思いは伝わるとうれしい
当たり前なことしか言えないが、それを世間で言われている事実として認識するか、自分がそう実感して理解するかはまた別だと思います。そういうわけで、思いは伝わるとうれしい。これは、自分が思いを伝える側でも、相手の思いを受け取る側でも。
先日、魔法の文学館へ行ってきました。角野栄子さんの作品は魔女の宅急便を幼少期に読んだだけだったので、そんな私が行ってもいいのかうっすら悩んでいたのですが、友人からお誘いいただいたので、えいやと行ってみることにしました。全部知らなきゃと思っちゃあんまり行動できないし、興味があったら動けるようでありたい。そう思っていても実際うだうだ考えてしまうのでそれを取っ払ってくれる友人のお誘いは最高にありがたい。人の漢字の一画目でいがちだから二画目をたまには担えるような人間になりたい。
感想は、一言で表すと、すごく楽しかった。これに尽きます。江戸川区角野栄子児童文学館という名の通り、子ども、またその親御さんを第一に考えた施設だと、感動で夢見心地になりながら思いました。どこがそう思わせたのか考えたく、文字盤を打ち始めた次第であります。
①内装の工夫
入場すると、そこは一面ピンクの世界です。角野さん曰く、この色はいちご色。かわいらしくて、きらきらとした魔法にかけられた気分になります。この時点でもう楽しい。
図書コーナーの前にまずは小さな街並みと出会います。この街並みの窓のいくつかは開けることができ、中ではキャラクターたちがパラパラ漫画で動いたり、突然色がついたりします。また、小さな覗き穴を見つめれば、キャラクターとたくさんのホットケーキの世界が!
本だけでなく、子どもがおもしろいと思う工夫。扉を開けた女の子が「見て!」と得意気に話しかけてくれたことが、とても印象に残りました。扉を開いて物語を見るのは本を開いて物語の世界に飛び込むのと同じで、小さな穴を覗いて物語の世界をひっそり眺めるのも読書と通ずるところがあると思います。物語を楽しむ、その楽しさを伝える仕組みだと感じました。まずこれが感動ポイント。
②どこでも読書
2階はライブラリーと名付けられたように、大きめの読書スペースがあります。この日見たところ親御さんたちの交流の場になっていて、それも素敵だと思いました。しかし、読書できるのはそこだけに限りません。
これ、ずっと欲しかった!と思ったのは、階段読書席。階段の隅にクッションが配置され、座ることができます。階段の隅ってなんだか落ち着いて、私は小さい頃にまさしく家の階段で読書をした覚えがあります。しかもそのクッションの横には、階段という開放された空間から少し隔離された、小部屋のような読書スペースもあるのでした。この小部屋は一階にも存在し、誰にも気にかけられず、1人で読書をしたいというおよそ多くの方々の願いを叶える空間でしょう。このどこでも読書をできる仕組みは、気になった本をすぐ読めるという利点もあります。座れないならいいや、とならない。近くの図書館もこうなったら私は絶対階段読書人間になります。いいな〜ほんとに!
③蔵書
1番の目玉だと思っています。角野栄子さんと選書委員の方々が厳選した本たち。もちろん地域の図書館も熟考を重ね選書を行っているでしょうが、ここは図書館全体として子どもを注視しているため、他の図書館の児童書コーナーとは冊数がかなり充実しています。現在たくさんの児童書が出版されるなかでこの本たちが良いとされたなら、まずはそれらから読んでみようと道標になってくれる。これらは子どもたちにとって非常時の錨になるような本なのかなと『児童文学論』を思い出しました。
読んだことのある本を見つけるたびに、覚えている物語のかけら、それさえなくてもそれを読んだときのときめきが甦りました。もっとずっと居たかった〜。気になる本はメモして帰ればよかったかなと少し後悔。
大きく分ければこの3つかと考えます。角野栄子さんの仕事場再現やお洋服であったり、企画展示、カフェ、お土産コーナーももちろん全部おもしろかったです。時間の都合で黒猫シアターが見れなかったので、次回は見たい。
子どものための図書館は初めて行ったのですが、私が近所に住んでいたら毎日来たかったなあと思いました。こういう場所が他にも増えたらいいな。子どもに物語を楽しんでほしい、という思いをひしひしと感じる空間でした。思いが形になっていて、それがとてもうれしかったです。私も自分の思いを、有形無形問わず何か作り上げられるようになりたい。