銀行と死生観の話
Twitterでも少し触れましたが、銀行と死生観の話をもう少し掘り下げてみます。
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もう10年近く前、個人の債権管理を行っていた頃の話。
当時管理していた中に旧住公(今のフラット35)の住宅ローン延滞先がいた。延滞と言っても毎月遅れながら地道に住宅ローンを返済し続けていた。
まあ、銀行で債権管理を行なっていたら軽度の延滞なんてよくあることで、中には内容証明郵便が来てから払うという人も結構いる。
そんな延滞先の中でも、この人は比較的軽度でいつも1回2回ぐらいの延滞でとどまっていた。だから名前は覚えているが、家に行くほどではなく、顔まではわからないという先だった。
そんなある時、債務者だったご主人さんが自殺したという連絡を奥さんから受けた。
自殺という事で一瞬動揺したが、そこは業務として、相続設定・団信保険の確認等、やるべき手続きを進めていった。
だが、その中で一つの問題が発生した。
「団信保険ですが、保険料未納で失効しています」
本部の担当部署からの連絡。 基本的に住宅ローンの団信保険料は金利に含まれており、未納などはないのだが、昔の住公・フラットについては別途の年払いで、保険料を払わなければ一般的な保険の様に失効になることがある。
この人は延滞常習だったので過去に団信保険料未納で失効したのだろう。
団信失効自体は結構聞く話であるが、銀行員としても大変なことで、団信保険料が引き落とし不能となった場合には住宅ローン本体の払いを遅らしても団信を優先するぐらいの強めの入金依頼をする。
だからこの人に対しても当時の担当者は入金依頼をしたというのは推測される。 そんな中での債務者死亡という出来事。まあどうする事もできない。
債務引受か借換か別資金で決済か…
色々なパターンを想定していく中で、ふと
「もしかしてこの人は団信保険が失効になっている事を知らず、家族に家を残すために自ら命を断ったのではないのか?」
という考えがよぎった。 本当の事は本人以外わからないが、そうだとすればあまりにも辛い。
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私の勤める銀行ではよく「銀行業務は命の次に大事なお金を預かる業務」と言われ、案件の握り込みや雑な仕事振りを咎められます。
当然、そこに否定するべき事はなく、軽い気持ちでやって許される業務ではないと思います。
ただ、そうはいっても「命の次」です。いや、もしかしたら「命と健康の次」ぐらいかもしれません。
要は「大事なものには違いないが一番大事なものではない」ということです。
その程度の大事さです。
そしてこの考えが銀行員として正解かはわかりませんが、
「お金の悩みなんかで死ぬぐらいなら早々に自己破産した方がいいのよ。」
お金の為に死ぬ必要はないんです。
ただ、こんな当たり前の事が判断できなくなるのがお金の怖いところ。
だからこそ「お金の悩みで死ぬ必要はない」と繰り返し伝えたいと思います。
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