「同意なき買収」が着実に増えています - そろそろ海外企業による買収が出てくるのでは?
A Z-COM丸和ホールディングスが同意なき買収の提案
3月21日にA Z-COM丸和ホールディングスがC&Fロジホールディングスに対する同意なき買収を提案しました。以下のプレスリリースのとおりです。
併せて、補足資料を公表しています。
補足資料の5ページに次の記述があり、また補足資料全体を見ると経産省の「企業買収における⾏動指針」に照らした提案の構成になっている印象を受けます。当然かも知れませんが。
日本企業同士の同意なき買収の事例ですが、着実に増えていますね。このnoteでもちょくちょく取り上げているところですが。最近では、ブラザー工業のケースもあります。
海外企業による同意なき買収もそろそろ来るかも知れません
そろそろ海外企業による日本企業に対する同意なき買収も出てくると思います。今は、海外の事業会社は同意なき買収が日本で受け入れられるかの様子見をしているのだと思います。つまり、機が熟するのを待っているように思えます。
日本でも同意なき買収が1つの企業価値の手法として受け入れられてきた段階で、日本企業で高いブランド力や高い技術力を有する企業を買いに来ると思います。特に中国企業は、技術力では技術分野によっては日本企業を凌駕していますが、日本の市場に入るには苦労しているところもあり、商圏やブランド力を得るために日本企業を買収して、日本の工場に自社の旗を掲げたいと思っているところはあるのだと思います。
昨日の本日の日経新聞でも次の記事がありまししたが、「同意なき買収」を促進する内容の記事ですね。
こういった報道を海外企業は見ているように思います。日経新聞の記事のトーンなども見て、同意なき買収の案件が更に積みあがってきたタイミングを見計らっているのだと思います。
ROE低迷が数期にわたり続く企業は要注意
上場企業各社の業績は好調で、ROEも改善されている状況ですが、そんな中、ROEの低迷(具体的には5%未満)が数期連続で続いている企業は買収のリスク大ですね。そういう企業はPBRも低いことが多く、市場株価に30%~40%のプレミアムを乗せて、買収者がTOB提案をした場合は、機関投資家の多くは売却します。そもそも株主資本コストの8%(伊藤レポートで言っている日本企業の平均)をROEが下回るだけでも問題なのに5%を下回ることで機関投資家は怒り心頭なのですから、当然です。
また、個人株主も確実に売りますね。最近、株主資本コストを下げるには個人株主を増やすべきという話も証券会社の方から聞いたことがありますが、TOBの場合には個人株主はさっさと株を売ります。これも当然ですね。そういうことを考えると、個人株主を増やすことを煽る信託銀行や証券会社などの業者の言葉を鵜呑みにするのはリスキーかなと思います。そういう提案を受けた場合に、「個人株主が増えることのリスクは何ですか?」ということを明確に確認しておいた方がよいです。業者は自社に都合の良いことしか言いませんので・・。
ということで、ROE低迷企業は同意なき買収のリスクが高いということを経営トップが認識し、同意なき買収が提案された場合にどうするかシミュレーションをしておくことが大事です。
もっとも同意なき買収の提案は、機関投資家や個人株主には都合が良いので、誰にとってのリスクかというと、経営トップはじめ経営陣(→買収されると多くの場合、1年後には任期満了でクビ)、40歳以上の社員(→リストラ対象。特に部長クラス)ですが。