おとめ座

 「〇〇って何座なの〜?」
 小学校の頃に恐れていた質問の一つだ。男なのにおとめ座だからだ。
 先陣を切って思春期を拗らせていた私にとって、この世に男として生を受けると同時に、意図せずおとめの要素を備えてしまったことはとても恥ずかしいことだった。また、男なのにおとめ座であることが発覚してしまったとしたら、弱みを握られたように感じるため、ひたすら相手に警戒し続けないといけないと本気で思っていた。まるで現代の隠れキリシタン。乙女座ではなく、「おとめ」座と平仮名でゆるふわ感を出しているのも中々にキツい…。
 そんな私がこの質問に対してとった対策は、「〇〇ざ」という単語でボケるという手段だ。ある時には「餃子」、また別の時には「便座」とも言った。かなり滑っていることは自分が一番分かっていた。それでもおとめ座であるという事実がバレてしまうよりも滑る方が当時の自分にとっては100倍マシだったのだ。
 今の友人にこの話をしたら、「便座は汚いでしょ」と言われた。たしかに。

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