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安倍晋三が愛したはずのオンナたち,櫻井よしこや稲田朋美,高市早苗,三浦瑠麗などは昭恵とは異質の女性群か(その3:櫻井よしこ)

 

 ※-1 公益財団法人国家基本問題研究所理事長櫻井よしこは,時代遅れの政治感覚を握りしめてあれこれ国家次元:自民党政権のための政治コンサルタントよろしく振るまってきた

 櫻井よしこは,生前の安倍晋三君には大いに気に入られ,非常に親しい交友関係を維持してきた。つまり,安倍にとってみれば櫻井は「極右一辺倒の女性扇動家:アジテーターとしての役目」を,遺憾なく果たしてくれる人士であったから,文句なしにアベの覚えはめでたかった。

 #櫻井よしこ  #意見広告  #嘘つきは安倍晋三の始まり  #好戦的な極右 

 その安倍晋三は2022年7月8日,統一教会「宗教2世」山上徹也が放った凶弾の犠牲になった。それから早9ヶ月が経過した現在,日本の政治全体がこの「世襲3代目の政治屋」「子どものようであった〈裸の王様〉」によって大々的に破壊されつづけてきた事実は,否応なしに国民たちに対して露呈されている。

 付記1)冒頭の画像は,「4月22日開催『憲法シンポ』 安倍前首相の出演決定 櫻井よしこ氏らが登壇 一般発売を再開,ネット視聴券も発売」『PR TIMES』2021年3月22日 12時10分,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001009.000022608.html から借りた。
 付記2)2023年3月26日,一部に残っていた「脱字・誤字・乱字」を補正。

 ただし,この2人とも大分若めのお写真をかかげてある。とくに女性である櫻井よしこのこの画像資料は,2桁昔の年代に遡れるものであったので,念のため。

 ともかく,安倍晋三の死によって,日本の政治社会という『パンドラの箱』のフタが空いてしまった。この国の実体はいまでは「政治4流・経済3流」にまで没落・沈下した。

 森嶋通夫『なぜ日本は没落するのか』岩波書店,1999年の予告どおりに,いまもなおその経過を踏みつつ進行中であるこの国は,「先進国から脱落しつつある」だけでなく,「発展途上国へのあとずさりまでした」ような「国力ならびに国柄」に戻っている。

 ところで,櫻井よしこは若かりしころの一時期,いくらかはリベラルな雰囲気ももちあわせていた時期がなかったわけではない。つぎに「Amazon 広告」を借りて紹介する彼女のこの本は(注文する場合,本体は1円だが,これに送料がくわわるのでご注意),いまのように,国家全体主義のイデオロギー丸出しにした言動からは想像だにできない発言をしていた。

【参考資料】-櫻井よしこが従軍慰安婦問題に対して「批判的な立場・意識を抱いた点」を記述していた1994年発刊の本である-

 以下の2つの画像で紹介するのは,櫻井よしこのこの本からの引用。

『櫻井よしこが取材する』1994年,27頁
『櫻井よしこが取材する』1994年,28-29頁

【参考画像資料】-だから,櫻井よしこの「過去の発言」は,つぎのようにもなされていた。これは櫻井が『週刊時事』1992年7月18日号に寄稿した記事であった-

櫻井よしこは「従軍慰安婦」問題を批判していたが?

 安倍晋三のとくに第2次政権,2012年12月26日から2020年9月16日まで(プラスその後につづいてきた菅 義偉と岸田文雄の政権期も含めてだが),この日本の国家としての基本趨勢は,

 森嶋通夫『なぜ日本は没落するのか』岩波書店,1999年の予告どおりに,いまもなおその経過を踏みつつ進行中であるが,「先進国からの脱落」だけでなく「発展途上国へのあとずさり」する「国柄」に戻ってしまった。

 ※-2 櫻井よしこは,現在の日本国総理大臣に向かっては,「岸田首相よ(!) 安倍晋三の遺志を継げ」という「おぞましい督励になるおことば」をたまわっていた

 岸田文雄が首相になってから,このアベと同類の「世襲3代目の政治屋」が,実は安倍晋三以上(以下?)にどうしようもないボンクラだらけの為政しかできていなかった事実は,時間の経つに連れて,ますます鮮明になってきた。岸田文雄は,米国という宗主国に対する屈従的な服属意識を,安倍晋三に勝るとも劣らぬほど強く備えている。

 さて,公益財団法人国家基本問題研究所理事長櫻井よしこは,これまで,たびあることにあれこれと,大手紙に意見広告を出してきた。しかし,その時代遅れかつ状況音痴であるほかなかった政治感覚が,

 こんどはさらに,このように「岸田首相よ(!) 安倍晋三の遺志を継げ」といったふうに,ただ「虚勢的なおぞましさ」をたくましくしただけの意見広告を出していた。これは,昨〔2022〕年8月10日に出していた。

櫻井よしこ,2022年8月10日意見広告

  本日,これから記述していくこの文章は,旧態依然たる日本(人・民族)的な妄想を,それも完全に焦点ボケのまま訴えつづける似非的知識人の哀れさを,櫻井よしこの場合に典型的にみてとり,批判的に吟味してみるというものになる。

 本日においてとくに話題にする論点は,たびあるごとに,櫻井よしこが世間に向けて訴えてきた『自説・持論の身勝手さ』,そして『論理の恣意的な運び方』に注目する。

 たとえば「安保法制」が「戦争法案」ではないと断定したつぎの意見広告は,安全保障条約というものが「戦争を前提に結ばれている事実」など,そちのけにして「きれいごと」にもなりえない妄論を吐いてきた。

 現在進行中であるが,「プーチンのロシア」が2022年2月24日に「特別軍事作戦」の名のもとに始めたウクライナ侵略戦争の関連でいれば,もしもロシア側が戦略核でも使用する事態になったら,NATO(北大西洋条約機構)に加盟している諸国は,ロシア全土に対して壊滅的な攻撃をすると専門家は警告している。

 安保関連法は,2015年夏から2016年春にかけて安倍晋三が成立・施行させていたけれども,この日本を戦争ができる国にした「法律の実際」を直視できていないのか,まあよくもここまでデタラメの極地・頂点にまで達した「大ウソ」を吐けるものだと,まことに感心させられる。

 「徴兵制」の問題などすでに目の前に存在するといってもいい,この国の政権を握る者たちの脳内構造になっているのではないか? 冗談も休み,休みに吐いてほしいところであるが,この女史の発想にかかると,その「論理の転倒」ぶりが回転する速度は無双であった。

櫻井よしこ,2015年8月6日意見広告

 

 ※-3 『日本経済新聞』2022年8月10日朝刊に櫻井よしこが「また,意見広告」を出稿していた。その意見広告はすでに前段にかかげてあったそれである

 今日の記述は,櫻井よしこのこの  「【意見広告】 岸田首相よ 安倍晋三の遺志を継げ」などに対してとなるが,意見広告として述べていた論理そのものが,場当たり的な発言に終始しており,しかもいかにズサンかつ支離滅裂であるかを,具体的に指摘しつつ批判もたっぷりくわえる。

 なおさきに,つぎの事実も挙げておき,本ブログ筆者が率直に感じていた違和感を提示しておきたい。

 まず,櫻井よしこの意見広告をさらに挙げておく。

櫻井よしこ,2009年11月13日意見広告

 この画像は2009年に出された意見広告であったが,ここに使用されている「櫻井よしこ」の画像は,衣装をみればすぐに分かるように,今回の意見広告で使用されている画像と同じである。つまり,少なくともこの写真は14年分,昔にまでさかのぼれる「よしこの画像」である。

 ともかくここで,今日現在閲覧した『櫻井よしこ オフィシャルサイト』「プロフィール」を紹介しておく。あえて断わっておくが,お顔も衣装も「昔のままで出ています」。ただし,和服姿は参考にまで。

『櫻井よしこ オフィシャルサイト』表紙から

 

 ※-4 さて今回,櫻井よしこが『日本経済新聞』2022年8月10日朝刊に出してのべた「意見広告」全文を引用し,この内容を逐一,論駁してみたい。

          ◆ 櫻井よしこ  意見広告 ◆
   = 岸田首相よ   安倍晋三の遺志を継げ  2022.08.10 (水)=
 
 安倍晋三元首相が亡くなったあとの日本にはぽっかり大きな穴があいています。岸田文雄首相に安倍さんの遺志を継いで前進するとの気概が感じられないからです。
 補注)この「日本のぽっかり大きな穴」を空けたのは,ほかならぬ安倍晋三君自身であった。その空洞を,誰であっても,受け「継いで前進する」ことなど,なすべき努力ではありえなかたし,もとより,できそうな想像(空想)でもなかった。

 そもそも,アベノミクス(⇒「内政の失敗」ばかりだったアホノミクス)やアベノポリティックス(⇒「外交のアベ」の大失策)が,この日本の経済と政治を,どのくらいダメにしてきたか,破壊してきたか?

 その事実についてはたとえば,「〈金子 勝の「天下の逆襲」〉」シリーズから,つぎの記事の参照を勧めておきたい。

 ★-1「民主主義の破壊『国葬』でアベノミクス批判は封じ込められない」『日刊ゲンダイ』2022/07/27,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/308826  が要領よく解説している。

 ★-2「台湾や韓国にも抜かれ… 亡国のアベノミクスがもたらした『国民』と『国家』の貧困化」『日刊ゲンダイ』2023/01/18 06:00,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/317344

 なお『日刊ゲンダイ』の購読者でないが,その全文を読んでみたいと思う人は,以下の住所でそれぞれの記事の全体を読めるので,こちらから入ってほしい。 

 櫻井よしこは, “虚空をみつめ” ながら自分の網膜にしか映らない “安倍晋三の虚像” をデッチあげている。

〔櫻井・記述に戻る→〕 いまにして思えば,安倍さんは「戦後レジーム」からの脱却を堂々と唱え,支持率を大幅に下げながらも平和安全法制を実現しました。自由で開かれたインド太平洋戦略という大旗のもとに安全保障,外交を展開し,内政では経済成長政策を果敢に進めました。最終目標が戦後レジームの元凶である憲法改正にあったのはいうまでもありません。
 補注)安倍晋三が唱えていたけれども,実は,なにひとつ実現できずに終わったのが「戦後レジームからの脱却」であった。平和安全法制(「安保関連法」)の実現そのものの〈本当の実体〉は,「対米服属関係」を完成させたところにみいだせる。

 「この国のかたち」は再度あらためて,日本総督府の実在をもって確認させられたわけである。そもそも,なぜ,アメリカの大統領はトランプ以降,バイデンもそうしてきているが,羽田ではなく厚木から日本に「入国するのではなく,あたかもの自国内の空軍基地間を移動するかのように利用しているのか?

 すなわち,その戦後レジームは「脱却どころか,逆方向に突っ走り」,しかもその固定化がもたらされたのであった。現状において,台湾有事にもしもなったら,日本は米軍の先兵になって「死を賭けた〈ふつう〉の軍隊になる」点を,否応なしに要求されることになった。

 ここでは「Amazon 広告」を借りてとなるが,関連する文献を紹介しておく。これらの本の題字だけみていてもウンザリさせられる〈なにか〉が,必らず含意されている。というよりは,その事実-日本総督府の存在-を感じさせられる。途中に入れるので,いささか邪魔くさいが,あえて5冊紹介しておきたい。類書はこれ以外にもたくさん公刊されている。

 2015年に成立し,2016年から施行された「日米安保関連法制」は,それでなくとも在日米軍基地によって実質軍事支配されている「日本の国土」を,昔,中曽根康弘がいみじくもいったように「不沈空母」に見立てておく視点を,より現実的に意味のあるものに仕上げた。

 また櫻井よしこが,安倍晋三を「内政では経済成長政策を果敢に進めました」首相だと褒め殺した文句を吐いた点は,噴飯モノだったというよりは,「ミソ抜きのクソ」だけをミソといいかえたごとき〈支離滅裂の迷説〉,寅さんが使う啖呵売用の口上ではないが,あるいは「結構毛だらけ猫灰だらけ,お尻の周りはクソだらけ」だった,の実例。

 前段はビロウな表現をしたが,要するにアベノミクスは出立した当初から,大失敗を約束されていた経済政策であった。「アベの外交」となったら,日本テレビ系列で1991年から不定期に放送されていた『はじめてのおつかい』並み,もしくはそれ以下の大失策ばかりの重ね餅,それもカビが生えすぎていて,とうてい食えないシロモノであった。

 ロシアとの北方領土の返還交渉はどうなった? ⇒ アベが絶望的にした。
 中国や北朝鮮との外交に進展があったか? ⇒ アベが破壊的にした。

 さて,2022年の2月24日に始まった「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争(「特別軍事作戦」)は,安倍晋三が政治屋として必然であった「失策・失政の終着点」を,より鮮明にさせた。

 第2次安倍政権が発足したのは2012年12月26日であった。そして,2013年になってからすぐに,アベノミクスは「アホノミクス」だと指弾したのが,浜 矩子(同志社大学)であった。

労働者階級には冷酷だったアホノミクスの正体

 安倍晋三が退陣してからとなって,浜 矩子がアベノミクスを初めからきびしく断罪していた正しさは,再認証されざるをえなくなった。

 安倍晋三が第2次政権以降にたずさわってきた「日本・運営」は,ことごとく失政・失策の連続模様であった。

 ここで,前段に言及した「意見広告」の話題に戻る。

 櫻井よしこによるつぎのいいぶんは,北方領土の問題やアメリカ政府からの兵器・武器の爆買いを,無批判的につまり恣意的,無知丸出し的に評価した口調であった。しかし,この程度の意見(☆以下に引用する)としてしか自説・持論の考えを披露・表現できない人士に,もともと「日本の政治と経済」を語る資格はなかった,と断定してよい。

 ☆「国民にはわかっていました。逝去を悼み,弔事に参加した人びとがどれだけ多かったことか」
 補注)むろん,安倍晋三の死去を悼む人びとが,むろんたくさんいたかもしれない。だが,彼の「国葬」に反対する国民たちは,おおざっぱにいっても,全国民たちの半分以上になっていた。国葬の強行は国論を2分する大のつく愚策であった。この点は,まともに議論しようとする識者であれば,誰も異論はなかった。

 ☆「核保有国の中国,ロシア,北朝鮮に囲まれた我が国は非常時にあります。最新の防衛白書も,いまの安全保障環境を『戦後最大の試練』を形容しました。軽武装の経済大国などという無意味な古証文はまったく通用しません。だからこそ岸田首相は米国との間で,防衛費の相当な増額を公約したのでしょう」
 補注)この「だからこそ岸田首相は米国との間で,防衛費の相当な増額を公約した」という点は,安倍晋三が残したアメリカ政府に対する置き土産(兵器・武器の爆買い=バカ買い⇒ムダ遣い)であって,このように評価するのは,事実の解釈にさいして,そのヤブにらみの度合がひどすぎた。

 ☆「岸田首相は安倍さんの唱えた戦後レジームからの脱却をいまこそ実現し,大きな穴を埋めるべきです。新時代に沿った安倍路線の実現を求めます」
 補注)この最後の段落における修辞は,安倍晋三路線の継承を岸田文雄にも要求しているようだが,この要求された事項はすでに「安倍晋三が実現した」というふうに,前段で書いていたのではなかったか? 岸田には新しく取り組むべき課題は,ないのか?

 要するに,以上のごとき「意見広告」の中身は,ひとつの意見であったにしてもあまりにも一方的であり,極端にかたよっていた。ともかく,読む相手を説得できる材料がわずかも含まれていない。自分の思いをただ必死になって訴えているだけで,相手を納得させうる論理性は欠落しており,基本的に不在。

 いささか失礼ないい方になるが,櫻井よしこ女史はもう,意見広告で論旨不詳の文章を撒き散らすかのようなこの種の言論活動は停止にしたほうがよろしい。つまり,いつまでもグダグダした発言をいいつのっているよりは,即刻,もうすっかり引退して引っこんだほうが好ましい。

 ところで,憲法問題の議論を介してであったが,櫻井よしこはすでに小林 節(慶応義塾大学名誉教授)から,自身の無知な部分を洗い出されるかっこうで,徹底的に批判されてきた。その事実をつぎの※-5からタップリ紹介,説明していく。

 憲法学者小林 節の議論に聞いてみると,この櫻井よしこは,憲法問題についてはまるで “無識者同然であった事実” が剔抉されていた。櫻井は『嘘つき』だとまで,以下の記事の見出しには書かれている。

 どういうことか。ともかくこの議論に聞いていきたい。
 

 ※-5「改憲派のリーダー・櫻井よしこは『言論人の仮面をかぶった嘘つき』だ! 憲法学者・小林 節が対談を捏造されたと告発」『リテラ』2016年5月2日 18:00,https://lite-ra.com/2016/05/post-2206.html

 a) 櫻井よしこといえば,安倍首相と二人三脚で改憲運動を引っ張っている, "極右論壇" のマドンナ。

 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」共同代表,極右改憲団体「民間憲法臨調」代表など,戦前回帰を狙う日本会議ダミー団体のトップを務め,さまざまな場所で憲法改正の必要性を叫びつづけている。

 もっとも,櫻井氏については,作家の百田尚樹センセイや先日逮捕された田母神俊雄サンとは違って,トンデモぶりを指摘する声は少ない。むしろ,多くの人が “上品な保守言論人” のようなイメージを抱いているようだ。
 補注)田母神俊雄逮捕関係の記事はたとえば,つぎを参照されたい。

 ところが,そんな櫻井よしこ氏にこんな辛辣な批判の声が上がっている。

 「櫻井さんに知識人,言論人の資格はありません。言論人の仮面をかぶった嘘つきです」
 
 「櫻井さんの言説は理論ではなく,櫻井さんの好き嫌いを表現した感情論,あるいは櫻井グループの利害を表現した損得論に過ぎないということです。バカバカしい」

 こんな発言をしたのは,憲法学者の小林 節・慶應義塾大学名誉教授だ。もともと,自民党の改憲論議に付き合ってきたタカ派の改憲論者で,近年,安倍政権の立憲主義を無視した暴挙に危機感を表明したことでしられる小林教授だが,

 最近,『月刊日本』(ケイ アンド ケイプレス)2016年4月号のインタビューに登場,櫻井氏を苛烈かつ理路整然と批判しているのである。

 b) 「公開討論を求める! 嘘だらけ・櫻井よしこの憲法論」と題されたこのインタビュー記事で,小林教授はまず,櫻井氏の人物像についてこう語る。

 「もともと民主主義の基本は,正しい情報にもとづいて国民が国家の方向性を判断するということです。しかし私にいわせると,安倍政権は嘘キャンペーンを張って,国民を騙しています。そのことで櫻井さんが大きな役割を果たしている

 「美人で,経歴が良くて,表現力もあるから,一般国民はコロッといってしまう。このままでは安倍政権や櫻井さんの嘘に騙されて,国民が判断を誤りかねない状況です」

 「私の経験からいうと,櫻井さんは覚悟したように嘘を発信する人です」 補注)いまでは世間によくしられている事実であるが,安倍晋三は生前,「#嘘つきは安倍晋三の始まり」とタグを付けられるほどの人物であった。

 すなわち「この人がウソをつくのは仕事みたいなものだ」とまで決めつけられ,そういう人間だと理解されてきたくらいであった。国会のなかでも「答弁として118回もの虚偽を重ねてきた」「世襲3代目の政治屋」であった。
 補注)この 118回の虚偽とは「桜を見る会」に関してついたウソ・いつわりの回数のことであって,別件のいくつかの話題でも豊富に嘘をつき,ばらまいてきた事実は,周知に属する。

 「覚悟したように嘘を発信する人」とはどういうことか。小林教授は,かつて櫻井氏とともに日本青年会議所のパネルディスカッションに登壇したときのエピソードを例にあげる。
 補注)ここでも口を挟んでいっておくが,その「覚悟」の有無にかかわらず「嘘を発信できる人」が,ほかならぬ安倍晋三であった。

 そこで櫻井氏は「日本国憲法には,『権利』は19か所,『自由』は6か所も出てくるのに,『責任』や『義務』は3か所ずつしか出てこない。明らかに権利と義務のバランスが崩れている。そのせいで日本人は個人主義になり,バラバラになってしまった」というような主張をしたという。

 これに対し,小林教授はその場でこう反論した。

 「櫻井さんの主張は間違っています。法律には総論と各論があり,総論はすべての各論に適用されます。日本国憲法では,『公共の福祉』を定めた憲法12条と13条が総論として,ちゃんと各条が認めた個々の人権すべてに制限をくわえています」

 くわえて小林教授は,そもそも憲法は国民の権利を定め国家に義務を課すものだということ,いわゆる国民の三大義務の「納税」「勤労」「教育」は国家存続に必要不可可決がゆえに例外的なものであることを説明。

 つまり,櫻井氏がいう “「義務」に比べて「権利」が多すぎる” という主張をはっきりと退けたのだ。

 小林教授が語っているのは,一般的な教科書にも必らず登場する “憲法の基本中の基本” 。

 櫻井氏がこんなこともしらなかったというだけでも呆れる話だが,小林教授がこの憲法の基本を指摘すると,櫻井氏は「顔面蒼白になって,それから目線が合わなくなり,その日は挨拶もせずに帰っていった」という。

 要するにぐうの音も出ずに遁走したらしいのだ。

 だが,櫻井氏は,小林教授から誤りを指摘されて以降も,こうした嘘の憲法論を講演会などで繰り返し述べている。

 小林教授が「私に論破されてギャフンと尻尾を巻いて逃げておきながら,相変わらず確信犯的に同じ誤った情報,つまり嘘を垂れ流しつづけるのは,無責任かつ不誠実きわまりない」と,強い言葉で批判するのももっともだろう。

 c) しかも,櫻井氏の不誠実さは,なにも憲法に関する知見のなさだけに限らない。小林 節教授は,前述の『月刊日本』2016年4月号のインタビューでかつて櫻井陣営から受けた卑劣な “発言捏造事件” を暴露している。

 以前,小林教授が『週刊新潮』(新潮社)で,外国人参政権について櫻井氏からインタビューを受けるという企画を受けたときのこと。

 だが,取材当日,櫻井氏本人は登場せず,中年男性のアシスタントが聞き手としてやってきたという。そこで,小林氏は櫻井側からこんな “提案” を受けたという。

 「そのやりとりのなかで,向こうが『櫻井は〈納税は公共サービスの対価だ〉といっている。これを小林先生のセリフにしてほしい。バシッと決まりますから』といってきたから,私は『その主張は間違っています。憲法学者として嘘をいうことはできません』と断りました」

 要は,ただでさえ別人によるインタビューであることにくわえ,なんと櫻井氏側は,完全なる “ヤラセ” を仕かけていたのだ。

 小林教授がいったことにして,自説を広めようとする詐欺的行為も下劣きわまりないが,しかも,小林教授が誤りを指摘したにもかかわらず,あとで掲載されたものをみると「堂々と『納税は道路や水道や教育や治安等の行政サービスの対価である』と書いてあ」ったという。

 【参考画像】

櫻井よしこ・風刺画

 d) しかも,どうやらこうした手口は,櫻井氏の得意技であるらしい。実は櫻井氏は10年ほど前にも,勝手に発言を捏造したことを告発されている。

 月刊誌『創』(創出版)1997年4月号で,まだ国会議員になる前の福島瑞穂氏が,従軍慰安婦の議論に関して櫻井氏とこんなやりとりがあったことを明かしているのだ。

 1996年12月上旬ころ,桜井さんから電話がかかってきた。「福島さんに対して実に申しわけないことをしました。講演をしたときに,うっかり口がすべって『従軍慰安婦の問題について福島さんももう少し勉強をしたらどうですか』といってしまったのです。本当に申しわけありませんでした」といった内容の謝罪の電話であった。12月29日ごろ,講演録の冊子をみて心底驚いた。

 「私は福島さんを多少しっているものですから,あなたすごく無責任なことをしているんではないですか,というふうにいいました。せめてこの本を読み,せめて秦 郁彦さんの研究なさった本を読み,済州新聞を読み,そして秦 郁彦さんなどの歴史研究家の従軍慰安婦の資料を読んでからお決めになったらどうだろう」

 「吉田清治さんの本を証拠として使うことじたいがおかしいのではないかとうったら,ウウンまあ,ちょっといろいろ勉強してみるけど,というふうにおっしゃってましたけれども......」となっているのである。

 「講演や話し言葉のなかで,うっかり口がすべったり,不確かなことをしゃべってしまうことはもちろんある。しかし,この講演で話されている私との会話は,まったく存在しない架空の虚偽のものである」

 要するに,櫻井氏は論敵である福島氏との虚偽の会話をでっちあげ,さも自分がいい負かしたかのように語っていたのである。

 e) 櫻井氏の嘘が露呈したケースはほかにもある。たとえば,2006年,日経新聞が元宮内庁長官・富田朝彦が遺した1988年4月28日のメモ(いわゆる富田メモ)から,昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に強い不快感をもって参拝を拒否していたことをスクープしたさいは,それを否定しようと,資料を完全に読み違えて「日経は世紀の誤報だ」とがなりたてていた。

 また,2014年には,女系天皇を否定し,旧宮家の復活を主張するために,『文藝春秋』のインタビューで「かつては,必要な血筋の方を天皇に据えるべく,六百年を遡ったこともある」とまるっきりのデタラメを口にし,

 小林よしのり氏から,「とにかく,信じられない間違いだらけ!! こんなバカな間違いを平気ですることで,明白です。櫻井よしこは,皇統のことなんか,いっさい真面目に考えてもいないのです!!!」と一刀両断されている。

 まさに,小林教授のいうように,櫻井氏は自分の主張を貫き通すために,平気で「嘘を発信」しまくってきたのだ。

 こんな人物をアイドル〔前述の表現だと「マドンナ」〕のように祭り上げる右派論壇の頽落たるや,もはやため息もでないが,しかし問題にすべきは,安倍首相が櫻井氏を重用して,いま,積極的に “政権別働隊” として改憲のための世論操作を仕かけていることだろう。

 「大きな嘘でもいくだとなく繰り返せば,最終的に人びとはその嘘を信じる」とはナチスドイツの宣伝省大臣だったゲッベルスの言葉だが,やはり,安倍政権はこのナチの手法に倣っているらしい。 “エセ言論人” と安倍政権の策謀に,われわれは決して騙されてはならない。(『リテラ』引用終わり)

 櫻井よしこと生前の安倍晋三との仲良しぶりとみたら,まさしくツーカー的な間柄にあったらしく,しかも,この2人に共通するデタラメ・ザンマイぶりは,扇動家と政治屋という立場の違いを乗り越えて,大いに共鳴しうる痴的基盤を有していた。
 

 ※-6「小林 節さんが語る『櫻井よしこの憲法論のお粗末さ』」『さぶろうの WORDS OF LOVE』2019-03-05 11:00:00,https://ameblo.jp/lovemedo36/entry-12444531619.html

 a) 櫻井よしこさんの憲法理解は,全然間違っている
 東京JCのシンポジウムでは,僕と櫻井さんやJCの役員が並んでいた。JC側が櫻井さんが年上だから,まず櫻井さんに話を振った。すると,櫻井さんが「皆さん,日本国憲法は困ったものですよ」と始めた。
 補注)「東京JC(Junior Chamber)」とは,公益社団法人東京青年会議所の略称。

 「いまの憲法は国民の権利ばかりを保障していて,権利は二十幾つもあって,義務はたったの三つと少ない。おかしいじゃないですか。権利と義務は対応してバランスが取れないとおかしい。こんな個人主義憲法がこの国をおかしくしたんです」

 僕は困ったなあと思った。保守派の論客同士だからかばってあげようと思ったけれど,仕方がない。僕は専門家だから下手にかばったら,こちらがアウトです。

 権利と義務はバランスを取って対応すべきだという意見には,二つの間違いがあります。

 一つは,憲法の本質がわかっていないということです。憲法というのは,そもそも国家権力から国民を守るという前提があるから,国民に人権を与えて,国家権力はそれを守る義務があるわけです。
 
 万一,権力を濫用して国家権力がフライングしてきたときは,国民が人権侵害だとして押し返せるように,国民の側に,身を守るための人権を保障した。これが判っていない。

 憲法は国民に権利を保障するものであって,国民が国家に対して人権をもっている。人権をもつ代価として義務を払わなければならないという関係ではない。

 もう一つは,憲法の権利にはすべて義務がセットでついているということです。憲法12条と13条をみればわかるように,権利には「濫用しない義務」「公共の福祉に従う義務」が付いています。

 公共の福祉というのはわれわれが共存共栄するための安全な社会や環境をいう。分かりやすくいえば,いくら運転することが幸福追求権の行使だとしても,暴走族になって交通の安全を壊してはいけないというような話です。

 だから,いかなる人権も公共の福祉には従う義務がある。いかなる人権にも濫用してはいけない義務が付いている。そういう意味では,すべての人権に義務は対応している。櫻井さんのいうことは全然間違っている,といっちゃったわけです。

 そうしたら,櫻井よしこさんは顔から血の気が引いちゃって,挨拶もなしに,僕と目を合わさないで出ていかれました(以上,小林 節・佐高 信『安倍「壊憲」を撃つ』平凡社新書より)。
 補注)以上は前稿『リテラ』における内容と重複するが,櫻井よしこに関してだいじな理解点であるゆえ,だいぶくどくなっているけれども,あえて参照を重ねている。以下も同じである。

 b) 小林 節さんに徹底的に批判され,顔面蒼白となった櫻井よしこさんですが,その後も持論を変えることなく,同様の発言を繰り返しているようです。

 櫻井さんにとって重要なのは,事の理非ではなく,個人主義を大事にする日本国憲法を攻撃することだからです。われわれ,国民はもともと人権をもっていて,それを尊重,擁護する義務は国側にある。

 しかし彼ら国家主義者の本音はこうです。「お前らには生まれつきの権利なんかないのだ。国家様に尽くした奴にだけ権利を渡してやっているんだ,勘違いするな」

 小林 節さんは別の著書のなかで,日本国憲法を擁護してつぎのように述べています(小林 節『タカ派改憲論者はなぜ自説を変えたのか』皓星社から)。

  ▲-1 天皇主権よりも国民主権,つまり1人の独裁者の命に全国民を従わせる統治システムより,国の命運について結局はすべての負担を分担せざるをえない全国民で権力を分有するシステムのほうが良いことも,

  ▲-2 軍国主義よりも平和主義,つまり,他国との交渉にさいして軍事力を前面に押し立てたりしない姿勢のほうが良いことも,

  ▲-3 臣民の権利などと呼んで「国家権力が許すかぎりで国民は自由である」とするよりも,

  ▲-4 「人間は,単に人間であるというそれだけの理由で,先天的に,国家による不当な拘束から自由である」という意味での人権が保障されるほうが,各人の幸福追求が確実であることも,

〔以上はすべて〕自明である。だから,日本国憲法はその内容においても正当性がある。

 小林 節さんの意見に私(被引用者のブログ主)は同意します。個人の幸福追求権が国家によって制限される社会に私は住みたいとは思わない。他者の幸福追求権を侵害しないかぎりにおいて,私は私の幸福を自由に追求したい。(引用終わり)

 ここまで引用・紹介を重ねてくると,櫻井よしこ女史がどのくらい「イカサマ的になりはてたインテリ女史」であったか,おまけに,その備えている痴性とやらも実にいい加減であって,民主主義精神とは縁遠い地点にとどまっていた人間である事実も理解できる。

 前段に挙げてみた,櫻井よしこ『櫻井よしこが取材する』ダイヤモンド社,1994年は,世の中のいろいろな問題に触れた小文を集録した本であった。

 前段に画像資料もって紹介してみた「同書の27-29頁」は,櫻井がかつてはまだまともなジャーナリスト精神を保持していた事実を教えていた。だが,その後における変身ぶりには「悪い意味」で目を見張るものがあった。

 しかし彼女が,ジャーナリストとして文章を書きつづけていき,そして歳月が流れていくうちに,いつの間にか「保守というよりはタダの極右・反動オバサン」になりはてた事実を証してきた「彼女の言説」だけが,前面に出て目立つようになった。
 

 ※-7「〈ここがおかしい 小林 節が斬る!〉櫻井よしこ氏の筋違いな改憲論…憲法知識が間違っている」『日刊ゲンダイ』2020/12/27 06:00,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/283229  の追撃・論破

 報道によれば,〔2020年〕12月19日,安倍晋三前首相の選挙区・山口県下関市内で櫻井よしこ氏の講演会が開かれた。

 講演のなかで,櫻井氏は,軍事的に尖閣諸島を取りに来る準備をしている中国の膨張主義に対して,「日本は主権国家として国土を守らなければならない」と指摘した。そのうえで,

  ▲-1  『国土・国民を守るために戦う権利を認めない』という縛りのある現行憲法では

  ▲-2  『日本の行動は大幅に制約される』

  ▲-3 このような憲法は改正し,『国家の意志を示す必要がある』

と強調したとのことである。

 しかし,この主張は,前提となる憲法知識が間違っている。政府自民党の公式な憲法9条の解釈はつぎのとおりである。

 ▲-1 9条1項は「国際紛争を解決する手段としての軍事行動」を禁じている。これは,国際法の常識として,「侵略戦争だけの禁止」である。だから,わが国も国際法上の自然権としての『自衛権』は保有している。

 ▲-2 ただし,9条2項で戦力の保持と交戦権の行使(つまり国際法上の戦争の手段)が禁じられており,自衛のためであれ国際法上の「戦争」はできない。しかし,自衛(警察活動)の手段としての「必要・最小限」(相対的概念)の自衛隊は保持できる。

 ▲-3 だから政府自民党は,「自衛隊は合憲であるという確信をもって」それを法律と予算で設立し保持してきている。その任務は「わが国(つまり国土と国民)の平和と独立を守ること」であると自衛隊法1条に明記されている。

 このように,現行憲法のもとで,わが国は,日本の経済力・技術力・人的能力にみあった,世界有数の自衛力を現に有しており,必要に応じてそれを行使すると明らかにしてきた。そして,そのような力と意思の存在がいま,わが国の平和と独立を現に守っている。

  だから,尖閣諸島の領有権の危機が問題であるというのなら,不正確な話で改憲論を煽るより,防衛予算の合理的な使い方を促し,陸海空自衛隊の装備と配置を尖閣防衛により有効なように変更することを提案するのが筋であろう。

 さきに改憲ありきで立論したような,筋違いで無責任な議論はすべきではない。(引用終わり)

 このように小林 節は,櫻井よしこの日本国憲法論の無知さ加減を,繰り返しいさめていた。だが,よしこのほうはとみれば,こうした警告をカエルのつらになんとかの受け止め方でしか,対応する気がなかった。

 ということであったからには,彼女の立ち位置の場合だと,無知と無謀は相性がかなりいいらしい。

 最後としてあらためて,日本の内政も外交もめちゃくちゃにした安倍晋三のことを,あらためて思いだしおきたい。この人の国葬が202年10月27日に実施された。この国葬を強行した岸田文雄の采配に,根本的な疑念を抱くほかなかった国民が大勢いたことじたいが,大問題であった。
 

 ※-8「〈ここがおかしい 小林節が斬る!〉安倍前首相が櫻井よしこ氏との対談で語った的外れな憲法論」『日刊ゲンダイ』2020/12/29 06:00,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/283273

 報道によれば,安倍晋三前首相は最近,櫻井よしこ氏との対談で,「憲法」についてつぎのような見解を語ったとのことである。いわく,

  1 「(憲法が)宗教上の法典のような存在となり,指一本触れてはいけないという認識がある」

  2 「  それを変えていく。私たちの憲法だから私たちが書き上げていくのは当然だ(中略)」

  3 「自衛隊が,士気高く,命を懸けてやっていくために,憲法の中に自衛隊を明記する必要がある」

 しかし,これらの発言はほとんど的外れである。

 まず,1 についていうが,「法は,主権者国民大衆の最高意思として権力担当者を縛る規範である。だから,いまでももっとも影響力のある政治権力者の1人として,安倍代議士は迂闊に憲法に「指を触れて」(違反して)はいけない立場にある(憲法99条「権力者の憲法尊重擁護義務」)ことを忘れてはいけない」。

 つぎに,2 についいうと,「憲法に規律されるべき立場の者」が軽々しく「それ(憲法の不可侵性)を変えていく」などといい放っていいものではない。安倍代議士は,まずは「憲法は順守する。そのうえで不都合があれば,責任をもって,主権者国民に改憲を提案したい」と語るべき立場である。

   しかも,3 についてとなれば,改憲を提案する理由が「自衛隊が,士気高く,命を懸けてやっていくために憲法のなかに自衛隊を明記する必要がある」のだといまだに繰り返している姿には呆れてしまう。

 現行憲法のなかに直接その名称が書かれている国家機関は国会,内閣,最高裁判所,会計検査院,天皇だけであるが,そこに「自衛隊」をくわえようという知性には疑問を禁じえない。

 自衛隊を統括する防衛省や国家財政を司る財務省も一行政機関としてそれぞれの名称は法律で定められており,自衛隊もそれで自然である。

 さらに,政府自民党は一貫して,「憲法9条は,国際法の用語例に従って『国際紛争を解決する手段としての戦争』つまり『侵略戦争』のみを禁じており,国家の自然権である『自衛権』は当然に留保されている」として,その自衛権を担う自衛隊を合憲としてきた。自衛隊の正当性の根拠としてはそれで十分であろう。

 以上のように,小林 節にもっぱら頼ってみた憲法論関係の議論=記述は,櫻井よしこや安倍晋三などの識者や政治屋の憲法論が,いかに無理ないしは無知からだけする,しかも無手勝流の法律論に流れていたかという点を批判していた。

 『知は力だ』といわれるが,「無知はなんであるのか」と問われたとき,一言で表現できるのか?

 安倍晋三を国葬で送った国家側の無知についてだけでも,まだ議論をしてみる余地が残されたままである。とりわけ岸田文雄という「世襲3代目の政治屋」の采配ぶりは,自分の立場・自身の意見というものがあるのか否かを疑わせるものが多い。

 最後につぎの※-9を紹介して,本日も長くなったこの記述を終わりにしたい。

 「戦後レジームからの脱却」とは,この※-8で批判された「戦時体制期
の問題」に戻ることを,確かに意味していたはずである。

 しかし,いまの日本はその戦時体制に「戻ることなどなし」に,その戦時体制もどきの時代を,これまた「確かに作ってきた」と観察できる。

 その点は,安倍晋三が成就しえたところであったけれども,もはや取り返しがつかなくなっていた《負の成果》を意味した。アベの為政は,この国の政治品質をいちじるしく劣化させ弱体化した。
 

 ※-9「思いやる心が惨禍を防ぐ 『できるかな』高見のっぽさんの言葉 大人が子をだます戦争の愚」『毎日新聞』2022年8月13日夕刊,https://mainichi.jp/articles/20220813/dde/018/200/007000c から中ほど3分の1ほど引用する

 「B29から『ヒュー』と焼夷弾が落ちてきて,近くにあった二つの工場が丸焼けになったんです。父はその一つの工場長でした。翌朝,無事に帰ってきて『たった一度で見事なもんだ』と話すんです。それで僕は(もうアメリカには勝てないと思って)『あーあ』って落胆したの」

 小学校では軍国主義をたたきこまれた。教室には大東亜共栄圏の地図があり,「尽忠報国」「撃ちてし止やまむ」などの標語も目についた。だが,敗戦を境にして変化した大人の態度にあきれたという。

 「敗戦直後,教頭が『民主主義っていいもんだな』なんていうんです。それまでは『死して護国の盾となれ』と教えていたのが,恥ずかしげもなくよく口にできるなって」

 ノッポ少年はその日から,教頭や校長を「奴(やつ)」と呼び反発した。「戦争で一番忘れてはいけないことはある意味,(子どもが)大人にだまされたってことですよ」

 子どもが大人にだまされる。教育番組,絵本や舞台など,子どもを「小さい人」と呼び,つねに尊重してきた原点は,自身の経験にあるのかもしれない。

 近年,政治家などから「愛国心」や「道徳教育」といった言葉を頻繁に耳にするようになり,憤りを感じてきたという。「愛する国のために,どうすればいいかを勉強するならわかるんです。でも愛する国のために犠牲になることを教えるのが道徳だって? そうだったら,冗談じゃない」と言葉を荒らげる。

 2015年には,約40人の識者が寄稿した「私の『戦後70年談話』」(岩波書店編集部編)に,戦争体験を初めてつづった。前年に安倍晋三政権が,集団的自衛権の一部行使容認の閣議決定をしていた。

 寄稿で初めて打ち明けたのは,戦況悪化の事実を隠し,国民にウソをついて戦争に加担させた時代とどこか重なると感じたから。こんな文言を寄せた。

 「この頃さあ,あの時と同じ様なキナ臭いこといい出す変なのが多いんだぜ」(引用終わり)

 2022年の8月段階になると,より明快になった「日本の政治」をめぐる自民党的(かつ公明党的)に不審な事実があった。それは,「統一教会・世界平和統一家庭連合」の悪影響がこの国の深部にまで浸透していた〈姿〉を介してとなっていたが,いまごろになってようやく,その事実の透視が可能になった。

 以上のように議論してきた背景の向こう側に隠れていて全然可視的でなかったものの,自民党政治のあり方に少なからぬ影響を与えてきた旧統一教会の宗教的な勢力が,日本の政治のなかに深刻なる劣化・腐敗を,いいかえれば,カルト化をもたらしてきた。

 その事実が,安倍晋三が暗殺された事件を契機にあらためて一気に明らかになった点は,ある意味,皮肉な経過であった。なぜなら,安倍自身こそがその統一教会という「トロイの木馬」を自民党本部に招き入れた当人であったからである。

 安倍晋三元首相が暗殺されることがなかったとすれば,この国は2022年7月以前の状況のままにとどまるかたちで,事後において「統一教会・世界平和統一家庭連合」と自民党政権との腐れ縁が表面に出て問題にされることもないまま,つまり日本社会のなかにもたれしている反社会的な機能がまともに認知されにくいままで,さらに潜伏しつつこの国を悪い態勢のほうに引きずっていったに違いない。

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