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大正製薬のMBO価格に投資顧問が意見表明 ー 市場退場の際にはPBR1倍を超えるMBO価格が「市場退場の美学」ですね


大正製薬のMBOに投資顧問が意見

既に新聞報道のとおり大正製薬ホールディングスがMBOを公表しておりますが、MBO価格が1株8620円で、TOB公表前営業日の終値5515円に対して約56%のプレミアムのようですね。

これを見えたときに「おおー凄い!」と驚きましたが、先日、このMBO価格に対してカタリスト投資顧問が意見書を次のとおり公表しました。
https://www.japancatalyst.com/pdf/JCI_TAISHO_20231201.pdf

要するに、MBO価格が低いので、こんなMBO価格では少数株主の利益を害するといった内容ですね。意見書に次のような記載があります。

しかしながら、東京証券取引所からPBR1倍割れ改善要請が公表され、PBR1倍が最低水準であるとの社会的通念が形成されつつあるなかで、1倍を下回る0.85倍というMBO価格での市場からの退場は、少数株主を軽視した判断であると我々は考えます。本件MBOにおいて、少数株主保護のための最後の砦である特別委員会が適切に機能しなかったのではないかと疑念し、ここに意見表明します。

「大正製薬ホールディングス株式会社(4581)の MBO に関する意見」より一部抜粋

そうなんです。MBO価格については、何度かnoteで記事を書いていますが、現状の市場株価に対して「プレミアムXX%」に個人投資家は踊らされてはいけないのです。「プレミアムXX%」とあると、株主は「ラッキー」と思ってしまいますが、単純に喜ぶ前に「このプレミアムで十分か?」「もっと高い価格でMBOはされるべきでは?」と疑う姿勢が大事です。プレミアムを付けたところで、そのプレミアム価格をベースとしたPBRが1倍割れしていた場合は問題です。さらに、その企業の株主資本比率が高い場合には大問題かと思います。

市場退場の美学

私は大正製薬の株式を保有しておらず、同社の過去の株価推移も分からないので大正製薬の事案について詳しく語ることは出来ませんので、一般論として話をします。毎期の利益を内部留保としてせっせと貯めこんでおきながら、PBR1倍割れの低いMBO価格で市場退場すると、ため込んだ株主資本は、経営陣等の特定の株主のものになってしまいます。

その企業の株式を長期で保有してきた株主の中には、いつか株価が大きく上がると思い保有している人もそれなりにいると思いますが、PBR1倍を下回るMBO価格だと、このような株主の期待を裏切ることになるのではないでしょうか。その企業を応援してくれていた株主の恩に報いるにはMBO価格は株主の期待を大きく上回るべきであり、PBR1倍割れのMBO価格は「市場退場の美学」に反する気がします。

余談ですが、私の投資先銘柄の中にもオーナー企業でキャッシュリッチの企業がありますが、「PBR1倍割れでMBOなどすると今の世の中、株主がだまっていませんよ。そんなことはないように注意してくださいね」とその企業のIR部門に時々指摘をしています。多分、面倒な個人株主とその企業には思われているに違いないです・・