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バックキャスト思考で中期経営計画を策定。だけと資本市場の評価が高くない場合の要因は?


バックキャスト思考

1月11日の日経新聞に「統合報告書と企業価値」というタイトルの記事がありました。企業は「バックキャスト思考」を取り入れ、未来から現在を逆算して戦略を構築することが大事ということです。そして、それを統合報告書で開示するといった内容です。

企業の戦略というと中期経営計画(以下、中計)がありますが、中計の策定に当たっては、ここ数年、バックキャスト思考によっている企業が増えています。ざっくりと言いますと、以下のような流れで中計を策定します。

①自社が考える将来の世の中の在り方、自社の世界感である将来シナリオ
➁中期における具体的なシナリオ
③いつまでに何をやるかの計画

このバッククキャスト思考は中長期で投資する株主の志向にもあっています。中長期の投資家は長いスパンで投資先企業の株式を保有します。とすると四半期の目先の業績だけでなく、中長期での先々の企業の成長性が気になるところですので、バックキャスト思考に基づく企業の中計には高い関心を持つということです。

中計を策定したが株式市場の評価が低い・・・

将来シナリオが投資家から信頼されていないから?

でも、このバックキャスト思考に基づいて中計を策定していながら、株式市場で評価されていない企業って意外に多かったりしませんでしょうか?

「ウチは外部環境を精緻に分析し中計を策定したのに、一向に株価が上がらん」「結局、投資家は短期での業績にしか関心がないんだ」という企業です。そういう企業は、中計の土台となる将来シナリオについて機関投資家から信頼が得られていないのでしょうか?

その可能性もゼロではないかも知れませんが、それは低い気がします。

そもそも機関投資家って事業のプロではないのです。ファンドマネジャーやアナリストは多くの企業の業績を見ており、多くの情報に接してはおりますが、彼らは自ら事業運営をやっておらず、企業経営という観点では「外野」に過ぎないのです。
本当に業界や企業のことを理解できるのはその企業や業界の内側にいる人間だけであると私は理解しています。そもそもアナリストに対して、インサイダー情報や本当の肝の情報は企業は語りませんし、この点でもアナリスト等が得る情報には限界があります。

従い、経営のプロである事業会社の策定した長期ビジョンについて「これはおかしいな」と投資家が判断することは出来ず(勿論、企業の設定するビジョンがあまりにお粗末であれば別ですが)、企業が真剣に考えた将来シナリオ自体の信頼が得られていないという可能性は低いと思います

業績予想をしっかりと立て大きなブレが生じないこと

では、中計が評価されていない要因は何でしょうか?

これは、企業の短期業績の予測について投資家が疑問に感じていることが要因であると思います。

企業が業績予想する場合、外部のシンクタンクや政府の統計データ、マクロ統計データ、関連団体の情報などに加えて、顧客の年度の事業計画などを参考にすると思います。大口の顧客には直接ヒアリングをすることもあると思います。このようにして業績予想を立てます。

けど、期初に立てた年度の業績予想を毎年、下方修正や大幅未達で終わった場合、機関投資家はどう見るっでしょうか?

この企業は単年度の業績予想の立て方が甘い、従い、2年後、3年後の業績見通しをまとめた中計の数値も眉唾ものであろうと考えてしまうのです。

中計をいくら立派で理にかなったのを作成したところで、所詮は将来の話であって現時点での予測でしかないのです。その予測の信用を高めるのが企業が策定する毎期の業績予想の達成状況になります。予想した数値が高いか低いかではなく、予想した数値のブレを小さくしないと中計の信用度が高まらないということになります。

バックキャスト思考で中計を策定することも勿論大事ですが、業績修正を繰り返している企業は、まずは短期の業績予想をしっかりと達成することを改めて認識することが大事かなと思います。


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