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重箱の隅をつつく-22:比べて見たら、目から鱗-3 Lola T160 角栄団地
2024.11.10 横浜は大桟橋のホールでホビー・フォーラムが開催された。
そこでは各メーカーからの出品、過去に発売されたモデルの再販、モデルの改造品、フルスクラッチ品、ジオラマ等々モデル趣味の人間にとってはこの上もない宝の山々。
今回のフォーラムでは1/43の2台のレースカーを購入した、これは期せずして68年の日本Can Amの参戦車。
1台はEBBROのモデルであったTOYOTA 7の改造車、もう1台はフルスクラッチのLola T160 角栄団地。
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TOYOTA7は「note」に掲載した「事実は小説よりも奇なり-8:’68日本Can Am」では参考モデルを用いて執筆したので変更した。
フルスクラッチのLola T160 角栄スペシャルはMarsh Models (MM)のこのモデルをプロフィニッシャーによる完成品として発売され、オークションに出品、「角栄団地」がメインスポンサーであったので入札に競争相手がいなくて結構安価で購入できた品があったが、同じモデル比べも趣味なので購入したのだ。
さて「事実は小説よりも奇なり-8:’68日本Can Am」に記載した一部で紹介する。
「第1回日本GPに出場した安田銀治がオーナーで角栄団地がスポンサー、角栄と書いてあるが元総理とは無関係、創業者 角田さんの角と商売が栄えるから付けた様だ。ドライバーのPedro RodriguezはF-1優勝2回を誇り、68年はJ.W.TeamのFord GT 40でLe Mans総合優勝、70〜71年は同チームのPorsche 917 を操り連戦連勝であったが、71年7月に事故死(31歳)した」中略「予選15位、決勝ではスタート直後6台を抜いて2周目に9位を走ったが4周でラジエーター破損によるオーバーヒートが原因でDNFとなった」。
なおこのドン・ニコルスが入手を画策したブランニュー・Lola T160がその後脱税騒動に絡む1台となり、競売後に黒沢敬次の手に落ち、その後の71年富士GC開幕戦では優勝マシンとなった後日談がある。
購入品はモデラーの「沼野洋志さん」によるフルスクラッチ。モデル趣味の人はご存知だが、モデルは本物を単に縮尺したものではない。斜め上方から車を眺めその印象を元にモデルを設計するとのことで、設計者の感性がそこに現れる。
ここで一例をお目に掛けよう。「note」「レアモデル列伝-33:Ford GT40 Roadster(Spyder)」に記載した抜粋の一部を記載する。
「好きな車のモデルは結構な数があるが、5台に絞れと言われると色々悩む。その1台がFord X-1(Ford GTX-1)。2021.2にフィニッシャーの山田雅之さん(上記、TOYOTA 7の改造品を作製)にM.A.Scale Models (MS)のキットを組み立てて頂いた、No.71は65.10にRiversideで行われたTimes GP でChris Amonが駆ったモデル。
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21.06にeBayでMMの同製品が出品されていたので落札し21.08.27に届いた。2台を比べると、細いところに其々のメーカーの解釈が見て取れる。
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前から見ると大きな違いはない
1番の違いはエンジン、MSは粗いWaiver(?)らしきであるのに比べ、MMは寝かせたラムパイプとなっている、種々の資料を見てもあるのは斜め前からの写真のみ、エンジンの画像は無い、あるいはMSのNo.4は65.12のNassau仕上げも作られる様になっていて、キャブレターの形が異なるのか(?)この様にモデルを比べられるのも趣味人の一興と考える。
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両者の一番の違いはエンジンのラムパイプの形状
それでは、今回の角栄スペシャル(Sp)でNY製とMM製のモデルを比べてみる。MM製のLola T 160は、この日本Can Amに限っても、角栄Spの他にはSam Poseyが駆ったモデル、Al Unserが駆ったモデル、それを改造したChuck Parsonsが駆ったモデル等があり、基本モデルはほぼ同じである。NYの製品には角栄Spの他に田中健二郎のモデルもあるのでキットを入れて10台程は同じ格好のモデルがある、どこに主眼を置いたかは不明であるがMMと同じ部分もあるし、異なった部分もある。
全体の格好は同じ様だが、MM製はラジエーターの空気取り入れ口の大きさが些かことなる、さらに入り口の形も多少の違いがある。このLolaの7.6ℓエンジンを冷却するにはラジエーターを大きくする必要があるので入口部と排気部の大きさは結構大きくなる、それがこの2台で異なるのが並べて見るとわかる。一番大きな違いはリアスポイラーを支える支柱がMM製は4本、NY製は5本となっている。MM製は資料をバックに撮った画像ではリアスポイラーに4つの止金が写っている。
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手元にはこの資料しかない
一方NY製は沼野さんが古い写真を見つけたところ、5本の支柱が写っていたのでそれを参考にしたとのことであった。
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リアスポイラーの支柱が5本写っている
沼野さんの言によれば「古いレーシングカーの場合、特にあまり活躍出来なかったクルマは、写真も少なく想像に頼らざる得ない部分が多く納得するしか無いのかと毎回思っていながらやっています」「このバランスからすると当初から5本では無かったかと想像します」「日本CAN-AMのリアからの鮮明な写真が無く、71年GC第2戦に出走したと思われる真田睦明車の写真を参考にしています」とのことで苦労が偲ばれる。
計時的に考えると、支柱は最初は4か所であったが、プラクティス後に1本加えられ、その後は最後まで5本で通したのかとも考えられる。
考え始めると夜も寝られず。
2024.11.17
参考資料
日本の名レース100選 ‘68 日本Can-Am Vol.005、平成18年4月23日発刊、
三栄書房