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贈られる言葉
昔、ある上司がいた。
その上司は昭和の時代から銀行に勤めており、本部・営業店、営業推進・債権管理、基幹店・新規店、と多岐に渡る銀行業務を行ってきた。
ゼネラリスト的なキャリアを積み、難局での業務判断は浪花節な部分はあれど芯のある的を射た結論を出す、いわゆる昔ながらの銀行員と言える人だ。
癖はあれど、上からは可愛がられて、下からは慕われる。
良い上司であるが、そんな上司にも致命的な欠点があった。
とにかく酒癖が悪い。
酔ったらとにかく見境なく絡む。状況次第では手が出るという噂もあった。
そこを切り取ったら端的にヤバい人なのだが、人事処分を受けたという話は聞いたことがない。
宴席だけ耐えたら良いと考えたら、日中も耐えなければならない他のP系の人よりもマシという判断もあるのだろうか。
いずれにせよ、飲んだらヤバい人なので、皆、日中は普通に接するが宴席での同席は極力避ける流れが出来ていた。
「酒が人を変えるのではなく、その人の本性が出るだけ」
というような事をよく聞く。
酒が普段抑えている理性を外し、本音を曝け出すのだろう。
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昨今、公の場で本音を言ったら問題になる事が多くなった。
「自分の仕事は責任もってやれ!終わるまで帰るな!」
「相談しない奴のフォローはしない!」
「資格試験取得の為の勉強は業務外の時間でやれ!」
これらの事も中々ストレートに言いづらい世の中になっている。だからこう言い換える。
「業務はどこまで終わった?完結できそうか?」
「相談はないか?困っている事はないか?」
「必須試験は早めに合格しろよ」
これでは伝わるはずはないが、正直これが限界である。
もはや厳しい本音など言ってもらえる時代ではないのだ。
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件の上司の酒乱についても同じ事で、日中は言いたい事の10分の9は我慢しているのだろう。
多分、他の人より抑えている量が多いから酒の場で、反動が出る。
ただ、逆に考えると、この人が本音を言うのは、言い換えるとこの人に本音を言ってもらえるのはアルコールが入った時だけではないのだろうか?
そう考えだした時、以前よりもその宴席での同席が嫌ではなくなり、色々と話す機会が増えた。
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そしてとある宴席の二次会で、その上司からある言葉を贈られた。
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