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2023年に日本の出生率は 1.20の最低となった,2010年代安倍晋三政権の時期は人口減少対策など,実質放置されてきたその必然的な顛末

 いよいよ,合計特殊出生率が1.20まで下降した日本の人口趨勢,これはそもそも,アホノミクスがのさばっていた時期においてからして,なんら抜本対策をほどこすことがなかった「自公民野合政権流の稚拙な為政」の必然的な結末でもある。

 最初に『毎日新聞』本日朝刊が報道したこの記事を紹介しておきたい。

2023年の出生率は 1.20

 

 ※-1 昨日(2024年6月5日)の午後から夕刻になると,この出生率が1.20まで下落したというニュース速報が,筆者の購読紙には配信されてきた

 つぎに,本日(6月6日)『東京新聞』から当該の記事を引用する。ただし,これは『共同通信』が配信した記事である。

     ★ 出生率1.20,最低更新 2023生まれ72万7千人 ★
  =『東京新聞』2024年6月5日 15時06分(共同通信),
            https://www.tokyo-np.co.jp/article/331677

 厚生労働省は〔6月〕5日,2023年の人口動態統計(概数)を発表した。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1.20となり,データのある1947年以降の最低を更新した。未婚・晩婚化が影響した。

 東京は0.99だった。2023年の出生数は過去最少の72万7277人で,2023年の政府推計より11年早いペースで減少している。出生率と出生数はいずれも8年連続マイナス。児童手当などを拡充する少子化対策関連法は5日成立したが,少子化傾向の反転は見通せない。

 これまでの最低は2005年と2022年の1.26。2023年の出生数は前年比4万3482人減。今後の出生数に影響する婚姻数は90年ぶりに50万組を割って戦後最少となった。2024年は70万人を下回る可能性がある。

 出生率は2025年に1.26で底を打ち,第2次ベビーブーム(1971~74年)世代の出産などで2015年に1.45まで回復した後,2022年に1.26まで低下した。2023年はさらに落ちこみ,新たな局面に入った。人口の維持に必要とされる2.07との差は大きい。

『東京新聞』2024年6月6日

 一般論として指摘される少子化(出生率の減少傾向が止まらない現況)の現象に関して,日本の場合は,どのように説明がなされているか。

 日本における少子化の主な原因に挙げられる要因は,以下のごときに列記されている。

 「未婚化や晩婚化の進展」
  「若者の結婚および出産に関する意識の変化」
  「育児に対する経済的負担が大きいこと」
  「男女別賃金格差が存在していること」
  「育児や家事に対する女性の負担が大きいこと」が挙げられる。

 要は,いまの時代,結婚することじたいがゼイタクだという雰囲気さえ生まれており,結婚「できた(した)」彼と彼女の場合だと,自分たちの家族をどのように設計していこうかと考えるさい,子どもをたくさん産んで,にぎやかで楽しい・・・などといった発想が,当初から萎えさせられる最近日本社会のきびしい経済社会情勢が,当たりまえの制約になっていた。

 つづけて『日本経済新聞』2024年6月6日朝刊1面冒頭記事も紹介しておきたい。

『日本経済新聞』2024年6月6日朝刊1面上部
『日本経済新聞』2024年6月6日朝刊1面下部

 この画像資料で紹介した本日『日本経済新聞』朝刊1面の記事から,前文から本文にかけて,あらためて最初の段落からだけとなるが,引用する。

    ★ 2023年の出生率 1.20,過去最低を更新 東京都は 0.99 ★
       =『日本経済新聞』2024年6月6日朝刊1面=

 厚生労働省は〔6月〕5日,2023年の人口動態統計を発表した。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は 1.20で過去最低を更新した。出生数や婚姻数も戦後最少だった。経済負担や働き方改革の遅れから結婚や出産をためらう若い世代が増えた。少子化と人口減少が加速してきた。

 出生率は2016年から8年連続で低下した。これまでの最低は,2022年と2005年の1.26だった。国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に公表した将来人口推計の仮定値(中位,1.23)を下回った。

 年齢別の出生率をみると,もっとも落ちこみ幅が大きかったのは25〜29歳の女性だった。第1子出生時の母の平均年齢は31.0歳となり,初めて31歳台になった。(後略)

『日本経済新聞』2024年6月6日朝刊

 昔は「貧乏人の子だくさん」といったが,いいえて妙というか「貧乏でも子どもが大勢いた」家・家族がいくらでも存在した。それはなんというか,誰もが皆貧乏であった時代での話題であった。だが,21世紀のいまとなっては,この「貧乏⇔子だくさん」という構図は,想像すらできない。

 ところがそれでいて,生活するには至便な土地である東京都の2023年の出生率が全国都道府県のなかで最低の「0.99」であるという数字は,なにか奇妙な印象を受ける。しかし,この数字はいってみれば,実はもっとも経済生活がしづらい(ただしなかでもとくに低所得層にとってはという意味だが)都市が東京都だということになる。

2023年-都道府県別の出生率

 もちろん,東京都といっても山の手か下町かによって,それこそ千差万別的な生活環境が実在している。だが,この日本の首都にあっては人口集中が止まらない都市として,日本の人口統計のなかに潜む基本的な問題性が集約的に体現されている。

 東京都での出生率が全国で一番低いという事実は,一面の反面から日本における人口統計の基本的にもっとも矛盾だと思わせる諸要因のすべてを示唆している。

 さらに「基本給29年ぶり増加率,4月2.3% 実質賃金はマイナス」『日本経済新聞』2024年6月5日 8:30,10:26 更新) という報道もあったけれども,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA045VI0U4A600C2000000/

 その点はだいたいにおいて,正規労働者(集団群・階級・階層)にのみ当てはめられうる話であった。つまり,少子化傾向の拍車をかけてきた経済要因に関する説明内容としては,物足りない・食い足りないことはなはだしい説明であった。

 

 ※-2 アベノミクスという徹底的にアホノミクスだった為政の方途が,2010年代における「日本の衰退国化」を加速させた

 『阿修羅 掲示版』にこういう記事の紹介がなされていた。その題目は,「若者よ,騙されるな! 『統計偽装』でバレた『嘘だらけ』アベノミクスの正体。『嘘』で成り立つ日本経済,見限った海外の投資家たち(ソイソースマガジン)」投稿者・西大寺 日時 2024 年 6 月 05 日 00:45:40: cgRA355xS6WP2 kLyR5Y6b http://www.asyura2.com/23/hasan136/msg/401.html であった

 補注)なお「ソイソースマガジン」とは “Soysauce Magazine Online”   https://www.facebook.com/SoysauceMagazineOnline/ を指しており,参照するこの出典は,つぎのリンク先・住所である。

 ⇒ https://web.archive.org/web/20220116183019/https://soysauce-mg.com/2019/02/07/abenomics/ 
 
 以下に引照するこの記事,原文の執筆者は「ジャーナリストの山田順」である。また,この記事が公表された日にちは,2019年2月7日であった。つまり,まだ安倍晋三の第2次政権が維持されていたころになる。

補注-以下の引用では文意を汲みとり原意をそこなわない程度に
補正をくわえて紹介する

 --やはりアベノミクスは大失敗。しかし,大失敗だけでは済まず,この日本からもっとも大切な「信用」まで破壊した。今回発覚した「統計偽装」はまさに象徴的な事件である。このままこの国で生きていけば,あなたに将来はない。(ジャーナリスト 山田 順)

 a)「嘘」で成り立つ日本経済,見限った海外の投資家たち

 厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正発覚から賃金偽装が明らかになり,アベノミクスがみせかけにすぎなかった。なにしろ,56ある国の基幹統計のうち,全体の半数近い統計に誤りがあった。もはやこの国の経済は「嘘」で成立していたとしかいいようがなくなった。

 それでも,政府寄りのメディアはいまだに安倍政権をかばいつづけるばかりで,ことの重大性を指摘しようとはしない。しかし,投資家はそうはいかない。「嘘」に長期投資すれば,その分,大損する。

 補注)安倍晋三の第2次政権がGDPの経済統計が代表的であったが,この国民総生産の数値を水増しして表現しようと,ゴマカシに手を着けはじめたのは,2016年度の統計からだと指摘されている。

 すなわち,アベノミクスのアホノミクス・デタラメミクス・ウソノミクスの本性が,そうした歴史過程のなかでより露骨にも剥き出しになるほかなくなっていた。

〔記事に戻る→〕 すでに,日本株に投資していた海外勢は東京市場から逃げ出している。彼らは2018年,日本株を5.7兆円あまりも売り越した。これは31年ぶりの売り越し高水準であった。今年〔2019年〕も売り越しは依然として続いている。残っているのは,火事場泥棒的に短期変動で儲けようという投資家(投機家)だけ。

 つまり,海外投資家は日本経済をみかぎっており,もう戻ってくることはない。それではなぜ,彼らはこれまで日本株を買ってきたのか? この昔日の経済大国に投資してきたのか?

 b) 公的資金投入でごまかすアベノミクスの「嘘」

 海外投資家がこれまで日本株を買ってきた理由のひとつは,アベノミクスで日本経済が好調になったと政府が常時アナウンスしてきたからであった。ウォール街まで出かけ,「バイ・マイ・アベノミクス」といった日本の首相が,とんでもない “大風呂敷男” だとは思わなかったのか。

 実際,企業業績は好転した。しかし,これは単なる円安効果であり,本当の実績ではなかった。その証拠に,この数年間で日本企業が起こしたイノベーションは残念ながらひとつもない。

 補注)その間,この国は「先進国の範疇」からは転げ落ち,実質「衰退途上国」と自嘲気味に呼ぶほかない国柄に転落した。2024年前半にはドル円レートが160円にまで上昇したのは,4月29日の出来事であった。

 このごろ(2024年6月初旬)のそれは,156円前後をうろついているものの,民主党政権の時期は「一時期75円まで」円高になっていた状況に比較するに,それこそ雲泥の差がある。

〔記事に戻る→〕 もうひとつの理由は,市場に公的資金が投入されていたからです。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的資金と日銀は,日本株を買いつづけてきた。すでに日銀は22兆円超のETFを保持していて,多くの日本企業で筆頭株主になっている。

 補注)ETFとは「Exchange Traded Funds」のことで,その狙いは証券取引所に上場し,株価指数などに代表される指標への連動をめざす投資信託を指す。

2024年になってようやく前世紀に記録した史上最高値を
ごく短い時間だけだが更新したといって
ぬか喜びする証券業界側の反応をみて呆れた

安倍晋三がGDP統計に手を出し捏造しはじめたのが
2016年からであった事実に注目

〔記事に戻る→〕 日本はもはや自由主義経済の市場ではない。国家統制市場といっていい。日本経済の自由度は,もしかしたら中国よりもひどい。

 となると,株価は公的資金が投入されるかぎり下がらない。下がれば,政府が勝手に国民のおカネをつぎ込む。すると,海外勢は安心して日本株を買い,それを売って儲けることができる。

 前記したように,2018年に海外投資家が売った株は,買った株を5.7兆円も上回りました。これに対し,日銀は6.5兆円ものETFを買い入れていた。それゆえ,現在の株価はみせかけの株価に過ぎない。

 もし公的資金が投入されていなかったら,現在の価格から5000円は下回っていた。統計偽装の背景には,このようなアベノミクスのトリックがあったのである。

 c)「嘘」を重ねる官僚,「偽装」を繰り返す民間企業 

 アベノミクスは,日本経済が抱えている根本問題にはいっさい手をつけなかった。第三の矢である「構造改革」は放置され,「異次元緩和」というカンフル療法で問題を「先送り」してきた。

 しかも,緩和というのはみせかけであった。市中に緩和マネーは流れず,ほとんどが日銀に「ブタ積み」にされたのだから,期待されたインフレも起こらなかった。

 長期金利はゼロに抑えられていたが,日銀はいまや450兆円を超える日本国債残高を抱え,政府は地方と合わせて1100兆円もの借金を抱えています。

 補注)最新の統計だと,こう( ↓ )なっていた。

 日銀は大規模な金融緩和策の一環で国債を買い入れてきた。2024年3月末の時点で,保有する国債の残高は,政府が短期の資金繰りのために発行する国庫短期証券を含め,589兆6634億円となった。 これは,前年度末と比べて7兆9000億円余り,率にして 1.3%増加した。年度末としては過去最大になってもいた。

国債残高

〔記事に戻る→〕 国がそうなのだから,民間企業も「嘘」を平気で垂れ流す。「もり・かけ」問題で政権側が「嘘」と思われる発言を繰り返し,官僚がそれを忖度してデータや情報の隠蔽,偽装を重ねれば,民間がそれと同じことを繰り返すのは,いわば当然であった。

 日本では,大企業による偽装がもう何年も続いてきた。食品メーカーの食品偽装,電機メーカーの不適切会計,自動車メーカーの検査データ偽装,建設メーカーの耐震偽装など,「嘘」のオンパレード。

 補注)本日(2024年6月6日)現在だと,関連する最新の話題がこれ。

雁首そろえて全社が不正敢行
それでも
「安全に問題はないだろう」と各社の首脳たちはほざいていた

〔記事に戻る→〕 もちろん,アベノミクス以前から,日本経済は問題を抱えていた。これまで日本経済を支えてきた製造業の海外移転による「空洞化」で,国内経済の衰退が進むことは再三指摘されてきた。

 本来なら,新たな成長産業であるハイテク産業やサービス業へと産業構造のシフトを図らなければならなかった。急速に進むグローバル化に対処し,ネットを中心とするデジタルエコノミーへの転換が求められてた。

 教育を変え,雇用形態を変え,規制を緩和し,国内から付加価値を創造できる仕組みをつくらなければならなかったのである。

 しかし,多くの日本企業はこれを怠り,なんとか赤字にならないようにコストカットとリストラを重ね,内部留保をためこむことに専念してきたのです。コストカットのほとんどは労働賃金の削減によっておこなわれてきた。

 非正規雇用を拡大し,事実上の賃下げをおこなってきた。これでは,給料が上がるわけがない。ところが,国はこれを隠すため,統計偽装による賃金偽装までやってしまった

 d) アベノミクス最大の被害者は日本の若者だ!

 この間,日本の製造業はどんどん衰退していった。家電産業からハイテク産業まで,後発の中国などに奪われ,みる影もなくなった。

 自動車産業(前段で触れたように最近そろい踏みで不正を犯していたが)を除いて,残ったのは部品供給産業だけである。身の周りをみまわすと,普段使っている家電製品やPC,スマホに海外製品はどれだけあるか?

 これから来るAIや5Gの時代に,日本発の製品が流通することはほとんどなくなる。

 日本ではITを支えるエンジニア人材が大幅に不足し,日本のIT企業でさえ外国人エンジニアを大量に雇うようになっている。これは明らかに,教育の失敗である。国家が英語とコンピュータ教育を怠った結果である。いまだに日本の教育現場では,黒板とノートによるアナログ教育がおこなわれている。

 社会に出ても,「働き方改革」とは名ばかりです。この先,まだ新卒一括採用は続き,企業に入っても成果報酬によるキャリア形成などはできそうもない状況です。

 もはや,日本の若者は相当貧しい生活を強いられている。日本の最低賃金は米国の半分ほどしかない。デフレが続き,家賃や日常品の物価が安いからやっていけるが,他の先進国に比べたら,この安さは異常,デフレもやがて限界を迎える。

 補注)ここで引照している記事は2019年2月7日に公表されていた。その後,2022年2月24日「プーチンのウクライナ侵略戦争」が開始されると,とたんに日本でも諸物価の上昇傾向が明確に現象しだした。

 デフレで我慢してきた日常の経済生活が,転じてインフレに突入するといった局面の急激な変化のために,とくに低所得層の人びとの生活全般が非常に苦しくなってきた。貯蓄を2千万円台もっていた人びとに比率も顕著に減少する事態まで生じてきた。

〔記事に戻る→〕 アベノミクスが続くかぎり,企業は社員の給料を上げず,コストカットやリストラを進める。利益確保第一主義ゆえ,サービス残業は減らない。そればかりか,若い社員は上からの指令で,偽装に手を染めなければならなくなるかもしれない。

 補注)今年(2024年)の春闘は,もともと内部留保だけはタップリ溜めこんでいた大企業(海外進出事業がそれこそ半分以上になる会社も多数ある)においては,5~6%程度の賃上げが獲得できているが,それでも「実質賃金は長期間減るばかりであった。

 つぎに紹介する『日本経済新聞』の記事は,2024年5月9日付きの報道になっていた。

ロシアのウクライナ侵略戦争がもたらした悪影響

〔記事に戻る→〕 こうした生活に「少子高齢化」と「人口減」が追い打ちをかけ,とくに若者たちは,高齢者のために年金を負担し,今後繰り返されるに違いない増税に苦しめられる。

 e) 日本を脱出している若者たち 

 こんな状況なのに,メディアは「日本,すごい!」を繰り返している。テレビ番組を観て,事情をしらない外国人に「クールジャパン」といってもらい,自画自賛している。

 そうこうしているうちに,日本経済はここまで劣化してした。世界ではいまや日本ブランドは地に堕ち,日本人の信用さえも失われつつある。

 かつてシンガポールの故リー・クアン・ユー元首相は,著者のなかでつぎのように述べていた。

 「日本はいま,世界でなんら変哲もない平凡な国へと向かっている。当然,国民の生活水準は今後すぐには低下しないだろう。西洋諸国と違い,日本の外債は少ない」

 「しかも,日本の科学技術は依然高水準で,国民の教育水準も非常に高いためだ。これらすべての条件が時間稼ぎをしてくれるが,最終的には人口問題が暗い影を落とし,そこから逃げ出せなくなるだろう。もし私が日本の若者なら,他の国への移民を考える。日本に明るい未来は見えないからだ」

シンガポールの故リー・クアン・ユー元首相

 こうなったら,将来を真剣に考える若者から順にこの国を出ていくのは当然となった。実際水面下では,若者たちの日本脱出が続いている。

 とはいえ,いくら海外に出ても日本人であることは変わりない。「私たちが日本人であること」は逃げようのない現実である。日本の国力を強くしないかぎり,日本人としての誇りをもって生きていくことはできない。

 ですから私〔山田 順〕は,海外でそういう若者に出会うたびに,「必らず日本に帰って,この国を再建してほしい」といい続けている。国の借金を1100兆円も積み上げて,若者たちにツケをまわした旧世代としては,本当に “虫のいい考え” としりつつ,そういうほかない。(参照終わり)

 以上のごときに日本の政治・経済・社会は,20世紀末に起きたバブル経済破綻後において「失われた10年」と把握された認識を,修正も是正もできないまま,いいかえると,いまは多分「その第4周回目」を,もしかすると自覚症状もないまま,ただダラダラと国家の運営をおこないつづけている。

 この岸田文雄政権をみよ? この男,安倍晋三とまったく同じに「世襲3代目の政治屋」であって,やはり完全に「丸出ダメ夫」も同然だった為政を2021年10月4日以来,国家に関する自分なりの理念も哲学もなにももちあわせていない,まさしく失格の政治屋として,まだ首相を演じている。その演技たるや大根どころか,その葉っぱの数枚分にもなりえない実績しか挙げられないできた。

 以上のごとき,現状にまでフン詰まってしまった日本の政治・経済・社会の諸状況のなかで,先月,2024年5月30日,貧困問題を長らくルポライターとして分析・報告している雨宮処凛が次項※-3の記事を公表していた。

 

 ※-3 雨宮処凛「『新時代の「日本的経営」』が破壊したこの国『ルポ 低賃金』」「『なぜ,この国では普通に働いても普通に暮らせないのか?』。帯には,そんな言葉が大きく踊る。東海林智さんが出版した『ルポ 低賃金』だ。」

 なお,この記事の出所は,『情報速報ドットコム』2024年05月30日 6時30分 JST,https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6656c1e0e4b022987c322249 である。

春闘や賃上げとは無縁な人びとがたくさん大勢いる
非正規雇用の労働者が36%もいる

芳野友子が会長を務める連合という労働組織とは無縁の人びと

 a)「なぜ,この国では普通に働いても普通に暮らせないのか?」 その本の帯には,そんな言葉が大きく踊る。その横には,こんな文章。

 「非正規労働者,漂流を余儀なくされる若者たち。非正規公務員や農業者,個人請負の宅配ドライバー……。労働の現場から実態に迫り,非正規労働を急増させた財界の戦略を検証する」

 この本は,東海林智さんが〔2024年〕4月に出版した『ルポ 低賃金』(地平社)。

 毎日新聞記者である東海林さんとはこの20年近く,貧困の現場で顔を合わせてきた。

 2008年〜09年にかけての年越し派遣村(東海林さんは実行委員),2007年ころからの「自由と生存のメーデー」,エキタスなどのデモ,そして最近ではコロナ禍で開催された「コロナ被害相談村」でも一緒だったし,今年の元日には反貧困ネットワークの事務所で開催された相談会にも来てくれた。

 そんな現場にいながらも「取材している」ふうはなく,なんか下働き的なことをしたり,そうかと思えば当事者の相談に乗ったり誰かと話しこんだりと自然と現場に溶けこんでいる。

 記者というより活動家,というか支援者。というか,名状しがたい人。だけど気がつけば,なにも取材していないようにみえた現場のことを,ものすごく精密な記事にしている人。

 b) その東海林さんが「低賃金」をキーワードに,この国で働く人々を追った1冊が『ルポ 低賃金』だ。

 本書に通底しているのは「怒り」なのだが,その怒りが向かう先は明確だ。そのひとつが1995年に出された「新時代の『日本的経営』」

 東海林さんはこれが日本に非正規・低賃金が蔓延した起点と指摘する

 私も貧困問題に取り組みはじめてから「新時代の『日本的経営』」に恨みを募らせてきた11人。さて,それではそんな「新時代の『日本的経営』」とは何なのか?

 以下,序章からの引用だ。

 日本を賃金の安い国にした根源をたどると,1995年,当時の日経連(日本経営者団体連盟。2002年に経団連と統合し,現代の日本経団連に改組)が提起した『新時代の「日本的経営」-挑戦すべき方向とその具体策』(5月17日)という文書にゆき着く。

 終身雇用ともいわれた日本の安定した雇用スタイルを大胆に見直すとした提言だ。その中身は,雇用のあり方を3つに分け,

 「長期蓄積能力活用型(正社員)」
 「高度専門能力活用型(専門社員)」
 「雇用柔軟型(非正規)」

とし,このいずれかの枠に労働者を配置する,というものだ。

 いわば,三角形の頂点に位置する狭い領域が正社員,その下にやや広い専門社員,そして最も面積の大きい部分に非正規社員が当てはめられるような形だ。

 つまり,正社員は会社の経営や管理を担うごく一部にかぎり,専門性がある労働者は比較的安定したかたちで使う。そして,もっともも多い非正規の労働者は,その説明の言葉にあるとおり,流動的な雇用とするとした。

 「柔軟型」とは,企業の側がその雇用に責任を負わず,好きな時に好きなように使える,ということにほかならない。この考え方のエンジンは,新自由主義--企業利益の最大化をめざし,市場原理を最優先し,「規制緩和」の名のもと政府による市場への介入を配する思想--にほかならない。

『新時代の「日本的経営」-挑戦すべき方向とその具体策』1995年

 この提言をきっかけに雇用の非正規化・不安定化はすごい勢いで広まっていく。29年前の提言なので,ちょうど「失われた30年」と丸かぶりということになる。

 これが日本の雇用を破壊した元凶と指摘する人は少なくないのだが,もはや非正規が当たり前になった時代を生きる若い世代には,ピンとこないかもしれない。

 が,たとえばこの提言がなされる5年前,90年の非正規雇用率は2割程度でいまの半分ほど。その多くが「自分で家計を担う人」ではなかった。たとえば父親が大黒柱の学生とか,夫がバリバリ稼いでいる主婦とか。

 この国で貧困が広まったのは,みずからが家計を支える人にまで非正規雇用が広まったことが主な原因といっていいだろう。

 c) さて,私は2006年から貧困問題をメインテーマとして活動しているが,この18年間みせつけられているのは,「派遣法」と「新時代の『日本的経営』」の破壊力の凄まじさといっていい。

 リーマンショック後に派遣切りの嵐が吹き荒れた時,そしてコロナ禍,非正規の人たちがあっという間にホームレス化するのをみせつけられる過程で,どれほどこのふたつが日本社会を脆弱にしたかを突きつけられてきた。

 しかし,現政権は少子化の主要因でもあるこの根本原因をいっさい正す気はないようで,小手先ばかりの対策に終始してきた。

 そんな状況を忸怩たる思いでみつめてきた東海林さんが綴る本書では,まずコロナ禍の貧困が取り上げられる。

 最初の章に登場するのは,特殊詐欺の「受け子」をした容疑で逮捕された21歳の女性。コロナ禍により,派遣の仕事がまったくなくなったことが闇バイトに手を染めるきっかけだったという。

 コロナ禍は「夜の街」にも大打撃を与えた。

 客が激減した風俗店で働く女性も「受け子」の仕事を始めるまでに追いつめられた。専門学校中退後にバイトや派遣の仕事を始めるものの,全力で働いても暮らしは安定しない。

 ついには家賃を払えず,キャリーケースひとつでアパートを追い出されてネットカフェ生活に。そこで出会った「行き場を失った女子」に紹介されて始めたのが風俗の仕事だった。が,そんな日々を直撃したのがコロナ禍。闇バイトに行くまではあっという間だった。

 一方,コロナ禍はシングルマザーも追いつめた。

 本書には,ショッピングセンターのフードコートで「この世で最後の食事」と決めて,小学生の娘と天丼セットを食べた女性が登場する。しかし,なんとか親子はギリギリ「この世」にとどまった。コロナ禍では女性の自殺が激増したが,その背景が痛いほどに伝わってくる。

 一方,コロナ禍では宅配業者などが「エッセンシャルワーカー」として注目を浴びたが,その待遇は劣悪だ。本書にはアマゾン宅配業者やウーバーイーツで働く人の厳しい実態が描かれる。

 自営業者,個人請負ということで,怪我や事故に対する補償はなし。しかし,その管理された働き方をしればしるほど「偽装フリーランス」という言葉が浮かぶ。

【参考記事】-非正規公務員の場合-

 ほかにも非正規公務員のきびしい状況などが描かれるが,第6章の「61年ぶりのストライキ」にはワクワクした。いわずとしれた,2023年夏の「そごう・西武」のストライキである。

 読めば読むほど厳しい現実に打ちのめされそうになる。が,このストライキのように,至るところに希望はある。本書には,労働組合を結成して闘う人たちも多く登場する。(以上,雨宮処凛)

 以上のように雨宮処凛がいいたいことを,この一文ごとそっくり紹介してみたのは,実は本ブログ内には,いまから1年と3ヵ月ほど前に執筆・公表したつぎの記述があったからである。

 当時の日経連(日本経営者団体連盟,⇒2002年に経団連と統合し,現代の日本経団連に改組)が提起した『新時代の「日本的経営」-挑戦すべき方向とその具体策』1995年5月は,

 非正規雇用者の境遇がひどく劣位にならざるをえない「労働者としての立場」を,財界(資本家・経営者)側の利害得失だけの観点から当然視しつつ論じた,いわば「社長用の経営指南書」であった。

 その「歴史的な事実」は,それから30年近くが立った現在になってみれば,前段の同書は,経営者団体における営利追求のための,いわばガイドブックの役目をよく果たした。これを,よりカッコよくいえば「21世紀風の経営合理化体制の構築」を方向づけた理論書であった。

 しかし,その結果として日本の労働経済は企業経営じたいが変革力を喪失させるだけでなく,人材育成の面で手抜きだらけの人事・労務管理体制を招来させる結末を呼びこんでいた。

 だからその結果(因果応報?)は,つぎのとおり端的に具体的に観察できるが,まさに効果てきめんであったことになる。これは日本企業が営利追求の観点・立場として,海外諸会社に敗けた事実を意味する。

 営利追求のためにおこなったはずの非正規雇用者群の比率増大が,本当は財界側が自分で自分の首を締め上げる効果をもたらしてきた。

「衰退途上国」であったという日本だが
いまや後進国家に転落したも同然

補注の関連でつぎの一覧表も添えておく(同じものだが)
まだトヨタはがんばっているが・・・
トヨタ1社のみとはさみしい

 前段で挙げて紹介した本ブログの2023年3月13日の記述を,できればこの記述のあとにも読んでほしいと希望しながら,本日のこの記述を終わりにする。

 そのリンク先・住所はこれであった。

 ⇒ https://note.com/brainy_turntable/n/nba7f145fe2dc

 最後に日経連『新時代の「日本的経営」-挑戦すべき方向とその具体策』1995年については,いまどきトンチンカンもなはだしく,「実現不可能な理想か,早すぎた理想か」などと,いまの日本企業・人事労務体制の実態とは縁遠い指摘をおこない,四半世紀以上も時間の感覚がずれた解釈を披露しえた学者先生の論稿があった。

 以下にそのリンク先・住所を紹介しておき,本記述を終わりにする。


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