見出し画像

レアモデル列伝-42 期待外れで 虎・照れる

 2024.12.11 「レアモデル列伝−40:Romuさんのお仕事」で、「1998年のAustralian GP高木虎之介のデビュー戦Tyrrell 026 Ford、特徴はドライバーの横Xウイングを装備したTyrrell最後のマシン、入手後記載予定としている」と記載したが、そのモデルが2025.01.18にやっと入手できた。

 Tyrrell 026(本邦ではタイレルティレルの二通りの呼び名があるがここでは「照れる」もその並び)はTyrrellが1998年のF-1世界選手権参戦用に開発した車。Tyrrell 最後のF-1マシンである。

マシンは前年の025で限定的に採用されたXウイング(スター・ウォーズシリーズに登場した戦闘機になぞられて命名)(Tyrrellの他にFerrari F300、Sauber C17、Prost AP01にも装備された)を当初から前提とした設計で、一説にはXウイングがダウンフォースの5%を稼ぎ出していたとも言われている。しかしそのウイングは4月 第5戦スペインGPで安全性の理由(破損した際などにマシンがコントロール不能になるリスクがある)から即時使用禁止となり、以後のダウンフォース不足に悩まされ、活躍できず。

1/43   Romu特注のSpark製 ドライバーの左右横に小さなウイングがある

 設計したHarvey Postlethwaiteによれば、「025と比べ026は96%が全く新しくなり、新規定のナロートレッド化によって失われたダウンフォースを可能な限り取り戻すことが主眼の設計コンセプトとした」とされた。

 1998年は競争力のあるエンジン(Ford Zetec R 72度V10)(F-1での優勝回数8回、ポールポジション6回)とよくできたシャーシを持っていたが、シーズンを通してノーポイントとなり失望のシーズンで終了となった。

モデルはRomuがSparkに特別注文した製品、350台を注文し、その50番目の物。

台座の後方に050/350と記載されている

 このTyrrell 026のモデルはかなり以前にminichampsからも発売されている、しかしそのモデルはXウイングが外された第5戦以降の車。

(参考モデル)1/43   minichamps製
 同じ高木虎之介のモデルだが、Xウイングが無い第5戦以降の車


 さて、もう一方の主役は高木虎之介。愛称は「」「虎之介」等、静岡市出身で海外メディアからは「TORA TAKAGI」(トラ・タカギ)と紹介される。

(参考写真) 2000年の頃の写真

 中学在学中にKartデビュー、1989年には全日本カートA2クラスでシリーズ優勝し注目を浴びた。1990年には全日本カート選手権A2クラス優勝、1992年にフォーミュラ・トヨタに参戦、1994年に中嶋企画から全日本F3000選手権にスポット参戦、1995年からフル参戦を果たし、その5戦で初優勝、8戦で当時「日本一速い男」の星野一義をかわして優勝の実績があり、中嶋企画から1年はF-1のグランプリコース習熟にあて、翌年Tyrrell でF-1デビューとここまでは順調であった。
 高木の速さの要因について土屋圭市氏は「彼はシフトダウンが他のドライバーと比べてとても速い。他人が“ブーンブーン”と落とすところを“ブンブン”で済ましちゃう。だから奥まで突っ込めるし、アクセルを開けるのも早くできる」と分析している。
 しかし精神面にかかるプレッシャーや移動による身体的疲労も大きく、しかも長期間海外レースを戦っているのに語学力が向上せず、最後までエンジニアとのコミュニケーションに問題を抱えていたことが指摘されている。

 その点、現在F-1で戦っている角田裕毅は子供の頃から両親の意向でインターナショナルスクールに通学、ここでは全ての授業が英語で行われ、語学力は全く問題ないと言われている。

(参考写真) 角田裕毅とF-1の元チームメイトPierre Gasly、会話はおろか冗談も交わせる

 高木虎之介の経緯が、今後F-1を目指す若者の心に余裕を与える他山の石となれば幸いである。

                               2025.01.18

参考資料
・Racing on  F1 サムライ列伝 vol.521 ニューズムック 2022.11.16

いいなと思ったら応援しよう!