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「バカな大将,敵より怖い」ではなく「馬鹿な首相,ナマズより怖い」となった地震大国の「21世紀的な原発事情」

 ※-1 2024年8月8日16時43分ごろ発生した日向灘の地震

 a) 九州地方,大分県沿岸で2024年8月8日に発生したこの「日向灘の地震」に関して,翌9日になってからだったが,「南海トラフ『巨大地震注意』情報」といったふうな,なにやら正確には意味の汲みとりにくい文句が常時,NHKテレビの画面に掲示(警告?)されるようになった。

 その後,1週間はこの掲示を出す予定だということらしいが,目障りこのうえない。分かりきったことを,わざわざ大仰にこれみよがしに掲示しつづけているのは,もちろん「この国営放送局の役目」かもしれないが,政権の提灯持ちでは困る。それも昼行灯のたぐいになっている。

【参考資料】-南海トラフ地震臨時情報に関した大分県知事の発言-

令和6年とは2024年

 明日にでも南海トラフ超巨大地震が発生するみたいな調子で,そのような警告を出しつづけることには,検討ないし議論の余地が大きくあった。この8月,まだ猛暑が持続中であるが,お盆の時節に観光業は大打撃を受けてしまい,海水浴場は昨今の猛暑で好天にめぐまれていても「水浴客がゼロ」という風景が,テレビのニュース画面で伝えられていた。

 本ブログ筆者が思い出すのは,2020年の冒頭から日本でも猛威を振るいはじめた新型コロナウイルス感染症の発生し,流行しはじめたさい,あの「世襲3代目の政治屋」のボンボン総理大臣が2020年2月27日に,国民たちに向けて「教育機関の一斉休校」を要請したところ,これが「国家側による強制的な指導ではない」にもかかわらず,そのとおりにすべての学校・大学などが従うことになっていた。

当時は感染者が1人も出ていない地域もあった

 当時においてならば,そのようにするよりも,各地域の実情に合わせて個別に様子にみてそれぞれに調整しながら,まずは学校(学年や学級)単位で休校措置にするかどうかを具体的に対応していけばよかったものを,実質的には半強制的であったかかのように解釈されて,一斉に全国津々浦々で休学態勢に入ってしまう顛末になっていた。

 ということでそのの要請が,あの「▼カなガ◆大将」から正式に出されたものだから,これに「右へ倣え」の要領で盲目的に,すべての学校・大学などがともかくそろって休校にしていた。「忖度」とは「盲目」と心得たりとでも観察したらよい光景が全国で一斉に起こっていた。

 安倍晋三という当時の首相,その2020年5月下旬ころになると「自分たち(日本)は新型コロナウイルスの征伐」に首尾よく成就した,「日本モデル」が効果を上げたのだとかいってのけ,まことにオメデタイ「宣言」を放っていた。が,トンデモナイ,2024年のこの8月現在になってもなお,コロナ禍は終熄していないどころか,まだまだ周期的に感染者を大量に発生しつづけていく見通しになってもいる。

 b)「新型コロナ流行,なぜ毎年夏に『第11波』ピークは8月か」『朝日新聞』2024年7月19日 20時30分,https://www.asahi.com/articles/ASS7M3CF9S7MUTFL00KM.html から引用する。

2024年8月流行の第11波は明らかになっていたし
盆休みが終わったあとも流行がまた拡大する可能性がある
前掲図表のよりくわしい「最近の様子」を参照する
ー2022年12月より2024年7月下旬までを表記-

 新型コロナウイルスが全国的に広がり,11度目の流行の波が来ている。新型コロナは夏になると大流行を繰り返し,例年のピークは8月。「第11波」は熱中症患者の増加と重なることも懸念され,専門家は感染対策の継続を呼びかけている。

 厚生労働省は〔2024年〕7月〕19日,新型コロナの最新の感染状況を公表した。定点医療機関から報告された新規感染者数は14日までの1週間で計5万5072人。1定点あたりでは前週の1.4倍の11.18人。10週連続で増えており,昨年同時期と同じ水準だ。

 入院者数も急増している。定点医療機関からの届け出によると,14日までの1週間で3081人が入院。3週間前と比べ倍増し,2月中旬以来,5カ月ぶりに3千人を超えた。集中治療室(ICU)に入院した患者は 113人と,前週から 11人増えた。

 新型コロナは冬だけでなく,夏にも流行を繰り返してきた。昨年も6月ごろから新規感染者数が大きく増え始め,ピークは8月下旬だった。(引用終わり)

 ところで,2020年5月25日の発言になるが,故安倍晋三君は誇らしげに,こういっていた。だから,新型コロナウイルス感染症の対策において,私が「日本モデルの力を示した」と力説・自慢していた。

 しかし,それから4年と8カ月近くが経っているが,そうした晋三の発言などおかまいなしに,定期的というか周期的に流行してきた。前掲の統計図表がその事実をありのままに描いている。

 そのさい安倍は,「世界的にもきわめてきびしいレベルで定めた解除基準を,全国的にクリアしたと判断した」のであり,「感染を抑えながら,完全なる日常を取り戻していくための道のりは,かなりの時間を要することになります」とも語ったというから,

 この前段の判断は完全に外れていたけれども,後段の予想は半分だけは当たっていた。つまり「感染を抑えながら」ということはかなり苦しいが,ただし「完全なる日常を取り戻していくための道のりは,かなりの時間を要することになります」とした覚悟だけは,だいたい当たっていた。

 要は,当たってほしくない希望は当たり,当たってほしいと思った予測は外れていた。そんな程度での発言しか,安倍晋三君はできていなかった。この資質の人物に首相に任務が遂行できるのであれば,「出来の悪い中学生」にもたやすく「この日本の首相」は治まりそうである。

 以上のような話題は,実にバカバカしいかぎりの与太話でもあって,あえて触れるまでもないものであったが,いちおうわれわれなりにケジメをつけておくためには,あらためて以上のように指摘・批判しなおしておくことは精神衛生上,好ましい措置である。

 c) 今回,科学的に合理性のそなわった根拠などないまま,「南海トラフ『巨大地震注意』情報」という文言をただ,NHKのテレビ画面に出させつづけているのが,もう1人いた,あの「異次元的なバ▼さ・かげんを誇れる御大将」,いうまでもないが,現首相の岸田文雄君であった。

 このまた「世襲3代目の政治屋」の甘ちゃん首相は,できたらついでに発令したくなるような「国家非常事態宣言の法制化」を狙う意図に引っかけてのしぐさであったが,そのような「国民向けの啓蒙というより扇動的なマスコミ・メディアの悪用」(ただし直接的には当面NHKだけだが)を,「超巨大地震の発生可能性の問題」にかこつけて,軽く試運転をさせているつもりである。

 今日もまだ,NHKのテレビ放送の画面・左側に出されつづけているその「南海トラフ『巨大地震注意』情報」という表現・文句は,このとおり「情報」に留まるのであって,その「注意」や「警戒」を呼びかけるものではない。

 ところで,NHK関連のネット情報を少し調べてみたら,個別に連絡して希望すれば,注意情報が出ないように措置し,解除してくれると書いてあった。つぎの画像資料がそれであった。「NHK 情報 画面」とことばを入れて検索したら一番あたまに出てきたのが,これである。

とりあえず「逆にあつかい」希望者だけに出せば?

 南海トラフ超巨大地震の発生予想確率が「何十年内に何十%ある」と予測されているからといって,しかも今回,大分県沿岸の「日向灘の地震」で,2024年8月8日に震度6弱でマグニチュード 7.1 の地震が発生したからといって,

 1週間以内にそれと同等かあるいはそれ以上の規模の大地震が発生する確率などは,専門家であっても分からないし,どだい事前の予知(日にち)などできない自然現象の話である。

 ましてや,その1週間以内はとくに観光はがまんして予定中止にしたらよいみたいな「雰囲気」だけをばらまいた政府(むろん気象庁の発表を踏まえての?)の姿勢であったからには,すでに海水浴場によっては1人も寄りついていないとか,観光業もホテル・旅館によってはキャンセルがたくさん入ってしまい,この夏向けに設備投資をして内装関係を新たにしていたのに,こうなったとなると,この夏の当面は大赤字だと嘆いていたホテル経営者もいた。

【参考記事】



 ※-2 岸田文雄が考えているけち臭い権勢欲根性

 a) この日本列島で怖い出来事といたら,超巨大地震の発生そのものである。この点はいうまでもない当然の理解である。

 ところで今年:2024年の元日に発生した能登半島地震のさい,原発の稼働中でなかったのが不幸中の幸いになっていたが,停止中であった北陸電力の志賀原発がその地震のせいでかなり破壊されていた事実が,その後になってから徐々に判明していた。

 その間,北陸電力側は関係する情報をひた隠しにしていて,事後,少しずつ出し惜しむようにして公開していた。それは実にたちの悪い行為であったが,その様子は,原発事故が起きると必らずといっていいくらい,たびたび披露された電力会社側の〈常習的な悪癖〉であった。

 もしも,この原発が稼働中であったら原発事故でも相当に危険な水準で事故が発生したかもしれなかった。この1月1日に発生していたその能登半島地震を原因とした志賀原発の,部分的だが重大な損壊事故は,いまとなってみれば,それこそ「ほっと胸をなで下ろす」ことで済まされる出来事であったとはいえ,その日に稼働していたらと思うだけで,末怖ろしい事態を想像しないわけにはいかなかった。

  ★-1 ところで,南海トラフ超巨大地震になったら,まずは恐怖の対象になる原発が「中部電力の浜岡原発」である。この原発では大津波の発生に備えて,長さ 1. 6㎞にもなる「高さが22メートルの防潮壁」や,原発敷地施設の防水・気密化対策を工事してきたというが,そもそもの話,このような対策を必要とする原発(原子力発電所)の「本来的な技術上の至難点」を,いったいどのように再考すべきかという問題があった。

  ★-2 また,四国電力の志方原発は,四国の西部地域で九州方面(といってもその「日向灘」がすぐ近く目前の海域として位置する大分県地域のことになるのだが)に向かい,西方向に槍状に伸びた半島の根元に近い東側に位置しているが,

 もしも,この原発が事故を起こしたさい風向きによっては,これより西側地域に暮らす住民たちは舟で脱出するほか生き残る道はなくなる。つまり,そのまま取り残された状態のまま,東風が吹きつづけた場合となれば,放射性物質をもろに浴びてしまい,下手をするとそれが原因で死者が出る危険性すらある。

  ★-3 九州電力の川内原発も南海トラフ超巨大地震が起きたときとなれば,「安全だ」などとはけっして保証できない地域に立地してあた。こちらも下手をすると深刻・重大な事故を起こしかねない可能性がある。要はどの原発であっても,地震大国である日本の国土の上に建設されているゆえ,大地震が襲来したときはそれ相応の覚悟だけはしておかねばならない。

 ところで,火力発電所でも大事故はありうるが,その影響範囲は時空的に観て原発の比ではない。この点は工学技術に依ってなどというまでもなく,常識的な判断でも想像しうる比較の問題。

志方原発の怖ろしい立地場所

 b) ここで注意したいのは,つぎのような専門家の指摘をどのように受けとるかであった。

 京都大学防災研究所宮崎観測所の山下裕亮助教は,日向灘でおよそ30年周期で発生しているマグニチュード7クラスの地震のひとつと分析する。そのうえで南海トラフ地震が誘発される可能性は低いとしながらも,1996年に2度にわたって起こった地震の事例から日向灘ではリスクが高まっている状態だと指摘する。

京都大学防災研究所宮崎観測所山下裕亮助教の解説

(京都大学防災研究所宮崎観測所・山下裕亮助教の話)(だと)

 「このコンター(等高線)が引かれているのが前回の1996年の地震の時に断層が滑ったところなんです。つぎこっち10月と12月2つあるんですけど,12月は,おそらくこの余震の起こり方を考えると若干含まれている可能性はあるんですが,10月の方はほとんどきれいに残っているんですよ。」

 註記)「『日向灘に割れ残りの領域』『「今後もマグニチュード7程度の地震が発生の可能性』 震度6弱の地震受け専門家 『日向灘は30年に一度のことが起こっている』」『TBS NEWS DIG』2024年8月12日 (月) 23:23,https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1355453?display=1

 こうした専門家の説明も受けてだが,「南海トラフ『巨大地震注意』情報」が当該地震が発生した翌日から1週間は「要注意だと警戒を要請した政府のやり口」は,地震関連の警報・注意「報」としては,ほぼ無意味。

 ある意味,それこそ百害あって一利なしの,岸田文雄だけの自己満足と,これ以外に自身が抱く欲望の表現的な混合体にしかなっていなかった。

 c) つまり,今回,8月8日に発生した大分県「日向灘の地震」の発生を理由に,岸田文雄政権はNHKに対して「南海トラフ『巨大地震注意』情報」という,あいまいさをたっぷり漂わせた「なにをいいたいのか不可解でもある」地震に関した注意(警戒)の要請を,しかも科学的に合理性ある根拠もなしに,おまけになんとはなしになのだが,国民たちに向けて漫然とかつ半強制的に押しつけていた。

 前段で触れたごとき,2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症の流行に備えて安倍晋三が学校関係に対してだったが,休校措置を「あなた任せ」で「判断させる方法」を使い,一斉に実施させていた手法とまったく同質の手法を,別のいい方をすれば,きわめて無責任でデタラメな政治手法を,このたび,岸田文雄もまた使った。悪知恵にして浅慮が過ぎており,みえみえの下手クソな演技になっていた。


 ※-3 原発の問題と地震の問題とが密接不可分でしかありえない「地震国日本の宿命」という「重大問題」を弄ぶ岸田文雄,自分がいかにしたら首相の地位に長くとどまれるかという観点からしか自国の政治を考えられない,これこそ本当に「バカな大将ナマズより怖い」の典型的事例

 たいそう危険であるのが南海トラフ超巨大地震である点は間違いない。だが,それよりもこのような日本の自然・風土に固有にまつわる「必然的な現象の発生いかんの問題」を,自政権の延命にむすびつけたかたちで,あわよくば利用(悪用)しつくそうとする,岸田文雄流の「異次元的な根性の悪さ」がいよいよ鮮明になった。

 ということで,つぎに超巨大地震の心配をしているポーズだけは構えているつもりの岸田文雄が,実は2022年8月の発言であったが,「原発の再稼働」のみならず「新増設」まで謳いだしていた。これは,それこそ「地震大国日本」の最高指導者としては「狂気の沙汰」を意味したが,つぎに関連したある記事を紹介しておきたい。長い引用になるが,そのあとに本ブログ筆者の批評を添えることにしたい。

   ◆ 岸田総理の暴走「原発政策」が始まった!      
        東京駅から120㎞しか離れていない
              「首都圏の原発」まで再稼働へ…! ◆
 
=『現代ビジネス』2022年8月30日,                            https://gendai.media/articles/-/99146

 この記事の執筆者は経済ジャーナリスト・町田 徹であった。地震大国であるにもめげずに,原発の新増設まで唱えだしたいま岸田文雄首相は,気が狂ったのかとまで思わせた。

 だが,当人はあっけらかんとしており,ともかく「首相の椅子」にどうしたら,より長く座っていられるかという利害に執心するばかりで,自国内に無数住んでいる巨大ナマズの存在を,わずかもまともに観察できていない。

前置き

 以下が町田からの引用となる。

 a) 半径30キロメートル圏内に約94万人

 岸田総理は〔2022年〕8月24日,第2回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議にオンライン出席し,各方面に原発の積極活用策に舵を切るよう指示した。

 驚くべきことに,その中には,半径30キロメートル圏内におよそ94万人が住んでおり,地元の同意の取り付けが事実上困難とみられており「首都圏の原発」の異名を持つ「日本原子力発電・東海第2発電所」(以下,東海第2)や,福島第1原子力発電所の大事故の教訓を活かせない「トラブル続きの原発」の「東京電力・柏崎刈羽原子力発電所」(同,柏崎刈羽原発)を再稼働する方針まで盛りこまれている。

 くわええて,先週の本コラムで疑問を呈した「次世代原発の開発・運用」にも前のめりなのだ。

 今回は,この岸田総理の原発積極活用策が出てきた背景と,本当に採るべき方策がそれしかないのか,さらに,やるならやるで,その前にやっておくべきことがないのかなどを考えてみたい。

 まずは,岸田総理のGX実行会議での発言に沿って原発積極活用策の概要を説明しよう。総理はこの日,自身が新型コロナウイルスに感染してリモートでしか参加できないことを謝罪したうえで,原発政策の見直しを口にした。

 第1に,足もとの電力需給ひっ迫に対応するため,「今年の冬のみならず今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員して不測の事態にも備えて万全を期す」として,「とくに,原子力発電所については,再稼働済みの10基の稼働確保にくわえ,設置許可済みの原発再稼働に向け,国が前面に立ってあらゆる対応を採ってまいります」といい放ったのだ。

 b) 原発をめぐる中長期政策の変更

 この「設置許可済みの原発」というのは,7基ある。原発の即時廃止論者ではない筆者からみれば,「東北電力・女川原発 2号機」,「関西電力・高浜原発1,2号機」,「中国電力・島根原発2号機」などが,そのなかに含まれたことに違和感はない。

 だが,「東京電力 柏崎刈羽原発6,7号機」と「日本原子力発電(以下,日本原電)・ 東海第2原発」まで盛りこんだことには首を傾げざるをえない。これらが,なぜ問題なのかは,あとで詳しく説明するとして,ここは総理発言のフォーローを続けたい。

 もうひとつのポイントは,原発をめぐる中長期政策の変更だ。岸田総理は,2050年にカーボン・ニュートラル(脱炭素)を実現するという視点に立って,

 「GXを進めるうえでも,エネルギー政策の遅滞の解消は急務です」

 「本日,再エネの導入拡大に向けて,思い切った系統整備の加速,定置用蓄電池の導入加速や洋上風力等電源の推進など,政治の決断が必要な項目が示されました」と述べたうえで,次世代の原子力について言及した。

 「新たな安全メカニズムを組みこんだ次世代革新炉の開発・建設など,今後の政治判断を必要とする項目が示されました」といい,「年末に具体的な結論を出せるよう,検討を加速してください」と関係各方面に前のめりの指示を出したのだ。

 紙幅があまりないので,この次世代原発について,興味のある人は先週の本コラムを参照してほしい。矛盾だらけだという見解を紹介してある。ちなみに,総理はこの日,ロシア軍のウクライナ侵攻を引き合いに出して,「岸田内閣の至上命題として,あらゆる方策を講じていきます」と大見得を切り原発推進を唱えた。

 だが,客観的にみれば,日本政府はまだ,その福島第1原発事故の後始末すら終えていない段階だ。そんな日本政府が大胆なことをいっても説得力があるとは考えにくい。

 国民からみれば,また原発が大きな事故を起こすかもしれないし,起こしても,政府はいい加減な対応しかしてくれないに決まっているなどと不信をもたれてもなんら不思議のない状況であることを補足しておく。

 話を,東海第2原発に戻そう。

 この原発を保有している日本原電は,1957年に原子力開発をめぐる政府と電力9社の主導権争いの妥協の産物として設立された経緯がある。その名残で,今〔2022〕年3月末の株主構成も,東電,関電など電力9社が全体の85.04%,政府主導の電力会社Jパワーが全体の 5.37%を出資する状態が続いている。残りは原子力関連メーカーや銀行の出資だ。資本金は1200億円となっている。

 c) 日本原電が保有する3つの原発

 日本原電は現在,原子力発電事業として,東海,敦賀の2つの発電所に3基の原子炉を保有している。ところが,原電の原発3基はそろって稼働していないばかりか,いずれも運転を再開するめどが立っていない。このため,原発を維持する基本料の名目で東電,東北電など一部電力会社から事実上の支援を受けて,これまでなんとか延命してきた経緯がある。

 3基について順に見ていくと,福井県敦賀市にある「敦賀第1」は,2011年1月の定期点検に伴い運転を停止した。「敦賀第1」は1970年3月に営業運転を開始したもので,いまとなっては建設から50年を超す歳月が経過した基本設計の古い原発だ。それゆえ,2011年3月に起きた東日本大震災に対する原発の設置基準の強化への対応なども難しく,2015年に日本原電みずから廃炉を決定した。

 「敦賀第1」と同じ敷地内にある「敦賀第2」は,原子力規制委員会が「重要施設の下を活断層が走っている」と判断しており,こちらも再稼働がほぼ不可能とみられている。

 補足しておくと,日本原電は東日本大震災以前,会社存続を懸けて「敦賀第3,第4」の新設を計画していたが,こうした構想は,完全に宙ぶらりんになっている。

 つまり,日本原電は,自社の生き残りのためには,なにがなんでも残りの1基,つまり「東海第2」を再稼働させる必要がある,会社として,この原発が最後の頼みの綱だという意識が働く状況になっているわけだ。

 d) 信頼できない安全対策

 ところが,「東海第2」も再稼働はむずかしい。

 「東海第2」は茨城県の那珂郡東海村にあり,1978年に日本最初の100万kW級の原発として運転を開始したプラントだ。なんといっても,東電・福島第1原発と同様に,東日本大震災に被災したことが影を落す。

 「東海第2」は地震の激しい揺れで原子炉が自動停止したものの,想定外の津波で残った非常用電源の一部を失ったのだ。その結果,福島第1のようなメルトダウンや水素爆発には至らなかったが,冷温停止を実現して安定させるのに3日と9時間54分を要する綱渡りだったのである。

 津波対策を講じていなかった東電の福島第1とは違い,2008年ごろ,日本原電は「東海第2」の津波想定を海抜 5.7メートルに引き上げていたというが,その対策工事は完了していなかった。

 結果として,津波が押し寄せたさい,側溝から海水が入りこんで非常用ディーゼル発電機を冷やす3台の海水ポンプのうち1台が水没して発電機が停まってしまったというのである。そうした経緯をしっている地元などからすれば,日本原電の安全対策は決して信頼できるレベルにない。

 しかも,その後の対策が遅れている。「東海第2」は2018年9月に原子力規制委員会の安全審査に合格し,それに基づく津波対策の防潮堤の建設工事に着手した。この中には地上20メートルの高さになる杭を地下60メートルの岩盤に打ちこむ作業なども含まれているという。が,日本原電は,当初は今〔2022〕年12月の予定だった完成を2024年9月に延ばすと発表している。

 くわえて,問題を深刻にしているのは,半径30km圏内におよそ94万人が住んでいることだ。つまり,全国の原発で,周辺住民の人口がもっとも多い原発なのである。再稼働には,この住民全員について広域避難計画を作る必要や,地元自治体の再稼働への同意を取り付ける必要がある。しかし,計画の策定を終えた市町村は30キロ圏内にある 14自治体のうち5市町村にとどまっている。

 そもそも,水戸地裁は昨年3月の判決で,この広域避難計画の策定の遅れなどを理由に東海第2原発の運転差し止めを命じた状態だ。

 極めつきが,「東海第2」が首都圏から近いことである。実は,東京駅からおよそ120キロメートルしか離れていない。福島第1原発事故の時には,在日の外資系金融機関の幹部らは大挙して香港などに避難。スーパーやホームセンターの飲料水などが瞬間蒸発した。

 万が一,「東海第2」が福島第1原発のような事故を起こせば,あの時とは比較にならない混乱を引き起こしかねない「首都圏の原発」なのだ。

 仮に,再稼働の条件となっている地元の14自治体すべてが同意したとしても,いざ再稼働となれば,首都圏全体で猛烈な反対運動が起こり,社会的な混乱に繋がる懸念がある。

 はっきりいって,内閣のひとつやふたつ吹き飛んでもおかしくない問題を秘めているといわざるをえないのが,この原発の再稼働問題なのである。

 e) トラブル続きの原発

 東京電力の柏崎刈羽原発6,7号機についても簡単に触れておく。岸田総理は,この2機を再稼働候補に含めたが,この原発はテロ対策などの不備が繰り返し露呈して,いまなお東京電力という会社には福島第1原発事故の反省がないことが明らかになっている。この問題では,原子力規制委員会が再稼働を禁止したうえで,年末まで再発防止策などの検査を続けることにもなっている。

 規制委の更田豊志委員長は総理の会見と同じ8月24日の午後の記者会見で,「検査は政府の再稼働方針によって影響を受けるものではない」と,引きつづききびしい姿勢で臨む姿勢を明らかにした。

 柏崎刈羽原発だけでなく,規制委には,総理の肝入りの案件だからといってけっしてて変な忖度をせず,しっかり安全を追求してもらう。そのことは原発が存続する以上,大前提の条件である。

 筆者〔町田 徹〕はここ数年,何度も繰り返して主張してきたが,柏崎刈羽原発6,7号機を政府が本気で再稼働させたいのならば,もっと真摯な抜本策が必要だ。東電に柏崎刈羽原発を手放させて,他の運営主体を構築し,管理・運転を任せるといった措置でも取らないかぎり,国民から運転再開に理解をうることはむずかしい。

 この運営主体に,たとえば日本原電をくわえれば,原電の破綻を防ぐ飯のタネを与えることも可能だ。福島第1原発事故から11〔13〕年以上の歳月が過ぎたのだから,いまこそ,政府は小手先対応でお茶を濁す姿勢や問題を先送りする姿勢を改めるべきだろう。

 今回,総理が突如,歴代政権の方針を翻した背景としては,自民党が先の参院選に勝利し「黄金の3年」〔これは当時の話〕を手にしたことに着目,経済産業省がごり押しをしているとの見方が強い。

 しかし,次世代原発の開発,活用も含めて同じことがいえるが,原発を再活用していくのならば,まずは福島第1原発の事故処理をほぼ終えたとか,完全に軌道に乗ったという状況にする必要がある。処理済み汚染水の海洋放出すら開始できないような状況は論外なのだ。

 くわえて,使用済み核燃料の問題もある。各地の原発は,すでに中間貯蔵のスペースが限界に近づきつつあるし,最終処分地がいまだに決定できていないことも,速やかに解決する必要がある。

 このように,山積みの懸案が片付いていない以上,原発の積極的な活用という方策は,GXやカーボン・ニュートラル実現のための選択肢にはなりえない。岸田総理には,そのことを肝に銘じてもらいたいところである。

 --以上,長かったが,松田 徹は,日本原発問題の現実的な状況,それも岸田文雄が原発のイロハからしてよく理解していない政治屋でありながら,無鉄砲にも(経産省のいいぶんを丸呑みにして)「原発の再稼働と新増設」をぶち上げるといった,その「エネルギー問題に関した無理解・無節操ぶり」は,もはや救いがたいほど程度が悪かった。

 岸田文雄が首相になってからというもの,原発政策に前のめりどころか,頭の先だけを突っこんでいた状態で,いいかえれば,財界・原子力村の意向を,ただ鵜呑みにしただけの「岸田流:原発の積極的な推進策」だったのだから,この人,実は,本当に「原発のこと」なにひとつ分かっていない政治屋である事実だけが,白日の下に明らかになった。

 日本の電力事情としていまや,原発は完全なるお邪魔虫と化している。再生可能エネルギーの導入・活用を妨害するだけでなく,いざ地震大国として超巨大地震が発生したときとなれば,下手をすると東電福島第1原発事故の再来(二の舞)となってもなんら不思議がないこの国において,なにゆえ「原発の再稼働と新増設」なのか?

 正真正銘に「気が狂ったか」とまでいいたくもなる。

 今回,九州地方,大分県沿岸で2024年8月8日に発生したのが「日向灘の地震」であったが,九州電力にしても海をはさんでいる四国電力にしても,この2社に限っては,以前から再生エネでもとくに太陽光発電が季節になると大余りになっていた。その全量が適切に利用されないまま,最近ではすでに出力制御という「電力減産政策」が適用されるという「大いなる無駄」が人為的に発生していながら,その分,電力として利用されずに処理されつづけている。

 原発は,操業度(発電をする稼働率)に関してまったく融通が効かない。だから,電力需要が落ちる夜間電力は揚水発電のために,ある意味では無駄な発電のための発電をせざるをえず,つまり,その水を揚げておいた水力発電所が昼間にその水を落として(また利用して)発電するというエネルギーの本質問題からみたら,たいそうなムダ・ムリ・ムラをせざるをえないでいる。

 原発(原子力発電)は,完全に木偶の坊としての発電装置・機械であり,再生可能エネルギーをめざす主要各国が日本とは異なりその発電比率をどんどん高めている現状のなかで,日本は異様に原発にこだわりつづける「電源構成の維持」に熱心である。

 その電力会社側,すなわち経産省側の基本要請に対して,岸田文雄がそれこそ馬鹿正直に応えていた。要は,この首相,日本におけるエネルギー問題をまともに理解できていない。恥ずかしいくらいなにもしらないと決めつけられて当然であった。

 というしだいで,この「世襲3代目の政治屋」の「聞く力」とは,財界・原子力村向けでしかなかった。国民・市民・庶民たちの要求を真摯に聞くという基本姿勢など,終始一貫なかった。
 
 もちろん安倍晋三もひどかったが,この岸田文雄もひどすぎる。

 安倍晋三はこの国をどうしたか? 政治を完全にダメにしたし,経済はどん底に落しこんだ。岸田文雄はこの国をどうしつつあるか? 原発の新増設までするというのは「潜在的な核保有国日本」を強く意識する財界,政界,「軍部」の要請に応えようとしているからにせよ,地震大国における原発の危険度の高さに鈍感な神経は,第3者に耐えがたいほどに寸断されている。

 今回,1週間だけの当面に関して,「南海トラフ『巨大地震注意』情報」を,NHKを媒介に使い国民たちに向けて強調しようとしまいが,対米服属関係のもと手かせ・足かせをかけられているこの日本政治のなかで,いったいなにが地震対策として必要なのか。

 2011年「3・11」の直後,アメリカ軍は「トモダチ作戦」と称して,東電福島第1原発事故に対して真剣に支援活動をしてくれたものの,自軍の対「原子力事故非常時作戦」の意識していなかったとしたら嘘になる。

 岸田文雄はもっとまともに真剣に考えねばならないはずだが,原発問題ならびに超巨大地震に真正面からまじめに取り組める「政治家としての知性も感性」も皆目もちあわせないゆえ,できれば9月に予定されている自民党総裁選には挑まず,このさいさっさと退陣することが,日本・日本人の生命・財産を守るためにも絶対に必要である。

 安倍晋三がすでにこの日本をさんざんに壊してきたが,岸田文雄がこんどはそこに残されたガレキなどを,隠すための政治をおこなっている。「世襲3代目の政治屋」のダメさかげんだけは,もとより冴えていた両名であったけれども,その4代目の小泉進次郎が9月の自民党総裁選に出馬するなどといったこの国の政治事情は,まさしく漫画そのものになった。

 岸田文雄は息子の翔太郎を自分の後継者にするつもりは変えていないと観察できるが,トンデモ話はこれっきりにしてほしいものである。進次郎も翔太郎も未熟以前の「黄身なしの白身だけの卵」みたいな「実在」。これらの古漬けの沈殿物みたいな子どもたちに,この日本の未来を任せるなど,考えてみただけで悪寒が走る。

【追 記】 この記述を書き終えて公表するころまでには,つまり本日8月14日の午前中であったが,岸田文雄は次期自民党総裁選(9月予定)には立候補しないと表明した。本日の夕刊は第1面冒頭でこのニュースを報じた。

 それにしても,さんざんぱら愚政ばかりを念入りに積み重ねてきたのが,この現首相岸田文雄であった。安倍晋三からこの岸田へと,それはもう,ろくでもない「世襲3代目の政治屋」による腐政が,だらだらと連続させられてきた。

 その間,この国の実力はダダ下がりの一途。

 「かつてはJAPAN as No.1」だったけれども,「いまは,もう 秋……」というか,しっかりと黄昏模様,完全にダメ国家の予兆しか伝わってこない。

 いまでは「観光立国」にしか希望がもてないところまで漂着した「感じ」があるこの日本。奈良公園のシカたちになにかを期待するしかなくなるこの国だとしたら,21世紀のこれからの見通しは真っ暗……。

 世襲政治屋の連続登場を早く出禁にしておかないことには,日本の政治に明日はない。次期自民党総裁候補に小泉進次郎?

 アメリカの使いっ走りでしかできそうにないこの世襲政治屋(それも4代目!)は,女房といっしょに「お・も・て・な・し」の接待テクで,国際政治の修羅場に挑めるとでも思っていたら,これ大間違い。

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