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在特会はボクらの仲間-安倍晋三政権と排外主義団体の親和性-

 ※-1 在特会の「暴虐な差別観の無根拠性」がいつまでも続くこの日本社会のつたなさ,自己修正がよく効かない日本政治は杉田水脈がその好例

 この記述は2014年10月8日に一度公表されていたが,本日2023年11月14日に復活させ再掲するにあたり,事前に,関連するつぎの記事を紹介しておきたい。

 「差別を正当化する妄想の寄せ集め-『在日特権』というデマ(安田浩一さん寄稿)」『Dialog for People』2023年9月23日https://d4p.world/news/23066/ という記述が,つぎのように在特会をボロクソに批判していた。以下は,画像資料2点のあとに記述がつづく。

 なお,安田浩一(やすだ・こういち, 1964年,静岡県生まれ)は,『週刊宝石』『サンデー毎日』記者を経て2001年からフリーのジャーナリストである。事件,労働問題などを中心に取材・執筆活動を続けてきた。『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』講談社,2012年で,第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した。

人物紹介-つぎの画像資料も参照
「イオ」とは韓国語の「이어」(母音と子音)を離した表記

 安田浩一のこの記述はけっこう長い文章なので,文意を崩すことにならない程度に削って印象する。本日の記述全体に対して前提をなす指摘・批判となる内容である。上記のように,2023年9月23日に公表されていた文章である。

 もちろん,故・安倍晋三君も,こういった「在日特権」差別的な信条を心底にかかえており,大いに共鳴する基盤を有していた事実・問題にも通底する説明であった。

 a) もはや都市伝説どころか,「神話」の域にまで達しているかと思いきや,一部ではまだ現実社会の “仕組み” として認識されていることに驚いた。いわゆる「在日特権」のことである。在日コリアンが日本社会において優越的な権利を有しているというトンデモ説だ。

  -中略-(以後も省略した段落,文言,たびたびあり)

 まるで実体がありません,単なるデマです,ネトウヨのホラ話です,まぼろしにすぎません。これまで何百回となく,「在日特権」を口にする人びとに向けて,そう述べてきた。

 バカバカしいと思いながらも,役所や政治家に「在日特権」の有無を問うてもきた。私が2012年に刊行した『ネットと愛国』(講談社)でも,あえて1章分を「『在日コリアン=特権階級』は本当か」といった特権説の検証に費やし,そのデタラメさを指摘した。

 差別を正当化させるために,そして在日コリアンを貶めるために,ありったけの妄想を寄せ集めたヘイトスピーチそのものと断言してもよい。特定の人種や民族が優越的な権利を有し,マジョリティに不利益を強いているといった考え方は,洋の東西を問わず人種・民族への憎悪を煽るために利用されてきた。

 紛うことなき差別行為だ。社会から多様性を奪い,人間から尊厳を奪うことなど,許されるわけがない。だがネット上では,あるいは現実社会においても,だれがどのように否定しようとも,「在日特権」の亡霊は相も変わらず醜悪な姿をさらして徘徊している。

 b)「在日特権」など存在しない。ただの妄想に過ぎない。浮かび上がってくるのは差別の歴史。それにしてもヘイトスピーカーたちが口にする「在日特権」とは具体的になにを指すのか。

 実は,これがまた適当すぎて整理に困るのだ。『「在日特権」の虚構』(河出書房新社)の著者,フリー編集者の野間易通も同書にて,つぎのように述べている。

 「『在日特権を許さない』と宣言している市民団体のいう在日特権と,過去に別の誰かが論じた「在日特権」,あるいは街頭デモのビラに載っている「在日特権」のそれぞれが一致せず,概念としてまったく確立していない(中略)まるで鵺(ヌエ)のようなものである」と。

 存在しないものなのだから,まさに空想上の怪物と同様,いいかげんな思いつきで仕上がった「虚構」であることは当然だ。要は野間が指摘するとおり,「すべてが根拠のまったくない偽情報」なのである。

 たとえば,私の手元には,2013年に新大久保(東京都新宿区)で行われたヘイトデモのさい,主催者が沿道でバラまいたチラシが残っている。

 「日本人差別をなくそう」と題されたチラシには,「在日特権」とされるものが記述されていた。それによると

  ・働かず年600万円貰って遊んで暮らす優雅な生活
  ・犯罪犯しても実名出ません
  ・税金は納めません
  ・相続税も払いません
  ・医療,水道,色々無料
  ・住宅費5万円程なら全額支給

 おそらくネット上のデマをかき集め,なにひとつ検証,確認することなく列記したものだろう。すべてがデタラメだ。

 そもそも「年600万円貰って遊んで暮らし」ながら税金,家賃,公共料金をも免除されている人々が,どこに存在するというのか。

 国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると,日本における給与所得者の1人当たりの平均年収は443万円である。これを大きく上回る金額が無条件に支給されているエスニックグループがあるとすれば,とうの昔に政治問題化していたはずだ。

 たとえば朝鮮学校に対する補助金カット,教育無償化からの排除など,マイノリティに対してイジメともいうべき政策を強行しているのが,いまの行政,国なのである。にもかかわらず,上記のような「特権」が政治問題化しないのは,それがヨタ話の類であるからにほかならない。存在しないものを問題にすることなどできないのだ。

 c) 一部では「特権」の象徴のように捉えられてもいる「生活保護の優先利用」といった言説もそうだ。

 レイシスト集団として一時期,全国で差別デモを繰り返していた「在特会(在日特権を許さない市民の会)」は,かつて在日コリアンの「生活保護優遇廃止」を運動の最大目標としてかかげていた。

「日本人は生活保護の申請からも排除されているのに,在日(コリアン)は簡単に生活保護を利用できている」。そうした主張を繰り返しながら,各地の役所に恫喝まがいの “要請行動” をおこなうことも珍しくなかった。

 生活保護行政に問題があるのは事実だ。生活困窮者の保護申請を窓口の段階で拒む役所の「水際作戦」をはじめ,理不尽な保護打ち切りなど,行政による経済弱者切り捨ては,私だって絶対に許容できない。だからこそ多くの市民団体がこの問題に取り組み,当事者とともに闘っているのだ。

 (中略)
 
 〔だが〕東京都内のあるケースワーカーはつぎのように答えた。

 「生保利用にあたって重視するのは,あくまでも申請基準を満たしているかどうかであり,在日(コリアン)だからと基準を曲げることなど,過去に遡っても聞いたことがない」

 しかも外国籍住民の場合は,たとえば申請が認められなかったさい,日本国籍者であれば不服申し立てをおこなうことで生保利用が許可される場合もあるが,その権利すらない。外国籍住民の不服申し立ては却下するよう,厚労省から通達が出ているのだ。「優先利用」どころか,大きな制限がくわえられている。

 d)「生活保護利用者の圧倒的多数は高齢者と障がい者,そして母子家庭です。これは外国籍住民であっても同じこと。あえて日本人との違いをあげてみれば,助けてくれるべき親族や知人が身近にいるかどうか,ということになります。

 外国籍住民の場合,全体の数そのものが少ないわけですから,援助してくれる親族,知人も限られている。とくに単身高齢者の場合,就職に恵まれなかったり,無年金であったり,条件的に悪い人が多いのは事実。だからこそ地域によっては,日本国籍者よりも利用率が高いことがあったとしても,それはけっして『優先』を意味するわけではありません」

 それこそが,外国籍住民,とりわけ在日コリアンの置かれてきた状況を示すものだ。

 経済的,社会的基盤が脆弱であるうえ,特権どころか差別や偏見によって就職の機会も奪われ,厳しい生活を余儀なくされた在日は少なくない。なかでも高齢者は,国民年金制度の創設時には国籍条項によって加入資格すらえることができなかった。生活保護に頼らざるをえない困窮状態にある人が高齢世帯で多いのは当然だ。

 いったい,これのどこが「特権」だというのか。取材して浮かび上がってくるのは,長きにわたって社会福祉制度から排除されていたという,差別の歴史でしかない。

 e) 暴走するデマとヘイトクライム

 ちなみに「在日特権」なる差別的文言が定着したのは,2006年に刊行された『別冊宝島 嫌韓流の真実! ザ・在日特権』(宝島社)がきっかけだといわれる。

 著者の1人である野村旗守(故人)は,公安方面に強いライターで,私も週刊誌記者時代に交流があった。だが,私が同書を批判したことで険悪な関係となり,一時期は私を「訴える」と激高して電話をかけてきたこともあった。

 同書が在日コリアンへの偏見を煽り,差別を流布されることに一役買ったことは事実だ。その罪は重たい。しかし,いまあらためて同書に目を通してみると,多くのデマを事例に挙げながら,そのほとんどが「実はそれほどでもなかった」という,締まりのない結論となっている。

 野村は私が書いた『ネットと愛国』でも取材に応じ,「戦後の一時期,ある種の優遇政策があった」としながらも,つぎのように答えている。「いま現在,在日にどれだけの特権が残っているというのか。そんなものほとんど消滅してますよ」

 補注)ここで,敗「戦後の一時期,ある種の優遇政策があった」という指摘は事実である。だが,その歴史的な背景には旧大日本帝国時代の負の遺産があった。

 その日帝政府(新憲法が制定されるまでまだ帝国日本)は敗戦後になると,植民地になった朝鮮(旧韓国)出身の人びとに対しては,「かつて忠良なる帝国臣民である」要件を強制していたにもかかわらず,敗戦を機にこんどは,

 「いわゆる在日となった人びと」に対しては,その「2等臣民」(つまり差別的に付与していたそれ)であっても,敗戦前ならばイヤイヤながらでも認めていた「日本国籍」を,実質的に停止・剥奪した状態にした。それだけでなく,その後はなんの断わりもなく国際法的に不当・不法に,在日たちが有していた日本国籍を剥奪し,無化した。

 日本政府はその後,在日たち(在日のほかの中国人や台湾人も含むが)に対する処遇を,ある時は外国「国籍」人とみなし,またある時は「旧(?)日本『国籍』人」であったとか,適当に使い分ける「ウソも方便」の要領をこざかしく運用したかたちでもって,ともかく,敗戦後になるや仕方なく「在日」化せざるをえなくなった「彼ら・彼女ら」を差別的に処遇することしか念頭になくなっていた。

 敗戦後史において一時期,朝鮮人たちが記録した乱暴な行動を一方的にとらえては「ほれみろ,こいつらはやはりこんなにひどい奴らだったのだ」とだけ,無闇やたらに強調したがった風潮は,これもまた「誇張とすりかえだらけの敗戦後日本社会史」を妄想的にもちだしたすえの「極論・極悪の誤説」であった。

 敗戦後史の部隊にあては,日本政府のそうした不当な処遇に抗議した在日朝鮮人(韓国人)たちいいぶんを正当だと認めたからこそ,わずかながらでも譲歩したかたちで社会保障的な配慮が,在日たちに対して,ごく部分的・断片的にだが,適用・実施された事実があった。

 その事実をとらえて「戦後の一時期,ある種の優遇政策があった」と説明した野村旗守の理解は,歴史の事実をハナから歪曲するだけでなく,特定の出来事を針小棒大に誇張する結果を生んでいた。

〔記事に戻る ↓ 〕

 f)「(在特会などの活動は)『ない』ものを『ある』といい,あるいは『小さくある』ものを『大きくある』といって相手を責め立てるなら,これは不当ないいがかりであり,チンピラヤクザの因縁の類と変わりがないでしょう」

 結果としてみずからが加担した差別扇動への責任を放棄した物言いだが,その野村でさえ,そう答えざるをえないほどに「在日特権」なるデマは暴走をしていた。

 そして,それを単なるヨタ話だとして放置することができないのは,在日コリアンの命を脅かすヘイトクライムの引き金となっているからでもある。ネッシーやツチノコ伝説とはわけが違うのだ。

 差別や偏見を伴ったデマは,人としての尊厳を奪う。命を奪う。さらに社会を破壊する。関東大震災直後の朝鮮人・中国人虐殺の歴史がそれを示しているではないか。「在日特権」なるデマが日本社会に与えたのも,在日コリアンへの嫉妬や羨望ではない。排除の思想と激しい憎悪だ。

 在日コリアンが多く暮らす京都・ウトロ地区(宇治市)で起きた放火事件もそうだった。(中略)つまり,ここでもまた「在日特権」なるデマが,ひとりの放火犯を生み出したのだ。あるいは,その放火が住民の命を奪ったかもしれないという想像力こそ,日本社会は働かせるべきだ。

 補注)在日側からは差別主義者の投げてきた言動に対してすでに,何件も裁判が起こされている。そのうちから2023年10月(先月)に判決が出た裁判を紹介しておく。

  イ) 「『日本で生まれ育った私に,どこに帰れと…』在日コリアンへのヘイト投稿を問う訴訟,10月に判決 焦点は「帰れ」の違法性」『東京新聞』2023年8月13日 19時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/269808 の冒頭段落を引用する。

 インターネットのブログに「祖国へ帰れ」と差別投稿をされたうえ,4年以上にわたる誹謗中傷で精神的苦痛を受けたとして,川崎市の在日コリアン女性が起こした損害賠償請求訴訟が7月,横浜地裁川崎支部で結審した。

日本人も欧米にいけば差別はしばしば受ける

 焦点となるのは「帰れ」という排除の言葉の違法性だ。10月の判決を前に,裁判所に意見書として提出された49人の声から,戦後も「帰れ」といわれつづけてきた朝鮮半島ルーツの人々の苦悩を追った。

  ロ) この『東京新聞』の記事に出ていた在日差別を提訴した裁判の結果は,『読売新聞』がこう報じていた。

 「川崎の在日コリアンヘイト訴訟,差別的書き込みした男性に194万円賠償命令…横浜地裁支部」『読売新聞』2023年10月12日 19:54,
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231012-OYT1T50234/ がつぎのように報じていた。

横浜地裁支部 インターネット上で差別的な書きこみをされて名誉を傷つけられたとして,川崎市の在日コリアン3世の女性(50歳)が書きこんだ男性に慰謝料など305万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が〔10月〕12日,横浜地裁川崎支部であり,桜井佐英裁判長は男性に計194万円の支払いを命じた。

在日差別裁判の結果

 g)「在日特権」なる事実無根,荒唐無稽なデマは,差別扇動の,さらには虐殺の「火種」でもある。

 あらためて確認したい。この日本において,日本国籍の日本人以上に優越的な権利を有した外国人など,どこに存在するのか。「思いやり予算」で十分な環境を保証された米軍人は例外として(これこそ特権の最たるものだろう),生活も福祉も雇用も日本人以上に恵まれ,そのうえ「支配」する側に立つことのできる外国人など,どこにもいない。

 税金は外国籍者にも同様に課せられるが,参政権からは排除され,政治の意思決定に参加することもできない。その不備を補うための施策が検討されると,たちまち「特権」だと批判の声が上がる。

 h) だから何度でも繰り返す。存在するわけがないのに,差別扇動の飛び道具として用いられる「在日特権」なる物言いは,れっきとしたヘイトスピーチである。ヘイトクライムを後押しするものである。

 だからこそ,政治も行政も,いや,日本社会全体で,このふざけた文言を断固として否定すべきなのだ。「殺戮」の材料など,踏み潰すしかない。

 --以上が本日,2023年11月14日に追論してみた記述である。日本社会のなかでもまっとうな権利意識,社会認識ができる人びとは,在日差別などしない。

 差別論の基本精神に触れておきたい。ひとつの種類の差別を毅然と否定できる人は,そのほかのあらゆる差別もきっぱりと否定できる。だが,ひとつのそれを漫然と肯定する人は,それ以外のすべての差別を否定しないでも,平気でいられる。

 そもそも古代史から重ねられてきたその人口蓄積ぶりを計算していったら,つまり,その血筋を韓国・朝鮮由来の流れを考慮し,遡及していけば,日本の人口1億2千5百万人のうち,韓半島(朝鮮半島)とのなんらかのつながりを有するその比率は,3分の1とか4分の1とかいった程度にまでなる。
 
 敗戦後史に限定するにしても,日本国籍に変更してきた韓国(旧朝鮮)籍の人びとの統計も,その数は馬鹿にならないほど,それ以前の時代から日本「国籍」人であった人たちとの「交流・融合を生んできた」ゆえ,その数は具体的に何人とかまで数え上げて計算することは不可能であっても,5百万人から千万人の単位にまで広がっていると推測したところで,けっして大きな間違いにならない。

 だから,日本「国籍」人がなんの根拠や理由や由来がありうるわけでもない,在日差別を歴史と伝統と現状などに無知・無恥・無識があるがために繰り出す人びとは,まさに天に唾する,自分の足の甲に包丁を滑り落とす行為をおこなっているようにしか映らない。

 ※-1の最後としてつぎの記事を紹介しておきたい。こうした「死んでも治らない馬鹿の典型・見本」が尽きるところがない日本の政治社会だからこそ,この国は海外からも「衰退途上国」だとみられている。経済だけが衰退しているのではなく,政治や社会そのものが堕落・腐朽・瓦解しかかっている。

 芸能事務所関連でいえば,「ジャニーズ喜多川の性的嗜好」による芸能人に対して犯されてきた「性加害行為」が,なんと半世紀にもわたり長期間継続されていながら,日本政府じたいなにも対策を講じていなかった事実は,この国じたいが完全に後進国に舞い戻っていた惨状を物語る。

 以上の記述に関する記事を2点あげておきたい。

 さて,ここからつぎの※-2が,旧ブログ「2014年10月8日」に記述した中身の再生となる。※-1のほうがすでに※-2以下に記述した分量よりも多くなっていたが,ともかく次段からの記述に進もう。

 

 ※-2 在特会はボクらの仲間,安倍晋三政権と排外主義団体の親和性は,閣僚:国家公安委員長が在特会の暴論・盲動をけっして否定しない自民党政権の極右性にみてとれる

  ◆「内外メディア,反応に温度差 閣僚が在特会元幹部と写真」◆
        =『朝日新聞』2014年10月8日朝刊 =

 1) この記事に関するまえおき

 2014年9月25日の時点にまでさかのぼる。同日,日本外国特派員協会で開かれていたのが,山谷ゆり子国家公安委員長の記者会見であった。この記者会見について本日〔2014年10月8日〕の『朝日新聞』が,解説記事として,以下のようにとりあげていた。

 まえもってことわっておくと,ここで説明されているのは,実は,「日本の常識」が「世界(とはいってもまともな先進国に比較した話であるが)の非常識」である事実そのものを,けっして恥じる必要を感じていなかった,その種の感性とは別世界に生きていた《安倍晋三政権の政治体質》そのものに関して,であった。

 在特会の差別行動については※-1がとりあげ,その「本質=本性」の性根がいかに「振るっていた」か,卑しかったかを説明してみた。この在特会に関した議論の程度は,日本国外に目をやればとくにヨーロッパ諸国でもまともな先進国にあっては,〈表現の自由〉とかねあいを考慮しつつ,すで規制されてきた問題である。それら諸国においては,「人種・民族に対する排外主義」とりあつかいとしては,きびしい対応がなされている。

 ところが,日本においては在特会が盛況だった時期,彼らがデモを実施すると,これを警備する警察官たちが,あたかもこの在特会を守るかのようにさえ映る光景が出現していた。この光景が先進諸国のマスコミの目に留まり,それはおかしのではないかという批判が出るに至ってからようやく,多少はその警備のしかたに変化があるような・ないような,といった程度であれば応があった。

 日本の警察庁を統括・指揮するこの国家公安委員長は,『警察法』(昭和29年法律第162号)第6条によって,国務大臣をもって充てると規定されている。この国務大臣が在特会関係の人物と,「誰であったがしらなかった人だが」と弁解はしていたものの,確かにツー・ショット写真を撮影しておきながら,

 しかもこの人物に利用される関係性--この人物のホームページでその写真が公開されており,問題になってからは直後に削除された--ができていた事実を,とくに問題視しなくてもよいなどと,自身で解釈できる「山谷えり子のその政治感覚(神経)が問題にならない」はずがない。

自民党の体質として仲良しは「昔ヤクザで今極右」?

 上の『週刊文春』2014年9月25日号に使われていた画像(写真)資料については,カラー版のものがあったので,ついでにかかげておく。矢印で指示されている人物が問題だった増木直美。

安倍晋三君も登場していた

 2) 記事本文の引用

 安倍内閣の新閣僚や自民党幹部が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などの関係者と写真に写っていたことが相次いで発覚した。海外メディアは「安倍首相の頭痛の種」などと指摘。だが国内メディアの反応は概してにぶかった。この「温度差」はなぜ生じたのか。

 「在特会のような組織は容認できないと,この場で表明してはどうか」

 2014年9月25日に日本外国特派員協会で開かれた山谷えり子国家公安委員長の記者会見。本来のテーマは拉致問題だったが,約30分の質疑の大半は,山谷氏が在特会元幹部と写真撮影をしていた問題に集中した。

 「在特会やその理念を否定するべきでは」といった質問が何度も出たが,山谷氏は「いろいろな組織についてコメントをするのは適切ではない」「ヘイトスピーチはまことによくない」などと述べただけだった。

 補注)在特会に対する「コメントはとくにない」が,「ヘイトスピーチは不可とする」この山谷えり子は,まことに歯切れの悪い,徹底もしない,実に不可解,まことに奇っ怪な応答ぶりを残していた。

 山谷えり子の抱く政治信条のホンネに照らしていえば,「在特会の意向・主旨は」「好ましい団体・組織」だといいたいはずである。だが,これを一言でもいってはおしまいよ,ということにしかなりえない点だけは,よく承知しているらしく,この足かせがあるためになのか,実にさえない応答ぶりであった。

 警察庁を束ねる頂点に座る権力者がこのような個人的な政治姿勢では,在特会のような単細胞,暴力的言動を行動原理とする排外主義の右翼運動を,まともにとりしまることなどありえない。すでにこの在特会在日北朝鮮系の学校に対するヘイト・スピーチでは,かなり高額の罰金を科せられた裁判の判決を下されていた。

 山谷からすればこうした在特会であっても,その「理念を否定するべきでは」との質問(=批判)が提示されても,世の中には「いろいろな組織についてコメントをするのは適切ではない」と断わりながらもなお,「ヘイトスピーチはまことによくない」などと,相当に支離滅裂で,同時にまったく首尾一貫しえない発言をしていた。

 要は,山谷えり子にとって在特会はけっして好ましくない団体・組織ではなく,できればそのまま存在しつづけてくれることが,彼女の立場・思想にとっては「まことによろしくも・好ましい」現状だということを,馬鹿正直にも物語っている。そう解釈されるほかが自然であり一貫する。 

 3) 海外記者の山谷えり子に対する印象

 会見で追及した米オンライン誌デイリー・ビースト東京特派員のジェイク・アデルステイン氏は「在特会を一度も正面から否定しなかったことに驚いた。米国なら『大臣と問題団体の関係について疑惑が深まった』と大きく報じられる」と話す。

 補注)山谷えり子大臣「在特会」外国特派員協会記者会見について,その内容はつぎの記録が報告している。


 前段にかかげてあった写真などについてともなるが,山谷氏は「たくさんの人とお会いする。在特会の関係者ということは存じ上げていない」と会見で弁明した。

この画像に写る男性は山田一成(かずなり)国家社会主義日本労働者党総裁
「世界連合」?
統一教会変じて「世界平和統一家庭連合」
となっていたが
まさか親戚同士ではあるまいに

 政治家は写真撮影を求められれば応じる。相手の素性は確認できない--との理屈は,かぎ十字に似たシンボルをかかげて行動する団体の関係者と写真撮影していた高市早苗総務相や稲田朋美・自民党政調会長らの弁明と共通する。

 補注)安倍晋三政権は先日,内閣改造人事をおこない閣僚に女性議員を5名入れていたが,そのうちの小渕優子をのぞく4名が,安倍晋三のお友達的な,それも右翼・保守・国粋・反動を根本の政治体質とする〈極右の連中〉であった。

 そこで,いま論じているような問題を,彼女ら(その代表格が高市早苗)がつぎつぎ起こしてきているのだから,まさにそれみたことかという印象であった。 ここまでの議論についてのさらにくわしい吟味は,別途に記述をしたたて試みたいとだけ断わっておき,本論をつづけていきたい。

〔記事に戻る→〕 国内メディアの多くは一連の弁明を淡々と報じた。海外メディアが大きく扱ったことを紹介したメディアもあった。

 英インディペンデント紙などに執筆するデイビッド・マクニール氏も「写真だけでは,在特会との関係を証拠づける根拠が弱い」と考えていた。

 だが,山谷氏が在特会の理念を否定しなかったうえ,「在日特権とはなにか」との質問に対し,「法律やルールにもとづいて特別な権利があるというのはそれはそれで,私が答えるべきではない」と答えたのをみて,記事の出稿を決めた。「在日特権の存在を否定せず,特権があると示唆したようにさえみえた」からだ。

 補注)山谷えり子が「在日特権とはなにか」との質問に対してだが,ともかくも,「法律やルールにもとづいて特別な権利があるというのはそれはそれで,私が答えるべきではない」と『答えたという』とき,

 彼女がはたして,この質問に答えられるだけの『〈在特会〉に対する一定・特定の理解・認識・概念』と呼ぶに値するような《中身・内実》を,もともともちあわせていなかったいのではないか,という強い疑念が浮上していた。

 要は,その程度の人間=国会議員が公安委員長であった。

 インディペンデント紙は会見内容も含めて問題を詳報。英エコノミスト誌は山谷氏と在特会との関係に触れ,「ヘイトの一部は政権トップからインスピレーションをえているようにみえる」と紹介した。だが,国内の大手メディアはほとんど報じなかった。

 こうした温度差はなぜ生じているのか。マクニール氏は「一部メディアが安倍政権のサポーターのようになるなか,日本のメディア全体が権力批判に過剰に慎重なようにみえる」という。

 補注)ここの指摘は2014年9月のものだったが,それから9年余り経った現在における日本の「マスメディアをかこむ政治状況」は,その間の「安倍晋三政権⇒菅 義偉政権⇒岸田文雄政権」へと進行するにしたがい,どんどん悪化するばかりであった。

 つぎの画像資料はその歴史的な経過と結果を教えている。

安倍晋三の第2次政権になったらこのとおりになっていたが
2023年までにはアフリカのガーナに劣る順位にまで落ちた
『日本を壊した安倍政権』2020年と題した本が出版されるわけが
よーく理解できる
つぎの画像資料はその順位が「三つ上昇」だと教えているが
その程度の変動では有意性なし
安倍晋三が壊した日本はいまでは完全に「美しくはない国」
になりはていた

 ドイツ人フリージャーナリストのジークフリード・クニッテル氏は「欧州では,マイノリティーを攻撃するグループの関係者と政治家が同席することは考えられない。日本メディアの多くが問題の深刻さを理解していない。いまは言葉の差別だけかもしれないが,いつ暴力に発展するかわからない」と懸念する。

 北海道大学の吉田 徹准教授(欧州比較政治)は,欧米メディアの反応の背景に「第1次世界大戦後,もっとも先進的な政治体制をもっていたワイマール共和国がナチスを生み,国家として特定民族を迫害したことへの反省がある」と指摘。

 「日本は民主体制の転覆を経験したことがなく,平等や人権に対する感受性が弱い」という。

 差別問題に詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「日本のメディアは,差別を一部の人の限定的な物語としてしかとらえてこなかった」と分析。「でも人種差別は被差別者だけの問題ではない。社会が壊れていることが問題なのだ,という認識をもつ必要がある」

 

 ※-3 亡国の首相がのさばっていたこの日本国

 1) ベトナム戦争のとき,アメリカ兵はベトナム人を「ゴキブリかねずみと思え」と教えられていた。

 安田浩一は『ネットと愛国-在特会の「闇」を追いかけて-』講談社,2012年4月の著者であったが,本書の宣伝文句はこういう解説をかかげていた。

 「ゴキブリ在日を叩き出せ」と過激なスローガンを叫ぶネット右翼。彼らをそこまで駆り立てるものは? 大反響を呼んだルポの書籍化。

 「特権をむさぼる在日朝鮮人どもを日本から叩き出せ!!」。聞くに堪えないようなヘイトスピーチを駆使して集団街宣を行う,日本最大の「市民保守団体」,在特会(在日特権を許さない市民の会 会員数約1万人)。

 だが,取材に応じた個々のメンバーは,その大半がどことなく頼りなげで大人しい,ごく普通の,イマドキの若者たちだった・・・・・・。いったい彼らはなにに魅せられ,怨嗟と憎悪のレイシズムに走るのか。

 現代日本が抱える新たなタブー集団に体当たりで切りこんだ鮮烈なノンフィクション。

 彼らはわれわれ日本人の “意識” が生み出した怪物ではないのか? 彼らがネットとともに台頭してきたのは確かだが,この現象には,もっと大きな背景があるのではないだろうか。

 著者・安田浩一氏の徹底取材はこうした疑問から始まった。2010年末から2011年にかけて,ノンフィクション雑誌「G2」に掲載され,大きな反響を呼んだ傑作ルポルタージュ,待望の単行本化。

安田浩一『ネットと愛国-在特会の「闇」を追いかけて-』


 なにやら,この在特会の頭上にさまよっていたと形容したらよいのか,その背後霊であったかごときに「安倍晋三の姿」が浮かんでみえてくる気分にさせられた。いずれにせよ「世界の常識など通用しない〈小さな世界〉が日本国のなかには実在する」のであった。在特会はいわば,安倍晋三という「幼稚で傲慢」な首相の影法師であった。アベが動けば,ザイトクカイもゆらゆらと不安定に漂うがごときに,着いてまわっていた。

 2) 嘘つき首相がのさばっていたこの国

 昨日(ここでは2014年10月7日のことだが)『日本経済新聞』朝刊3面脚には,つぎのような「本の広告」が出ていた。

 この古賀茂明『国家の暴走-安倍政権の世論操作術-』角川書店,2014年9月10日初版は,安倍晋三が「大嘘つき」であると論断していた(88頁。ほかの箇所でもさらに嘘をつく安倍晋三と指弾しているが……)。

 このような首相を戴いている日本国であった。山谷えり子程度の大臣の1人や2人,つまり,このような陣笠閣僚が〈何人でも居たと〉ころで,どうということもあるまいにという,ごく自然ななりゆきだ,というよし。

 3) ノーベル物理学賞を日本人3名が授賞される

 さて,今日〔2014年10月8日〕の新聞朝刊はトップ記事ででかでかと,「ノーベル物理学賞 赤崎・天野・中村氏-日本の3人,青色LEDを発明 照明など広く応用」(これは日本経済新聞)と冒頭記事を飾っていた。そのうちの1人,中村修二(なかむら・しゅうじ;60歳)は,こういう経歴の持ち主である。

【人物紹介】 中村修二は1954年に愛媛県に生まれたが,現在は米国籍。1977〔昭和52〕年徳島大学工学部卒,1979年徳島大大学院修士課程修了,同年日亜化学工業入社。1988年米フロリダ大学客員研究員,1994年徳島大で博士号を取得,2000年米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授。1996年仁科記念賞,2002年米ベンジャミン・フランクリンメダル。

中村修二略歴

 中村修二が青色LEDの発明・応用研究をしていた時期,所属していた会社日亜化学との関係がその後において,どのような経過をたどったか有名な話であるから,その詳細は説明しない。だが,中村が日本に嫌気を差してこの国を離れアメリカに移住しただけでなく,国籍まで替えたという事実に注意しておきたい。

       ★ 中村修二は日本人かアメリカ人か ★

 カリフォルニア大学の教授になった立場からは,アメリカの軍事費から投入される研究費獲得のためには,米国国籍でないと実現できないという理由を,中村修二は国籍変更の理由に挙げていた。だが,筆者はこれは2次的な理由だと解釈している。

 早速だったが当時,「ノーベル物理学賞・中村修二教授は『日本人』か『アメリカ人』か--ネットで大騒動に」という〈騒ぎ〉が,日本国籍を離れてアメリカ国籍になっている中村修二教授に関して起きていた。

 しかし,中村は「日本人」であり,「アメリカ」国籍「人」ある。日本国は二重国籍を認めていないゆえ,彼は国籍上でいえばアメリカ人にしかなりえない。日本人に全面的に戻したいのであれば,名誉「日本」国籍を与えるもよし。ただし,現在の日本国にこのような制度はない。

 日本人が「日本の国籍」をもつことを,とてもすばらしいことだと,日本政府は思っている。「二重国籍などとんでもない」というのが,その立場からだと思いこんでいる。

 もっとも,アメリカ政府もほぼ同じような立場で「アメリカ国籍」を考えているが,中村修二のような人材が日本から去っていく現実は,昨今日本の没落ぶりに照らして考えるに,それ相応の理由・事情があったものと推察する。

 中村修二というノーベル賞の受賞者の「存在」が示唆する現状のごとき日本のありようは,「在日特権」をあげつらっていた在特会の妄想・狂気に通じる《なにか》(狭量性とか偏執さとか排外性とかなど?)を共有していた,ともいえる。

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