【書評】『関西スーパー争奪 ドキュメント混迷の200日』(日本経済新聞社)
今回からビジネス書の書評もnoteで時々投稿していきたいと思います。元々noteをはじめた当初は、書評もしっかりと記録しておこうと思っていたのですが、これまで出来ていませんでしたが、今後はお薦めだと思った本の書評を紹介したいと思います。
さて、本日は「関西スーパー争奪 ドキュメント混迷の200日」(日本経済新聞社)です。
2021年に関西を地盤とする中堅食品スーパー、関西スーパーマーケットについて阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)と首都圏地盤の食品スーパーであるオーケーが買収を争った争奪戦について、奪戦の舞台裏で何が起きていたのか、関係者らの証言をもとにまとめた内容になっています。当時大きく新聞報道されましたので、ご存じの方も多いと思います。
H2Oによる買収が成功すると思われていた中、「伊藤忠食品の乱」ともいうべき動きがあり関西スーパーを巡る争奪戦の行方は混迷を深めていきました。総会当日の1票がいずれの勝敗を決するかのギリギリの争奪戦でした。
私も当時は関心をもって新聞報道ベースで注視していましたが、新聞報道にはない舞台裏が書かれており、面白い内容でした。
この本を読んで私として参考になった点を整理します。
安定株主も昔のような安定株主ではなくなってきている。買収や事業再編においては、安定株主は必ずしも会社に賛同するわけでない
1票の賛否を争うような局面では企業は株主総会での議決権行使には細心の注意を払い、総務担当者にも十分な教育等が必要
同意なき買収が日本でも増え、上場企業は持続的成長ストーリーを安定株主を含め株式市場にしっかりと示す必要がある
当時は、経産省の「企業買収における行動指針」が策定される前でしたので、買収に対する取締役会の行動規範は必ずしもかちっと決まったものはありませんでした。けど、そういう環境下にあって、関西スーパーの安定株主であった伊藤忠食品が株主に対して説明責任をつくすことを会社に求めたのです。
伊藤忠食品は上場企業であり、意思決定の根拠が曖昧なままですと自社の株主から責任追及をされるリスクもあるのであり、その観点からも毅然とした態度を関西スーパーに求める必要があったのだと思います。
政策保有株式の縮減は加速していますが、仮に政策保有株主が存続するとしても、政策保有株主は今後は投資先企業の議決権行使も1つ1つ真剣に行使していかないとなりません。ということは企業としても、安定株主だからといって安心できる時代ではないということです。
コーポレートガバナンス、M&Aなどを上場企業で担当される方には大変参考になり、面白い内容かと思います。
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