道標
ここ最近ライブに行けていない自分の心を慰めるように過去を振り返っていたら1番に出てくる忘れられないライブを思い出した。振り返った時に1番大きくて感情を鮮明に色付けてくれるような足跡。
言葉は難しい。
音楽に出会って更に感じさせられるようになった。言葉に弁明の余地が許されていないから。助けたくて、救いたくて、寄り添いたくて放った言葉がその人の心に銃口を突きつけることにもなり得る。それに気付ければいいが気付けないこともあるし自分の思いとは相反して相手に届いてしまうことがある。人の気持ちは言葉で完全には表現しきれない。ニュアンスやその場の空気がカバーはしてくれるもののそんなに言葉で表現して相手に伝えることは簡単ではない。薔薇にも棘があるように、どんな綺麗な海でも舐めればしょっぱいし日向の裏には影がある。
ただ音楽は歌詞で考えや思いを描き、メロディで色付けし、表情や声色で迫力を出す。
同じ音楽でも、受け手によって変化する意味を持つコンテンツが音楽の最大の魅力であり惹きつけ続ける理由だとも思う。
the 奥歯'sというバンド。HEROの対バン相手で出会った彼らは自分が見る他のバンドとは少し違った。メロディや歌詞もいい。でもそこじゃない。他のバンドと違うのはそこじゃない。それは本当に楽しそうに音楽を鳴らしていたこと。
当時は仕事でミスが続いていたし鳴ってもいない社用携帯の着信音が頭に鳴り響き考えたくなくても心が色褪せ、音を立てて弱っていくのがわかった。ただ彼らの届ける音楽はしつこくて、貪欲で、素直で謙虚。なぜか今の自分に鞭で叩かれたような感情と共に奮い立たされた。
言葉だけではここまで励まされなかったであろう音楽にこんな感覚で抱きしめられるから音楽は怖い。
「アプリでいいや〜」、「スマホで聴けるし〜」
とい言う周りの人間には絶対ライブを勧めるようにしてる。それはその時だけのライブ代や交通費だけでなく、これから訪れる予期せぬ窮地を思い出や心を揺さぶられた震えの大きさが救いになり道標になってくることを知ってるから。
今の彼らが届けてくれる音楽は今しかか聴けない。リアルタイムで僕らに響かせて続けてくれ。バンドマン。