「大株主がセブン&アイに書簡」との報道 - アクティブな投資家の動き
セブン&アイの株主がセブンに買収交渉促す旨の報道
カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールによるセブン&アイ・ホールディングスへの買収提案に関し、セブン&アイの長期株主が同社の取締役会に書簡を送り、交渉への積極的な関与などを要求したとの報道がありました。次のとおりです。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83164150R30C24A8EA5000/
今回の買収提案をセブン&アイが受け入れるか、拒絶するかにより、セブン&アイの株価、クシュタール社の株価は大きく変化しますので、「早く検討を進めて考えを公表してくれ」ということなのだと思います。
アクティティブな機関投資家も動きます
今回のようなケースはセブン&アイのケースに限らず、この手の買収提案事例では生じるでしょうね。報道のとおりアーチザン・パートナーズは長期保有株主であり、アクティビストではないですが、「アクティブな投資家」と言えるのだと私は思います。
アクティブな投資家とは、自ら株主提案等を行うことはしないが、コーポレーションアクションがあった時には、会社に対して自身の意見や提案を明確に表明するという投資家といったところでしょうか。
そもそも機関投資家は、投資先企業とのIR個別取材であったり、社長スモールミーティング、海外ロードショーで会社には普段から自社の意見は伝えていますので、その点ではアクティブではありますが、今回のように書簡とiいった形で提言をすると重みが増すと思います。不思議なもので、同じ意見であっても口頭で伝えると軽く扱われるが、書面で伝えると重みが増しますよね。
平時における社外取の認識の強化が大事
今回の買収提案は最終的には取締役会が判断することにはなりますが、特別委員会が最初に判断をし、特別委員会の判断を取締役会は「最大限尊重する」ことになっています。特別委員会の判断に法的に拘束されるわけではないですが、事実上は拘束されると言ってよいと思います(話は変わりますが、買収防衛策でも特別委員会の判断とその判断の扱いに関する取締役会の関係は出てきます)。
この特別委員会の役割はとても重要です。社外取締役には色々な属性の方がいますが、事業やビジネスを理解できる方の存在が重要な気がします。財務の専門知識のある方も当然必要ですが、財務数値に落とし込むには、その前提となるビジネスの評価があるのであり、そこをどこまで理解できるかがポイントになります。事業価値を評価するには、その企業の将来フリーキャッシュフローが肝になりますが、そこを本当に真剣につきつめるのであれば事業に対する深い造詣が必要です。
とは言うものの、社外取締役は会社から給料を貰っている以上、買収提案を真の意味で公正に評価できるのかというと難しいところもあります。
会社の意思に反する意見を強く言うと、会社によっては任期満了でお役御免となるかも知れませんし。社外取締役は正直なところ「美味しい仕事」ですので、これは痛いですよね。
いずれにせよ、特別委員会の役割は非常に重要になってきますので、上場企業各社は有事の際に特別委員会を組成することを考え、買収行動指針では何が求められているのか、特別委員会の役割は何であるかを、今回のセブン&アイのケースを自社の社外取にじっくりと説明しておくことが大事になるでしょう。