レバレッジイニング
トレバー・ウィリアムズのシーズン成績
総投球回数 (IP): 89.2イニングを投げた。
防御率 (ERA): 3.21という優れた防御率を記録。
FIP: 3.88。Fielding Independent Pitchingは防御率より高めだが、全体として良好な成績。
登板の大部分が低レバレッジ: 登板の70%以上が低レバレッジの場面だった。
レバレッジに基づく成績評価
レバレッジの定義: Leverage Index (LI) は試合の重要度を示す指標。0.50未満が低レバレッジ、1.00以上が高レバレッジ。
ウィリアムズの成績は状況に左右される: 彼の防御率3.21は、重要な場面での影響を適切に反映していない。
中・高レバレッジでの成績 (重要な場面)
LI 0.48以上(中・高レバレッジ)の試合: 15試合、平均LI 0.86で投球。
投球回数: 45.2IP。
失点 (ER): 22失点。
防御率: 4.34。重要な場面では明らかに悪化している。
低レバレッジでの成績 (重要でない場面)
LI 0.21以下(低レバレッジ)の試合: 残り15試合、平均LI 0.12で投球。
投球回数: 44IP。
失点 (ER): 10失点。
防御率: 2.05。重要でない場面では非常に良い成績。
レバレッジの影響を考慮した評価
LI 0.12の意味: LI 0.12は、その状況がランダムな場面の12%の重要度しかないことを示す。つまり、44IPの投球は影響度としては実質6IPに相当する。
Leveraged IP (影響度に応じた投球回数): ウィリアムズが低レバレッジで投げた44IPは、6 Leveraged IPに相当。
LI 0.86の意味: LI 0.86の場面では、45.2IPの投球は39 Leveraged IPに相当する。重要度が高いため、投球回数が実際よりも大きな影響を持つ。
レバレッジERA
レバレッジERAの算出: レバレッジドIPに基づいて、各場面での影響度を反映したERAを算出。
ERA 4.34の場面: 39 Leveraged IP。
ERA 2.05の場面: 6 Leveraged IP。
平均レバレッジERA: (4.34 * 39IP + 2.05 * 6IP) / (39IP + 6IP) = 3.89。
これは彼が実際に登板した試合でのパフォーマンスを正確に反映するERAであり、表面的な3.21 ERAよりも妥当な評価。
レバレッジの重要性
レバレッジの概念: 重要な試合の場面(LIが高い場面)でのパフォーマンスは、勝敗に直結するため、より重視されるべき。
すべてがランダムな状況ならば、ERA3.21のままで良いが、実際の試合では試合状況によって投手の影響度が異なる。
リリーフの例
各リリーフが1イニングずつ投げる場合: 試合の重要度に関わらず、事前に決められたリリーフがそれぞれ1イニングを投げる場合、レバレッジはそれほど関係がない。各イニングが同じ重要度で評価される。
World Seriesゲーム7の例: シリングが最初の6イニング、ランディ・ジョンソンが最後の3イニングを投げた場合、どちらがどのイニングを投げても試合の重要度は同じであり、レバレッジの議論は不要。
レバレッジの実世界での適用
マリアーノ・リベラの例: リベラのようなエリートリリーフは、重要な場面(LIが高い場面)で登板することが期待される。監督はリベラを最も重要な場面で登板させることで試合に対する影響を最大化できる。
マネージャーの柔軟性: 重要な場面で信頼できる投手を投入することで、試合の流れに影響を与えることができる。レバレッジが高い場面でのパフォーマンスが重要視される理由である。
ビル・ジェームズのリリーバー、レバレッジ、WAR、殿堂入りに関する考え
チームのブルペン構成と価値
6人のリリーバーのRA/9:
それぞれのリリーバーのRA/9は以下の通り: 3.00、3.75、4.25、4.50、4.70、4.80。
これは、ブルペン全体で486イニング(IP)を投げ、225失点となる計算。
チームブルペンのRA/9:
6人のリリーバーの成績を加味すると、チームのブルペン全体でのRA/9(得点率)は4.17となる。
リーグ平均のRA/9は4.50と仮定。
ブルペンの価値:
このブルペンは、リーグ平均RA/9と比較して+18得点の価値がある。
計算式: リーグ平均RA/9 4.50から、チームブルペンのRA/9 4.17を引き、それをチーム全体のイニングに掛けることで、+18点の価値を計算。
ランダムな配置 vs レバレッジを考慮した配置
ランダムにリリーバーを配置した場合:
リリーバーを特定のシチュエーションを考慮せずランダムに使う場合、チームは平均的なブルペンに対して**+1.8勝**を得るとされる。
レバレッジを考慮してリリーバーを配置した場合:
最高のリリーバー(RA/9 3.00)は、最も重要なHigh leverageの場面(平均LI 2.0)で起用されるべき。
このリリーバーは、ランダムに起用された場合よりも、賢く使えば効果が大きくなる。具体的には、+1.35勝の価値が、適切なレバレッジの使用によって**+2.70勝**に増加する。
チーム全体への効果:
すべてのリリーバーにレバレッジを考慮して配置すると、チーム全体のブルペンの価値は+1.8勝ではなく、+3.5勝に増加する。
各リリーバーに割り当てられるレバレッジインデックス (LI)
LI (Leverage Index) の割り当て:
各リリーバーの起用される場面に応じて、以下のLIが割り当てられる。
リリーバー1 (最高のリリーバー): LI 2.0
リリーバー2: LI 1.3
リリーバー3: LI 0.9
リリーバー4: LI 0.8
リリーバー5: LI 0.7
リリーバー6: LI 0.6
主力リリーバーが故障した場合の影響
主力リリーバーの故障と交代:
teamのcloserである主力リリーバー(RA/9 3.00)が故障し、代わりにRA/9 4.85のリリーバーがクローザー役を務めるシナリオを想定。
ブルペン全体の成績への影響:
この交代によって、ブルペン全体のRA/9は4.48に悪化する。
これにより、チームのブルペンは平均より**+17失点**(ラン)分低下する。
WAA(Wins Above Average)への影響:
交代後のブルペンのWAAは、元の状態から**+0.2勝まで低下する。これは3.3勝の減少**に相当。
LI (レバレッジインデックス) の影響:
故障したリリーバーの代わりがLI 2.0の高レバレッジの場面で投球する場合、チームのパフォーマンスはさらに悪化する可能性がある。
リリーバーの役割の連鎖効果
リリーバーの役割連鎖:
主力リリーバーが故障した場合、その役割を次のリリーバーが引き継ぐ。具体的には、セットアップマン(リリーバー2)がクローザーの役割を引き継ぎ、次に控えていたリリーバーがセットアップ役に回るといった形で役割が連鎖する。
新しい、あるいは下位のリリーバーは、低レバレッジの場面(LIの低い状況)で投球することになる。
連鎖の結果:
リリーバー間での役割変更により、ブルペン全体としての失点は+1失点にとどまる。しかし、レバレッジを考慮した場合の平均勝率は**+1.1勝**となる。
勝率の変化:
元の+3.5勝が連鎖効果によって**+1.1勝に低下し、最終的に2.4勝の減少**となる。
失点とレバレッジの関係
失った1失点あたりの有効レバレッジ:
故障による17失点の減少があった場合、ランダムに配置した際の効果は**+1.7勝**とされる。
このとき、1失点あたりの有効レバレッジは1.4となる。
後任リリーバーの影響:
主力リリーバー(エース)を失ったとしても、その後任は高いインパクトを持つ役割に使われないため、実際に失われるレバレッジ効果はLI 1.4にとどまる。
WAR(Wins Above Replacement)の配分
リリーバーへのWARの割り当て:
リリーバーにWARを割り当てる際、すべてのレバレッジをクローザー(最重要リリーバー)に一任するのではなく、より分散させた評価を行うべき。
クローザーへのレバレッジ配分:
クローザーには、直面したレバレッジの効果と、中間的なレバレッジ(LI 1.0)との平均値をもとに評価がなされる。これにより、役割の連鎖による影響が考慮され、WARがより公平に配分される。
殿堂入りについての示唆
リリーバーと殿堂入り:
リリーバーが殿堂入りする際には、レバレッジの影響や役割の連鎖を考慮し、純粋なセーブ数や防御率だけでなく、WARのような総合的な指標が重要視されるべきだと示唆している。