機関投資家の議決権行使基準 - 三菱UFJ信託銀行~27年4月から基準が厳格化
三菱UFJ信託銀行の取締役選任議案の議決権行使基準
本日は三菱UFJ信託銀行の議決行使基準になります。以下が24年4月1日改定の議決権行使基準です。
https://www.tr.mufg.jp/houjin/jutaku/pdf/unyou_kabu_10_pdf.pdf
次の場合には、代表者の取締役選任議案に反対となっています。
過去3期連続で自己資本利益率(ROE)が一定水準(5%)を下回り、かつ今後改善が見込めず、経営責任があると判断する場合
業種内での相対的順位には関係なく、一律5%としていますね。もっとも、例外基準があり今後改善が見込めると判断する場合には賛成となります。
また、反対の対象者が代表取締役のみとなっている点もポイントですね。取締役を3年、5年とやっていても、常務や専務、またはヒラの取締役の場合には許されるということです。従前は反対の対象者は3年以上の在任年数の取締役でしたが、代表者に変更されました。ROE向上の最終責任を負うのは代表者であるという思想なのだと思います。
2027年4月からはROE基準厳格化
現状はROE5%が反対の基準ですが、27年4月からはROE基準を8%に引き上げるとともに、かつPBR1倍を下回る場合を反対の判断基準とする予定のようです。このあたりは議決権行使基準の改定理由にその背景等について次のとおり記載されています。
「ROE は資本コストを超えることが求められることから、5%では株主価値向上には不十分と考えており、資本コストを上回る水準として、今後は ROE8%を基準として設定します。 ただし、資本コストが8%以下の企業も存在するため、PBR1 倍以上(ROE≧資本コスト)と組み合わせた基準とします。議決権行使基準の適用は、ビジネスモデル変革や事業ポートフォ リオの入替など対応に時間を要することや企業側でそれを実行する体制・リソース確保が必 要であることを踏まえ、2024 年度からこの水準での計測を始め、3 年後の 2027年4 月より、 まずは TOPIX500 の企業を対象に基準適用し、以後、順次適用対象を拡大します。適用時期を2027年4月としたのは、企業の取組み期間を踏まえたものであり、2027 年以前においても、対話で改善を求めたのにもかかわらず資本コストを意識した経営方針が示されない場合等には、代表取締役選任に反対致します。 なお、ROE8%やPBR1 倍以上であっても、それで十分というものではなく、継続的に株主価値向上を目指して頂きたいと考えています」
三菱UFJ信託に限らず、ROE8%の基準に引き上げる機関投資家は今後増えるでしょうね。ROE5%は企業が達成すべき最低のミニマム基準であり、多くのの企業の株主資本コストは8%を超えることからROE8%は必須というのは機関投資家として当然と言えば、当然です。
ROE5%を大きく下回る企業も相当数あると思います。そういう企業はROE5%を超えればひとまず経営トップの賛成率を上げることが出来ると考えて「目指せROE5%!」を内部目標に掲げているかと思いますが、それでは全く不十分で、今後はROE8%がマストになるので、ここはしっかりと認識されることが大事です。