事実は小説よりも奇なり-26: 悪魔の降臨
2024.08.01に「事実は小説よりも奇なり-25:David Piperが駆った車の不思議」を記載したが、その日のFace Bookに購入モデルの記事が載り、未だ届いていないモデルを発表した奇特な方がいて焦った。そのコメント欄には他の方が「黒歴史のある車」と書いていて、一寸心が動いたがNHKの番組「魔改造の夜」で発表される突飛な思い付きの「悪魔の降臨」を思い出し今回の表題とした。
昔から、突飛な考えを思いつき、試作を繰り返すのが歴史。その中には永久機関等種々ある。
その結果、車に於いても参戦するも予選通過「0」なんて物も多数目にすることが出来る。例えば「MAKI F-1」や、オートバイエンジン4個で4輪を駆動する「Macs It Special」等を資料で見ることができる。
ここでは1990年に作られた「Life L190 W12」(過去に失敗したRacing EngineのNo.1)ついて考察した。
エンジンの気筒数、昔はV型24気筒もあった様だが、これは主に機関車や超大型トラック(400トン積みダンプ)に使用されたようだ。現在ではBugatti VeyronのW型16気筒や、Cizeta V16T、Cadillac V16が最大であろう。
レースカーでは1920年代のBugatti・tipe35や、1950年代 Benz 300SLRの直列8気筒が最大か、1960年代ではBRMのH16(米国GPでJim Clarkが優勝)、Can Am等でのPorsche917は空冷180度V型16気筒も試作された。
さて、W型エンジンとはどの様なものだろうか。VWのV型直列は狭角のV6エンジンを2機並べたもので、12気筒から18気筒まで試作し、1997年にVW W12 Nardòを計画、2002年にAudi A8を皮切りに種々のモデルに搭載されたが、2024年4月に最後まで積まれていたBentley用が終了したようだ。
もう一つはNapier Lion engineに代表される1列4気筒のシリンダーを3つのシリンダーに分ける方法。一寸幅広だ。
L190の搭載したエンジンはユニークなW12エンジンで、FRANCO・Lokkiが設計した物であった。Lokkiは元Ferrariのエンジニアで、自らが開発したW12エンジンを用いてF1に参戦するという希望を持っていた。イタリア人のElnest Vitaが自らのチームを結成、Lokkiを招聘しその夢が実現することとなった。
LokkiのW12 Engine、F35はF1のレギュレーションに合わせて製作され、60度W型12気筒、排気量は3493cc、最高回転12,500rpmで650馬力を発揮した。燃料は直接噴射、1気筒当たり5バルブ、4本のOHCを採用した。Engineの全長は530mmで、コンパクトさが売りであった。(確かに他のV12エンジンに比べれば長さは短い、といっても横に広く、エンジンルームは幅広となっている)
Lifeは1台体制でシーズンに参戦。DriverにGary Brabhamを起用したが、開幕戦から予備予選落ちした。2戦を走った時点でBrabhamはチームに見切りを付けて離脱する。第3戦からBruno Giacomelli が駆るが、Giacomelli は6年ぶりのF1復帰であった。Driverが代わっても戦闘力は向上せず、予備予選落ちを続ける。チームはW12エンジンの使用を諦め、第13戦PortuguesaでJudd Engineを搭載したマシンを投入するが、それでも予備予選を通過することはできなかった。第14戦Spainを終えたところで、チームはF1から撤退する。L190は結局全戦で予備予選落ちし、決勝を走ることは無かった。
こんな戦績の車のモデル、欲しいと思う人間は結構な変わり者と考えられるが、このモデル、世界中から購入予約が殺到しているとの噂も聞く。世界でモデルカーを集める人間は結構な変わり者の様だ(褒め言葉)。
それではモデルを見ながら、その特徴というここが駄目だったところを見てみたい。
悪魔の降臨、優勝したチームは必ずしも大メーカーの技術者とは限らず、大学生や高専生、中小企業もある。一寸した閃めきが物になるかどうかは資金は当然だが、運や時間も必要なのかも知れない。
しかし、Romuも面白いモデルを企画するなぁ・・・。
2024.08.03
参考文献
グランプリカー大全集 オートスポーツ創刊60周年記念
サンエイムック 株式会社三栄 東京 2024年2月23日