事実は小説よりも奇なり-21 Penskeスポンサーの遍歴
趣味のChaparral収集は白い車、その中に黄色のChaparral 2Kを見た。白と異なる黄色がどの様な理由で採用されたかは不明であるが、所謂Pennzoilカラーであるためらしい。それが理由でPennzoilカラーのモデルカーも収集をしている。
2024.03.10にeBayで落札し、2024.03.25入手したLola Pennzoil 1991 No.4 John Andretti が駆ったOnyx 製の1/43モデル。John AndrettiがTeam Penskeに属していたという情報は無かったので調べたところ、この年からPenskeはPennzoilのスポンサーを降りて、Marlboroのみに鞍替えしたことが分かる。
Team Penskeは米国・ノースカロライナ州ムーアズビルに本拠を置くTeamで2013年まではPenske・Racingを名乗っていた。
Roger Penskeがチーム監督としてIndyに挑戦したのは1969年、当時のエースドライバーはかのMark Donohue、クールカットの髪型が似合うキャプテン・ナイス。車はオイルメーカーのSUNOCOからスノコカラーと称された。
興味のある方は「note」:異能β-14 キャプテン・ナイスって誰 !? を参照願いたい。
その69年、スポンサーはSUNOCOと共にSIMONIZの名が付いていたが、翌年からはSUNOCOのみとなり、73年まで継続。その前年の72年、M. Donohueが駆ったMcLaren M16 Offenhauserが予選3位で決勝1位となり、R. PenskeにIndy初制覇をもたらした。
74年、スポンサーはScoreとNorton、いずれのメーカーも内容不明、Nortonといえば一般にはオートバイメーカーだが無関係。
75年はCAM 2 Motor OilにNorton Spiritとなり、これが77年まで継続。
78年にはNortonとCAM 2にGould Charge(グールド・チャージ)が追加され、このスポンサーを獲得。
79年に前年ルーキー賞のRick MearsがNo.9 Gould Charge Penske Cosworthを駆って予選・決勝とも1位でR. Penskeに2度目、彼自身4回勝利の最初の栄冠を獲得した。
80年には一時的にEssexも加入、これにMario Andrettiが加わったが彼はこの1戦だけの参加でAndretti名は彼以外にはいない。前述のJohn AndrettiはTeam Penskeには参加していないのだ。なお、この80年の勝者はPennzoil Chaparral 2KのJohnny Rutherford、筆者がPennzoilカラーを目に焼き付けた最初であった。
81年はNortonとGould ChargeにA. B. DICKが加わり、Norton Spirit Penske Cosworth を駆ったBobby Unserが予選・決勝とも1位でPenskeに3度目・彼自身2度目の優勝を飾った。
83年、R. PenskeはPennzoilをスポンサーに付けたが、レンタカーのHertz、ビールのMiller、内容不明はHigh Life等の名前も見える。
84年、Rick MearsはPennzoilZ-7 March Cosworthで予選3位・決勝1位を飾った。
85年、Pennzoil、Miller、Hertzがスポンサーで、No.5 Miller American Special Marchを駆ったDanny Sullivanが予選8位で決勝1位を飾った。
このDanny Sullivanは、ハンサムな容貌と長い下積み生活など、アメリカ人好みのサクセスストーリーの主人公の条件を満たしており、TVドラマの「マイアミ・バイス」に出演するなど、一躍マスコミの寵児となったといわれている。
86年、スポンサーは前年と同じで、この年まではCosworthエンジンで戦った。
87年からはChevroletエンジンがメインで、Pennzoil、MillerにCumminsがスポンサーのCummins / Holset Turbo Special March Cosworthを駆ったAl Unser Srが予選20位、決勝で4回目の優勝を飾ったがエンジンはCosworthであった。
88年、Pennzoil、Miller、HertzがスポンサーでPennzoil Chevrolet車を駆ったNo.5のR. Mearsが予選・決勝とも1位を飾った。なお、同じ黄色のHertz Penske Chevrolet車を駆ったNo.1のAl Unserが予選・決勝とも3位の戦績であった。
89年、Hertzが去り、遂にMarlboroがスポンサー名に連なった。Al Unser Srが予選2位で期待が齎されたが決勝は24位に終わった。
90年、遂にEmerson FittipaldiがNo.1のMarlboroカラーで予選1位を獲得したが、決勝は3位に終わった。他スポンサーのPennzoilはR. Mearsが駆って2位で決勝5位、もう1台のMarlboro車はD. Sullivanが駆った9位で決勝32位と良い戦績は残せなかった。
91年、Team PenskeはMarlboro車が2台でNo.3のR. MearsとNo.5のE. Fittipaldi、No.3車が優勝R. Mearsが予選・決勝とも1位で彼自身4回目の優勝であった。
なおPennzoil Z-7はTeam Penskeではなく、No.4 John Andretti で予選7位、決勝5位であった。なおこの年Andretti一族は4人参戦し、Michael(予選5位-決勝2位)、John(7-5)、Mario(3-7)、Jeff(11-15)の戦績を残している。
92年、2台のMarlboro車に新たなスポンサーのMobil 1をPaul Tracyが駆ったが、予選19位で決勝20位と結果を残せず。
93年、Marlboro車が2台、No.4のE. Fittipaldiが予選9位で決勝優勝と彼自身2度目のIndy制覇であった。
94年、エンジンがMercedesとなったMarlboro車は3台、その中でAl Unser Jrは予選・決勝とも1位なり、Unser家に新たな歴史を作った。
1996年〜2000年、Indy Racing League(インディ・レーシング・リーグ)
(IRL)が発足し、Team Penskeは参戦せず。
Marlboroの単独スポンサーは煙草宣伝の終止で2001年の参戦が最後となり、以後はMarlboro-Team Penskeで参戦(これで参戦できた理由不明)、2007年以降Marlboroの文字が消え、Marlboroカラーのみで参戦、2009年以降はMarlboroカラーが黒と銀に変更された。最後の2018年は4台が参戦し、No.12 Verizon Team Penske Dallara / Chevroletを駆ったWill Powerが3位スタートでの優勝を飾った。
考察:Team Penskeは1967年から2018年までの戦績を記録した冊子を発行。これによれば、45年間(6年間の休止期間あり)で、113回の参戦(2〜4台が同時参戦あり)、内フロントロウに45回、優勝17回(内Poleからスタートしての優勝が7回)、個人優勝回数は記載の通りRick Mearsが4回(15回参戦)、Helio Castronevesが3回(18回参戦)、Laps LedはRick Mearsが429Laps(9Race)、Emerson Fittipaldiが335Laps(4R)、Helio Castronevesが305Laps(12R)他で計2,232Laps、エンジンではOffenhauserが1回、Cosworthが5回、Chevroletが通算6回、Mercedes・Oldsmobileと・TOYOTAが各1回、Hondaが2回、賞金総額:不明。
この様に見てみると、煙草広告規制で広告が出せるIndy 500に参戦し優勝することが1番の宣伝効果と考え、台数と優勝回数とそれを運営するTeamにMarlboroからの潤沢な資金が提供されたものと思われる。
ところで、Pennzoilのその後は、予選7〜24位、決勝は92年〜94年までは一桁台だが、以後は20位前後の中堅どころ。2006年〜13年まではエントリーさえしていないのか、予選落ちしたのか出走表には名前が見られない。
それが、2014年Pennzoil Ultra Platinum Team PenskeでHelio Castronevesが駆って、予選4位で決勝2位との記録がある。やはりPenskeが指揮を取り、部品や組み立てを完璧にすれば、結構な戦績が残せる事が示された。
2024.04.07
一部追加
2024.04.24に新たな1台を購入した。Ertl(アーテル)というメーカーの
モデル、1998年のIndyに参戦した、予選:10位、決勝:24位のScott Goodyearが駆ったモデル、Scott Goodyearはその後にIndy優勝も記録するので、腕前は悪くはないが、Penskeから離れたPENNZOIL Teamからの出走なので、上記の結果しか残せていない。
2024.04.27
一部追加 2024.06.15
一部変更 2024.06.29
関連文
「note」: 重箱の隅をつつく-4 タバコ広告規制
「note」: 事実は小説よりも奇なり-9 PENNZOIL モデルの悲劇と喜劇
「note」: 事実は小説よりも奇なり-16 トンデモメーカー製PENNZOIL Indy Carは入手困難モデル を参照されたい。
参考文献
・林信次 INDY 500 1911-2017 三樹書房 2018
・檜垣和夫 インディー500 二玄社 1994
・TEAM PENSKE 50 th Anniversary at the Indianapolis 500
Rizzoli New York 2019