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新型コロナウイルス感染症が収束したとみなされてから1年と7ヶ月が経った現在,いまとなっては観光立国にしか未来に生きのびていくには手がないこの日本になったかと呆然かつ漫然と考える
◆ 論題「新型コロナウイルス感染症の歴史的な記憶」から思い起して,若干考えてみたい2024年12月時点のこの国の姿 ◆
この記述そのものが最初になされたのは,2021年3月下旬のころであった。本日(2024年12月21日)はこの話題から始める記述となる。
2020年に入ってからであったが,新型コロナウイルス感染症が1月段階からすでに日本国内で大問題になっていた。2月段階になると,日本社会のなかに大恐怖をもたらす感染症だという特性が庶民側にも伝わり,当時に発生した直後からすぐに大流行とみなされるべき医療事態になっていた。その後において政治,経済,社会,文化などの全領域に対してこの感染症が,多大な悪影響をもたらす経過となった。
2020年1月20日の出来事であった。横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客のなかから,1月25日に香港で下船した80代男性が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたことが,2月1日時点で確認された。
その事実が判明したあと,日本国内ではこの感染症問題が発生したために国家全体の諸活動が突如,急ブレーキを踏んで制動をかけたごとき事態を迎えた。事後,ダイヤモンド・プリンセス号(などからの)における感染症の急速な拡大に対する検疫態勢は,いわばドタバタ劇を思わせるある種の狂態を感じさせるほどであった。
補注) 以上,新型コロナウイルス感染症が日本に侵入してきたときの検疫初動態勢については,つぎの説明を参照されたい。
つぎの統計図表がみやすく説明してくれるが,2021年1月時点までのそのコロナ感染症はつぎのような患者数で推移してきた。だが,このころはまだ「本当の大流行」がまさに本格的に発生する以前の段階であった。その後におけるその患者数の推移を記録したグラフも,次段に続けて並べておく。
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最初からほぼ1年間における周波的な患者数統計
これら前後に出してみた統計図表に描かれている新型コロナウイルス感染症の流行循環の軌跡は,この過程が始まってからひとまず2020年5月25日になった時点で,当時の安倍晋三首相が「この流行が収束した」と宣告したものの,結果的にはその後にまだまだ持続・拡大していった。
コロナ感染症の流行(大流行)が当面,いつまでも周期的に連続していった経過については,つぎの図表をみれば一目瞭然である。
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このあとでもなお「大流行」がつづいていった
その「大流行」の経過については,以下の図表が比較するのに役立つ。こちらでは,2022年10月まで作図された数値(統計)の棒グラフが記入されている。これをみると,とくに2020年中に記入されている棒グラフそのものにかぎっては,ほとんどその「盛り上がり」分がみえないくらい,数値じたいが絶対的に少なかった事実がみてとれる。
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さて,新型コロナウイルスの出現から3年半近が経った2023年5月8日,日本ではようやく,新型コロナは感染症法上,毎年流行するインフルエンザと同じ扱いになった。
以上のごとき,新型コロナウイルス感染症事情の経過を踏まえて,つぎに『日本経済新聞』が2024年12月18日に報じた外国人観光客統計をみたい。2020年冒頭,日本にも登場した新型ウイルス感染症の悪影響は,この報道に添えられた,以下の図表からも非常によく伝わってくるはずである。まったく,みてのとおり。
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この新型コロナウイルス感染症の襲来がそれに追い討ちをかけた
ここで,上に図表を紹介した日経の「2024年の訪日客,過去最高に 1から11月累計で2019年通年超す」『日本経済新聞』2024年12月18日という記事は,基調としては依然,低迷状態を余儀なくされつづけているこの国にあっては,
唯一といっていいほど殷賑を極めている外国人観光客が,それこそ当該の観光地にとっては千客万来であると同時に,そしてまた,その地元住民たちにとってみれば,迷惑千万(観光公害)でもある日本国内への「ツーリズム」ブーム,およびそれに伴う「インバウンド景気」の好調ぶりについては,前段のごとき図表を説明用に添えたうえで,つぎのように報道していた。
なお,以下の引用は,記事全文の引用ではなく,任意に3カ所の段落から抽出してみた。
イ) 日本政府観光局(JNTO)が〔2024年12月〕18日発表した11月の訪日客数は,前年同月比30.6%増の318万7000人だった。1~11月の累計でみると3337万9900人で,過去最高だった2019年の年間合計3188万人を超え,記録を更新した。紅葉を見に来る観光客などが増えた。
ロ) 11月は各国・地域の祝日や学校の休暇が少ないため,単月で過去最高だった10月の331万2000人よりは減少した。国・地域別で人数をみると韓国が最多で前年同月比15.3%増の74万9500人だった。大きく伸びたのが中国で,2.1倍増の54万6300人だった。台湾が21.0%増,米国が34.0%増,香港が13.3%増だった。
ハ) 訪日客の消費額は2024年1~9月に5兆8582億円と,すでに2023年通年の規模を超えた。中国や台湾,韓国といったアジアの消費が多い。直近の7~9月の1人当たりの旅行支出は22万3000円だった。円安の追い風もあり,2019年の同時期と比べると4割増加した。(引用終わり)
日本という国家は,「国際経済」の舞台全体との「相対(あいたい)での実質的な意味あい」においてとなると,とりわけ,自国民(庶民・一般大衆)の生活水準を高めることができずに,現状のとおりに今後も続いていかざるをえないとなれば,これまですでに反復してきた「失われた10年劇」のその第4周回目を,またもやただ漫然と進行させていくしか「能のない先進的なビンボウ国」になりさがるほかあるまい。
つぎに引用する『東京新聞』2024年2月15日の記事のなかにそえられた図表,「日本とドイツの名目GDP推移」を観て,われわれはいったい,なにを,どのように感じるか? この図表の動きをよくみつめてみたい。アベノミクスの下手クソカゲンは,まさしく「国家経済政策の罪業」に相当する大失策(大失政)を,われわれに押しつけた。ただし本人は現在,この地球上にはいない。
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名目GDPはいったん上がりかけたけれども
元の木阿弥になっていた
『読売新聞』2024年11月20日の記事(下にそののリンク先住所を指示),「エンゲル係数『30%』目前,食費高騰が家計にずしり… 日本人の豊かさは後退しているのか」は,すでにこの国は「衰退途上国」だと呼称されてもいるように,前段で話題にした訪日していくる外国人観光客にとってみれば,なんでもが安い国だ,観光にいくにはいい国だ,観光名所もいろいろある,という評判が定着してきた事実とは裏腹に,庶民・一般大衆の日常生活は困窮化を深めるばかりである実情に触れていた。
この記事は,最近は食料費が家計の消費支出に占める割合,いわゆる「エンゲル係数」の上昇が目立ってきており,2024年7~9月期は29%超と節目の3割に迫りつつあり,通年でも約40年ぶりの高水準だと報道している。
道理でシングルマザー世帯においては,その3分の1が3度の食事をろくに賄えない,とくに子どもだけには少しでも食べさせようと,母親の彼女ら自身はほとんど食事を満足に摂れていない,そのような生活実態に追いこまれている。
また,年金がわずかな額でしかないとくに男性の高齢者で,しかも1人住まいの者たちのなかには,スーパーで食品関係の万引きを常習的に犯さざるをえない事例まで発覚している昨今である。
森嶋道夫が『なぜ日本は没落するか』という本を岩波書店から1999年に出版していたが,そろそろその年から四半世紀の時間が終えるころになっても依然,この国は「先進国落第」であり,「衰退途上国(後進国入り)としてならば合格」という体たらくである。
【参考記事】
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