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ビジネスマンのためのさくっと分かるコーポレートガバナンス ー 株主以外のステークホルダーとの協働も大事です。ダイバーシティってジェンダーだけではないです


前回のおさらい

前回からコーポレートガバナンス・コードについてポイントになる箇所に焦点をあえて解説を開始しました。コーポレートガバナンス・コードは5つの章から構成されており、基本原則の1つ目の「株主の権利・平等性の確保」では、基本原則1-4の政策保有株式がポイントであり、機関投資家は「四の五の言わずにさっさと政策保有株式を売却せよ!」と企業に求めていることをお話をしました。また、政策保有株主がいなくなると、必然的に安定株主比率も下がるけども、企業は株価を意識した合理的な経営をしていれば、安定株主比率の低下など恐れるに足りないことです。

基本原則の2つ目は「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」

基本原則の2つ目として第2章では次のように規定されています。

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

要は企業を取り巻くステークホルダーには色々な方がおり、会社は株主だけに目を向けるのではなく、これら多くのステークホルダーと協働せよというわけです。企業が存続するには商売をしてお金を儲ける必要がありますが、金儲けに関して色々と利害関係者と協働せよということは、ある意味当たり前のことが書かれています。

ちなみに、ステークホルダーというと株主・投資家以外に従業員、顧客、サプライヤー、地域社会、政府/自治体/業界団体などでしょうか。次世代などを掲げている企業もあるようです。個人的には、和感がありますが・・。

この第2章で規定されている原則は次のとおりです。

原則2-1.中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定
原則2-2.会社の行動準則の策定・実践
原則2-3.社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題
原則2-4.女性の活躍促進 を含む社内の多様性の確保
原則2-5.内部通報
原則2-6.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮

この中でここ数年のホットな話題でいいますと「原則2-4 女性の活躍促進 を含む社内の多様性の確保」でしょうか。これについては意外に誤解もあると思いますので少し解説をいたします。

原則2-4 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保

原則2-4は次のように規定されています。

上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべきである。

これだけ読むと今話題のジェンダーダイバーシティのことだよねと思うビジネスマンの方が非常に多いと思いますが、実は他のダイバーシティもあるのです。

補充原則2-4①に次の規定があります。

上場会社は、女性・外国人・中途採用者 の管理職への登用等 、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を 開示すべきである。また、中長期的な企業価値 の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と 併せて開示すべきである

女性・外国人・中途採用者とあり、この3つのダイバーシティについて書かれています。つまり、ダイバーシティ=女性・外国人・中途採用者なのです。ダイバーシティ=ジェンダーということで、女性管理職や女性役員の増加ばかりが新聞やマスコミで取り上げられております。それはそれで良いのですが、コーポレートガバナンス・コードは企業価値(フリーキャッシュフロー)向上には、女性の管理職の登用だけが重要と考えているわけではないのです。

私の勤務先でも女性管理職は当然いますし、多くの企業と同様に比率を高めることを目標に掲げていますが、正直なところ、自分の勤務先1社しか経験のないプロパー社員である限りは、どっぷりとその会社の企業文化につかっている点では男性のプロパー社員と何ら変わりなく、女性管理職を無理やり増やしたところで企業の「稼ぐ力」に効果はないのかなと感じます。

それよりも、企業の「稼ぐ力」を向上させるには中途採用者(男女問わず)が肝なのだと思います。つまり、企業が収益を上げるには、その会社の企業文化にとらわれない柔軟な発想を持つ方が必要なのだと思います。特に、その会社で経営に影響を与えるような部長クラスでの中途採用者が肝になります。だから、プロパーの女性管理職比率などに注力するのではなく、男女を問わず中途採用の部長クラスあたりから管理職を増やすことが大事だと思います。

古い会社ほど役員層は、メインバンクで役員になれなかった人材を役員として引き受けるなどの例外を除いて、プロパー社員のみという会社は多いと思います。ここにどれだけ中途採用者の比率を高めるかが企業の成長の鍵になるのだと思います。

中長期の株式投資の観点から言えば、女性管理職の比率よりも、中途採用者の①採用数に占める比率 ②管理職に占める比率 ③マネジメント層に占める比率の3点を企業に確認することが大事かと思います。