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ロシア経済が2025年破綻する理由

①労働力不足によるインフレと政策金利21%と異常な金融引き締め
②軍事費がGDP比6%(政府支出の40%超)と冷戦後最高水準
③中国への経済依存度の上昇(輸入の3分の1、電子部品の90%超)
④対外依存に反してルーブルは対中国元で6ヶ月間に20%超の通貨下落

ロシア経済が抱える矛盾

ロシアは制裁下にもかかわらず2023年に3.6%の経済成長を記録したが、これは世界を驚かせた。

しかし、戦争の長期化による労働力不足は失業率2.3%という事実上の完全雇用状態と、賃金上昇による8%を超えるインフレを生み出し、明らかな経済過熱の兆候を示している。
これに対し、中央銀行は金利を21%(20年ぶりの高水準)まで引き上げた。

この異常な高金利政策は、第二次世界大戦時の連合国(2-3%)と比較しても極めて特異な状況である。戦時下では経済活動の抑制を避けるため、通常金利は低く抑えられる。

高金利政策の影響は既に実体経済に表れ始め、企業倒産の20%増加、住宅ローン需要の急減など、深刻な悪影響が顕在化している。

IMFは2024年の経済成長率予測を1.3%に下方修正した。これは同国の異例の金融引き締めが経済活動を著しく抑制することを反映している。

この異常な金融引き締めを必要とする要因は、景気過熱対策もあるが、ロシアの外貨準備の約半分が海外で凍結され、残りの準備資産の大部分が国内保管の金という流動性の低い形態で保有されていることにある。この状況下で、対中国元で6ヶ月間に20%以上もの通貨下落が生じており、輸入コストの上昇を通じてさらなるインフレ圧力を生んでいる。

ロシアは現状の戦争経済下において、インフレ抑制、通貨防衛のために金融引き締めと、戦争継続のための財政支出拡大という、相反する政策を取ることを余儀なくされている。 この矛盾は、ロシア経済に綻びを生じさせるだろう。

もしルーブルの価値が下落すれば、ロシアが中国に依存している戦争兵器に不可欠なマイクロエレクトロニクスやその他物資の調達費用がかさみ、戦争継続が困難になるかもしれない。
金利上昇は政府債務の増加を招き、さらなるルーブル安を招く。ルーブル安を止める必至の介入がどこまで続くか見ものである。■
(2025/1/12)

その他の要因
・無償支援を行う同盟国の不在
・欧州12カ国による影の船団規制の強化
・原油価格上限(60ドル/バレル)のさらなる引き下げ検討
・中国が「無制限」から「非同盟・非対立」へ

参考:

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