2024/09/05(木)お酒について

ぼくの父親は、晩年はおとなしいお爺さんになって、寡黙で、不機嫌な日はほとんどなく、いつもニコニコしていた。だから親戚の間では「ほとけさま」というあだ名をつけられていた。

けれど、壮年時には、毎晩、晩酌をして、日によっては悪酔いをして家族にあたったこともあった。ぼくと似て気の小さな人だったから、おそらく仕事でつらいことも、あるいは生活の不安も、あったのだろう。

いったん目がすわってくると、恐くてしかたがなかった。家の酒を飲み尽くすと、「酒を買って来い!」と言われ、弟と二人で酒の空瓶を持って夜道を酒屋に向かった。そこだけやけに明るい酒屋の店頭で、不安げに立っていたことを思い出す。

それでも、たぶん50代の頃に、「このまま飲み続けると長生きできないだろう」と医者から言われ、その日からぱったりと酒を絶った。結局、80を超えて生きていたけど、どんな席でも、酒を断って生涯を過ごした。その日からは一滴も飲むことはなかった。

ぼくももう74歳になった。父親の悪酔いを見て、子供の頃に恐い思いをしていたので、基本的に晩酌はしない。

ただ、お酒は好きなので、今でもたまに家族で飲むことはあり、詩の友人と飲むことはとても楽しい。

とはいうものの、毎月行っている病院で、この間、検査値が悪くなってきたこともあって、健康にはさらに気をつけてゆかなければ。

父親のように、きっぱりと酒をやめて30年間一滴も飲まない、ということにはならないけれども、お酒を飲むのは、生きている喜びに浸りたくなるような、ほんとに大切な時だけにしよう。

あの人の息子なのだし、近い将来、ぼくも最期の数年は、何も望まず、ただ毎日ニコニコと過ごす人になりたい。

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