重箱の隅をつつく-16 今一つ判らないLola T70 Coupeの型式
過去、Lolaが主となる記事は「傷だらけのローラ」「牙を研ぐ前、Lola T 163」「”cow catcher"とは何ぞや」「日本Can Amを走ったLola T160改造車」と結構ある。もっと細かい記事を探せば色々でてくるが、ChaparralやMcLaren程詳細な内容となった記事は無い。
今回は「傷だらけのローラ」以来のLola T70 Coupeの話である。
先ずはLola T70 Coupeで唯一単行本の表紙を飾る、Daytona 24hでの優勝経験のあるSUNOCO Lola T70 Mk-3Bの復習から。モデルは筆者が最初に購入したレースのスタート前と、その購入が切掛になった優勝時。スタート前は定価で購入できたが、フィニッシュ時は売り出されてから結構時間が経って、日本では既に購入できなく、eBayで探して購入したもの、結構高価であったが2台を並べるとその違いから「傷だらけのローラ」を地で見られる(その細かい内容は「レアモデル列伝-14 傷だらけのローラ」の本編を参照されたい。
次いで、赤いLolaは滝レーシングのLola T70 Mk-3。かなり以前から日本Can Amを書きたいと公言していたのを知っていたフィニッシャーがステッカー類を購入し、日本GPのモデルを日本Can Amモデルに改造、購入者を募集した時、最初に手を挙げて入手。もう一台はLola T160をサイモナイズLolaに改造して貰った時、更に改造を願い、その代わり値上げを告げたら、プレゼントされたモデル。最初は1台だけでも良かったが、2台並べると細部の違いを見ることができて楽しめた物。
さて、ここでLolaの番号について調べてみた。Lola創設時から番号が付され、その前にMkをつけた用語。簡単に記述されたものでは、1965年に発表されたオープン2座席スポーツカーは製造順でT 70 Mk-1 Spyder(SL70/1)と命名、Coupeに改良しAston Martinのエンジンを積んだがT70 Mk-2(T70 Aston Martinの名称の車もある)、FordやChevrolet用に改造したものがMk-3、更にフロント周り等の改造されたものがMk-3Bと理解しているが、一寸異なる解釈もあり、難解だ。
もっと難解はLola T73という車、実はLe Mansに参戦したNo.11、SparkのモデルはMk-2 Aston Martinとなっているが、Marsh Modelsの箱書きにはT73となっており、Lola本にもLola T73 Mk-3という項目で記載されている。そこで更に調べてみると、このT73は1台ではなく、なんと16台もあったのだ、モデルではNo.10だけではなく、No.11とNo.12もT73と書かれたモデルが見られた。
最初、T73はT70と同様の型式の名称と思ったが、シャーシナンバーであった。
前述のMk-2 Aston MartinはSL73/101でJ. Surtees/D. HobbsがLe MansのTest weekendに走ったと書かれているのでNo.10がそれに当たる、
Test dayはJ. Surteesが駆り2台のFerrari 330P4に次ぐ3位(雨中では1位)でM. Donohueが駆ったFord Mk-4より上位であった。本戦ではNo.11(SL73/121)に変更し、予選13位で開始1時間にクランクシャフトの振動でコンロッドが破損しDNFとなった。因みに同じLe Mansを走ったC. Irwin / P.de Klerk のNo.12(SL73/117)は、予選25位で本戦は4時間でDNFとなっている。結局Aston Martinのエンジンは信頼性に乏しく、米国エンジンを積んだMk-3がメインになった様だ。
日本GPに参戦した滝ローラはMk-3となっているが、シャーシナンバーはSL73/116(長谷見車)、SL73/130(高橋・酒井車)のLola T73であるが、エンジンはChevroletとなりMk-3と記載されている。
この様な事項は1998年に発刊された「LOLA Can-Am and Endurance Race Cars」には記載されていない。 23.07.29
参考文献
Gordon Jones Lola The T70 & Can-Am Cars Evro Publishing UK 2021
Dave Friedman LOLA Can-Am and Endurance Race Cars MBI Publishing USA 1998