ビールの起源 ~飲み会と古代文明の意外な共通点~
古代のビール
ビールはいつから飲まれているのか?ハッキリした記録は残っていないが考古学的な調査によると、紀元前4000年までには近東一帯で飲まれていたらしい。
もちろん今のように缶から飲んでいたわけでも、ジョッキで飲んでいたわけでもない。
古代メソポタミア人は大きな甕の中で麦を発酵させてビールを作っており、完成したビールは甕から直接飲んでいたのだ
この様子はメソポタミアのテペ・ガウラという遺跡の壁画に描かれている。
面白いのは、ビールの入った甕を3~4人で取り囲み、ストローを使ってビールを飲んでいるところだ。なぜストローを使うのだろう。古代のビールは、液体の表面で穀物の粒や殻を発酵させる「上面発酵ビール」である。これらの邪魔なゴミを避けるためにストローを使っていたのだ。また、液体の表面にはビールの匂いにつられてやって来た虫も沢山浮いていた。このままではやはり飲みにくくてしようがない。ストローは非常に重要な道具だったのだ。
飲み会と古代文明の共通点
「甕を数人で取り囲んで飲む」というのは非常に興味深い。1つの容器から同じものを飲むということは、つまり「その飲み物には毒が入っていない」ということを表している。いつ誰に命を狙われるか分からない世界でこれは非常に大切なことだった。
実際、食べ物を使った暗殺の歴史は古い。
古代ローマでは毒草トリカブトが王族の暗殺に多用されていたという記録がたくさん残っている。苦味の強いトリカブトの成分を、いかに食事に混ぜ込むかという研究が真剣に行われていたほどだ。これでは王侯貴族は気が気ではない。
「みんなで同じものをのむ」=「毒は入っていない」ということがどれだけ人々に庵人勧を与えたのかは想像に難くない。
今となっては大人数で1つの容器から飲み物を飲む文化は残っていないが、似たような文化は残っている。紅茶やコーヒーを1つのポットから注いで、それを飲みながら団らんするのは実は古代を起源に持つ伝統の1つである。また、お酒の入ったグラスを互いに合わせる「乾杯」も同じ容器からみんなで飲み物を飲んでいた時の文化の伝統の名残である。
乾杯前の長い演説の時に古代の歴史に思いをはせてみると、少し違った視点でその日のお酒を飲めるかもしれない。