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重箱の隅をつつく-17: Ford GT MK-II  プロトタイプからGTに

 モデルカーを趣味としている多くの方々は2020年1月に公開されたFord vs Ferrariを映画館やDVD等で見たと思います。

 1964年にFord MK-1、64年頃は単にFord GTとだけ言われたが、MK-IIと共にMK-IVが現れてから違いを示す意味でIやIIとされた。初期のPCを用いて設計された様だが、実践的では無く、日々改良されたが様々のレースに出て予選は早くともリタイアが多く、64年は完走無しの惨敗に終わった。

 65年、Fordはアメリカ人で唯一Le Mans優勝経験のあるCarroll Shelbyと契約し、レースカー開発の指揮を取らせた。車はエンジンを7ℓに変更したMK- IIが登場、Ken Miles がTest Driverになった。初戦のDaytonaと2戦目のSebringでは優勝を飾り、Le Mans優勝も視野にいれたが、優勝できず(この年はFerrari Factoryも優勝を逃し、優勝したのはNARTから参戦した250LMであった)。

 66年、FordはShelby American、Holman Moody、Alan Mann Racingの3チームに8台のMK-IIとバックアップとして5台のGT40を投入した。

1/43 Spark(SP)製 Ford GT MK-II 群

 対してFerrariは330P3が3台にプライベートから365P2/3が4台、275LMが1台の計8台とFordより劣っていたのに、更に直前にJohn Surteesがチーム内のゴタゴタで離脱、とても勝負にはならないと思われた。

 しかし、始まってみると、数時間でFordに数々のトラブルが発生と予想外の展開となった。6時間後には一時的にFerrariが1・2位を占めたが、12時間後にはFordが先頭集団を形成し、有利に展開した。18時間目にはMK-2が3台だけ(バックアップのGT40は全滅)となったが、この3台が走り切って1・2・3位を占めた。ここでFordの上層部は3台ならんでのゴールを画策、K. Milesは1位と思っていたところ、同一周回で一悶着となったのはご存知の如く。

映画のパンフレットとモデル

 このFord GT MK-IIの8台、No.1・2・3はShelby American、4・5・6はHolman Moody、7・8はAlan Mann Racingからの出走であり其々他との区別を容易にするようカラーを変えていた。

1/43 SP製 

 まずはShelby American、No.1は映画の主役でもありLe Mansでは同周で2位となったKen Milesと67年のF-1チャンピオンのDenis Hulmeのコンビ(初戦・2戦のパートナーであったLloyd Rubyは飛行機事故で負傷したためD. Hulmeが代役を務めた)、車の色は水色に白の2本線とフロントに赤いマーク、この車はGulfカラーとしてこの色としたようだ。
 No.2は優勝したBruce McLarenChris Amon組、真っ黒のカラーに銀の2本線、台座の白色はSPではウイナーとなったモデルやある種の主役の色。
 No.3は予選でポールポジションをとった、Dan Gurney / Jerry Grant組、18時間目でDNFとなった。
 Dan Gurneyは長身、頭頂部が天井よりはみ出すので運転席のその部に凹み(上に凸)の部がある、それをGurneyの名に因んでGurney Bubbleという。だからGurneyの車には当然だが、他の車(No.1・4以外)にも同じ部位にそれを見ることができる。


Holman Moody、No.4・5・6の3台
 No.4は茶色に緑のフロントのMark Donohue / Paul Hawkins組、予選11位、決勝は5時間でDNF。

 No.5は金色にショッキングピンクのRonnie Bucknum / Dick Hutcheson組、予選9位、決勝は3位、No.4とNo.5は色が似通っていて、フロントの色と形で違いを表したといわれているが、遠くからみるとそれ程異なるとは思えない。

 なお、パンフレットにこの車に車外バックミラーが付いた写真があったので、モデルと共に供覧した。

 No.6は青色に白戦が入ったMario Andretti / Lucien Bianchi組、予選12位、決勝8時間でDNFであった、なおこの車のみFirestoneタイヤでの参戦であったが、M. Andrettiの契約によるものとされている。モデルでは座面が白色だが、予選・決勝も特に素晴らしい成績ではなかったが、タイヤが他の車のGoodyearでなかったかららしい。
(Goodyearはタイヤの外周が青色で文字は白色、Firestoneは外周が金色で文字も金色となっている)

1/43 SP製 このNo.4とNo.5の区別は夜間だと分かり辛い
パンフレットの写真とモデル 本来この車に車外バックミラーは付かない
左はGoodyear(外周が青色で文字は白色)
右は一寸分かり辛いがFirestone(外周が金色で文字も金色)

Alan Mann RacingはNo.7・8の2台

 No.7は黒とグレーカラーのGraham Hill / Brian Muir組、予選6位、決勝は8時間でDNFとなった。このモデルの台座も白である、他の車と異なり、バックミラーが外付けとなっている点が、その理由の様だ。

 No.8は黄色に黒線の車、Frank Gardner / Sir John Whitmore組、予選3位であったが、決勝は6時間でDNFであった。しかし予選の4位までの3台がShelby American、その中に入って予選3位は意地で頑張ったのか。
 他の車と異なる点は運転席の前にワイパーの風除け(両車にあるがNo.7は見え難い、No.8では銀色で分かる)装備されている、効果の程は本にも書かれていない。

1/43 SP製 右のNo.7はこの8台唯一の外付けバックミラー

 実車と映画での車の違い、Fordでは(Ferrariも同様)バックミラーの有無が問題、実際の写真ではNo.7のGraham. Hillの車のみフロントフェンダーの後方にあるが、他の7台はフェンダーには付いていない。これは映画を見たモデル趣味人は皆語っていたが、本来は無い砲弾型のバックミラーが付いていた理由は、映画のロケ現場までの交通ルールでフェンダーにバックミラーが付いていないと交通違反となるためと言われている。映画撮影時に外し、帰る時付ければ、あるいはフィルムを加工すれば良いのだが、「こんなの分りゃしない」と鷹を括って画竜点睛を欠いたのだ。

 同じことがFerrariでも言える。筆者が最初に感じたのがヘッドライト、ここの違いはこの車が発表された当時から分かっていた、というか、P3の形がP4の形より好きだったから(筆者は一寸普通と違うのが好きな変人だからかもしれないが)。それとリアカウルが前(屋根)ヒンジか後ヒンジか、映画は後ヒンジ、これはエンジンを見せない様にした為ではないかとの意見が散見されたが、強ち間違いではなさそうだ。

1/43 左P3(Look Smart製)、右P4(BBR製)
ヘッドライトカバーの形状が異なる
1/18 BBR製 P3のヘッドライト部

ま、映画の内容が良かったのでミスを論うのはこの辺で。

 次は市販仕様のスポーツカーとなったGTとそのモデル、モデルは全部で何種あったかは忘れたが、4種を購入してあった。GT プロトタイプは生産台数が50台に達していない車、GTは50台以上生産されたロードタイプの車

1/43 minichamps製

 このモデルは何時購入したか不明、Gulfカラーは1 / 1,632、黄色は1 / 2,784、黒色は1 / 3,024、白色は1 / 5,040と色によって生産台数が異なる。やはり白色が一番売れると踏んだのだろう。

 1/1の本物に遭遇したことがある。2014.12.28 綱島街道を走っているとき見つけた、ドライバーの許可を得てパチリと。人によればGT40のレプリカらしいとの意見もあったがそれでも一寸見は完全にGT40

1/1 Ford製(?)

編集後記
 この題材は元々、今は無きminicar magazine誌に投稿予定としていたのだが、コロナ禍とスポンサーの急死で廃刊、発表できる場がなくなり箪笥の肥やし状態で保存していたが、ここでの公開に思いついた。

過去、掲載されたminicar magazine誌

 今回のこのレースモデルは2台を除いた6台で売り出された日時を知ることができる。
 かなり以前の購入はミスタークラフトがメインであったが、閉店後はKOJIMAをメインにした。この店は店頭に並べる時の金額と共に日にちが書かれている、それを参考に見てみると最初は2016.10.03が最初で2台、最後が18.02.16、途中の17年は11.15と2週間後の11.29に1台づつ購入している。最近は1日に大量の種類のモデルが販売されるが、昔の1ヶ月に1台づつの方が、予算には優しい、ただ最後のNo.8が何時購入したかは不明である。GTの4台は更に古く、何時・幾らであったかは全くの不明である。
 09.24に早速の間違いを指摘され訂正した(No.2は黒塗装に白線ではなく銀線であった)。
                       2023.09.24(同日一部訂正)

参考文献
・檜垣和夫 Ford GT Sportscar Profile Series -2 二玄社 2006

・Dave Friedman  FORD GT    Quarto Publishing  USA  2015

・Quentin Spurring   LE MANS  1960-69   Haynes Publishing  UK 2010


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