コスモエネルギーが買収防衛策を廃止 ー ところで平時導入型の買収防衛策を導入するには?
コスモエネルギーが買収防衛策を廃止
コスモエネルギーと旧村上ファンド系の投資会社との攻防ですが、岩谷産業が投資会社の保有株式を買い取ることで終結しましたが、コスモエネルギーは12月4日に次のプレスリリースを公表しています。
https://www.cosmo-energy.co.jp/content/dam/corp/jp/ja/news/2023/12/04-4/pdf/231204jp_04.pdf
なんら驚く内容ではなく、大量買付者がいなくなったので廃止するというものです。今回のコスモエネルギーのように大量買付者が出現して急遽導入する買収防衛策は、有事導入型の買収防衛策といいます。一方、買収者が全く出現していない段階で、株主総会の承認を得て導入する買収防衛策は平時導入型の買収防衛策といいます。
この平時導入型は、この数年で導入企業数はかなり減っていますが、最近の敵対的買収やアクティビスト活動の増加の状況に鑑みて、平時から導入しておきたいと思っている企業も実は多いのではと思います。
特に、株式時価総額が数十億円から数百億円規模の小型銘柄の企業であれば買収されるリスクも低くないところ、買収防衛策は企業にとって大きな武器となるからです。有事の時に買収防衛策を導入しようとなると、その時の株主の判断如何によっては否決される可能性も十分にあるので、予め導入し、かつそれにより買収者に「番犬注意」をアピールするということです。
平時導入型の買収防衛策の導入のポイント
では、平時導入型について株主総会で株主の賛同を得るにはどうすれば良いのでしょうか?安定株主ががっちりいる会社は問題ないですが、それなりの国内機関投資家がいる場合、この賛成票をどうすれば得られるかということです。
結論からいいますと、ポイントは取締役会の構成であり、社外取締役を過半数とすることです。
では、どの時点で過半数いれば良いかですが、これは機関投資家によって少し考えが異なるのかも知れませんが、私の実務経験では、買収防衛策の導入を定時株主総会で付議した直後の時点で過半数いれば問題ないと考える投資家が多いように思います。
ただし、いくら社外取締役を過半数にしても、平時導入型の買収防衛策は、そもそも反対という機関投資家もそれなりにいます。この手の機関投資家の賛成票を獲得するのは無理ですので、諦めるしかありません。各社の議決権行使の個別結果を見て、買収防衛策議案で賛成数が「ゼロ」というところはこの機関投資家と考えてよいかと思います。
なお、社外取締役比率が過半数でなくても導入理由を説明すれば賛成となるのではないか?という意見を持つ方もいるかも知れませんが、可能性としてはゼロではないと思いますが、社外取が過半数という基準を設定している以上は賛成は厳しいかなと思います。
平時導入型は基本的に批判が強いです
平時導入型の買収防衛策は市場関係者全体としては反対の意見が強いです。有事の際に「株主による是々非々の判断を受けよ」というのが、機関投資家の考えです。個人的にも「まあそうだよな」とは思います。
けど、その一方で、突如として買収者が出現すると、経営陣はひたすらその対応にのみ追われるというのも事実です。通常の経営が出来なくなると言われており、平時に買収防衛策を導入しておきたいという企業も多いのだと思います。
ただ、気をつけるべきことは、平時導入型の買収防衛策を持つがゆえに、取締役選任議案に反対する機関投資家もいるという点です。一部そういう機関投資家がいるだけで、まだ数は少ないはずですが、今後、こういう機関投資家も増える可能性があるかなと思っています。