今さら聞けない株式投資での経営指標 ー 今回はネットキャッシュ比率
今回のお話のポイント
本日の話はネットキャッシュ関係のお話です。ポイントは次のとおりです。
ネットキャッシュの算式について
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
潤沢なネットキャッシュ企業はアクティビスト(物言う株主)のターゲットになりやすい。M&Aアクティビズムよりバランスシートアクティイムズの方が簡単であり、多くの投資家の賛同が得やすいため
ネットキャッシュ
これまでROE、PBRについてお話をしましたが、今回はネットキャッシュ比率です。キャッシュの潤沢な企業は財務も健全で、株主還元の余地も高いので投資先候補銘柄として雑誌でもランキングされることが多いと思います。では、この「キャッシュリッチ」とはどのように算定するのでしょうか?「キャッシュがリッチ=金を潤沢に持っている」ということは多くの方はイメージされるかと思います。
ネットキャッシュの算式はいくつかあると思いますが、通常は次のような計算式です。
ネットキャッシュ=現預金 + 有価証券 + 政策保有株式 - 有利子負債
現預金や有価証券はバランスシートの流動資産にある科目で、読んで字のごとしですが、これに政策保有株式を加えてよいかなと思います。政策保有株式はこれまでは岩盤として現金とは別扱いでしたが、縮減の流れが加速する中、今後は売却される資産になりますので現預金と同等に扱うのが妥当な気がします。ここから、借金として有利子負債を引きます。これが良く見られるネットキャッシュのように思います。
他には次のような算式もあると思います。
ネットキャッシュ=流動資産 + 政策保有株式 ー 負債
たしか「わが投資術 市場は誰に微笑むか」でもこのような算式であった記憶があります。比較的容易に換金できる資産(=流動資産)から、会社の負債(流動負債+固定負債)全体を引きます。流動資産とは現金化しやすい資産ということで現預金のほかに、売掛債権、有価証券、棚卸資産などが含まれています。棚卸資産には製品の他に、現材料、半製品、仕掛品もあるので、そのままの価格で全てが現金化できるものではないので本当はディスカウントする必要があるのかも知れませんが。
資産には固定資産もありますが、固定資産は土地であったり、設備であり、容易に売却できるものでもないでので考慮していません。ただし、前述のとおり固定資産の中の投資有価証券の中から、政策保有株式のみは加えます。
説明を忘れておりましたが、政策保有株式は有価証券報告書に記載の「純投資目的以外の投資株式」の数値を拾います。
ネットキャッシュ比率
これは次の算式です。
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
これが1倍上回る企業は、まるまる買収してもそれを上回るキャッシュがもれなくついてくるということです。
例えばネットキャッシュ200億円で時価総額が100億円とすると、キャッシュ比率は2倍ですが、これは銀行で借入をして100億円で買収してもキャッシュ200億円があるので、直ぐに銀行に借金を返済しても、100億円のキャッシュがまるまる手に入るということです。
1倍を下まわっていても1に近いのであれば、高いネットキャッシュ比率と言えます。
潤沢なネットキャッシュ企業はアクティビストが手を付けやすい
キャッシュリッチ企業はアクティビストにとって魅力的な企業と言えます。近年、アクティビストの活動が非常に活発ですが、アクティビストの活動には相当のリソースが必要になります。
M&Aアクティビスム(数年前に某証券会社の投資銀行とアクティビストの会話をした際にこういう言い方をしていました)は事業ポートフォリオの見直しが該当しますが、そのためにはアクティビストは大手戦略系コンサルを起用したりして相当な金がかかると思いますし、そもそもM&Aアクティビズムは機関投資家や個人株主の賛同がどこまで得られるか現時点では不透明です。コスト倒れになる可能性もあります。
一方、株主還元等のバランスシートアクティビズムはシンプルで、主張が多くの株主に受け入れられる可能性が高いです。このため、キャッシュが潤沢な企業はバランスシートアクティビズムのターゲットになりやすいのです。
以上になります。ブログを読まれてお気づきのことやご質問、ご感想など何かありましたら、コメント又はnoteのトップページの一番下の「クリエイターにお問い合わせ」からご遠慮なくご連絡頂ければと思います。