ここには研修の参加者が感じている仕事や人生の意義を記入します。ちなみに組織のWHYと個人のWHYがしっかりと重なっていることが、よいブランド理念の条件です。
3つ目のWHYは、法律のWHY。その法律がどんな理由で存在しているのかを記入します。少し難しい言葉で言うと立法趣旨とか立法事実です。法律のWHYだけの研修は心に響きませんが、法律のWHYが抜けている研修も「仕方が無いから、法律を守りましょう」といったニュアンスになりがちで、法令軽視の態度を助長してしまう側面があります。
私が行っている法務コンプライアンスのコンサルティングでは、3-WHYsを考え抜くことによって、「ただの法律の勉強」にしか見えなかったコンプライアンス研修とブランディングとの繋がりを可視化していきます。これによって、研修をする側・受ける側の意識が目に見えて変わってきます。
3つ目のWHYは、セキュリティ研修であれば「セキュリティのWHY」のように研修の中身によって変わります。3-WHYsモデルで研修の目的を見直すことで、研修の直接の目的だけでなくインナーブランディングも同時に進めることができるので、お勧めです。
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