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プロフェッショナルの決断

みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・エッセイスト書評家 として、
自らを定義しています。

昨日(2024.5.26)は、
日本競馬の祭典
東京優駿(日本ダービー)が開催された。

勝ったのは9番人気
ダノンデサイル(横山典弘 騎手騎乗)

横山典弘 騎手は
私が競馬を見始めた頃から
既に第一線で活躍されていたので
感慨も ひとしおだったが、
勝利騎手ジョッキーインタビューで
改めて「プロフェッショナル」の
凄みを実感した。

それは単に
(といっては語弊があるかもしれぬが)
ダービーを勝ったからではない。

今回はそんな話。


クラシック3冠について

競馬に明るくない人のために
簡単に説明すると、
日本の中央競馬界では
一生に一度しかチャンスのない
3歳世代で3つの大レースがある。

それが
・皐月賞(4月)
東京優駿日本ダービー(5月)
・菊花賞(10月)
である。

この3つを俗に
「クラシック3冠」といい、
3つを全て勝利した馬は
「三冠馬」と呼ばれる。

牝馬メスの馬にも 同様の「牝馬3冠」があるが
 本稿には関係ないので割愛する)

これらのレースは 馬の一生において
一度しか挑戦できないため、
とても価値の高いレースとされている。

8,000頭近い
同世代の競走馬の中で
各レースに出走できるのは
わずか 18頭のみである。
そもそも出走することすら難しいのだ。

そのため騎手や馬主はもちろん、
馬の生産者や調教師といった
競馬関係者にとっても
是が非でも勝ちたいレースである。

皐月賞 競争除外の英断

スタート直前での異変

今年の皐月賞(2024.4.14)、
ダノンデサイルも出走にこぎつけた。

周りは強敵ばかりだが、
鞍上は百戦錬磨の大ベテラン
横山典弘 騎手。

だが、スタート直前に
鞍上は 同馬の異変を察知する。

実は このとき、同馬は
右前肢跛行という
アクシデントを発症していたのだ。

- ここで騎手としては大きな判断を迫られる -

目先の利益に飛びつかない

前述のとおり、クラシックは
出走することすら難しいレース。

ここで出走を取りやめてしまえば、
せっかく勝てるかもしれないチャンスを
みすみす放棄することになってしまう。

それに骨折とは違って無理を強いれば
走れないわけではない。
最悪、出走までは目を瞑って
ダメだったら競走中に発症したことに
すればいいではないか。
(※ 横山騎手は このように考えていないと思う)

騎手によっては、
そのような判断をしても
何ら おかしくはない。

たとえば苦節の末にクラシックに
騎乗が叶った若手騎手などであれば、
尚更 そのように思うかもしれない。
(※ 全て筆者の妄想である)

当の 横山騎手はどう判断したか。

彼が出した結論は
「レースはできない」
すなわち、競争除外(棄権)である。

批判を恐れず

果たして、この判断は正しかったのだろうか。

先にも書いたが、
骨折ほどの重症ではないのだ。
多少の無理を強いれば、
走ることはできたのではないか?

それでなくとも、競走馬には
いつ何時アクシデントが
襲ってくるか分からない。

この先、残りのクラシックや
重賞(格の高い)レースに
出走できる保証はどこにもないのだ。

そのときになって、
「皐月賞が唯一のチャンスだったのに…」
「あのとき、無理にでも走っていれば…」
「そもそも本当に走れなかったのか?」
と後悔することになるかもしれない。

そうなったとき、同馬の関係者から
最も恨みを買うのは
出走取消を決断した騎手である。

それならば
「出走したけど勝てなかった」方が、
まだ関係者も 諦めがつくというものだ。

多くの関係者の期待、
あるいは彼らの人生を
左右するほどの決断を
自分ひとりで下さなければならない。

この重圧と責任感は、
およそ常人には
計り知れないものがあると考える。

あの決断は間違っていなかった

そして昨日の日本ダービーである。

一番人気の皐月賞馬
ジャスティンミラノらを交わして
見事 ダノンデサイルが 先頭でゴールした。

ゴール後の勝利騎手ジョッキーインタビューでの
横山騎手の言葉が なんとも感慨深い。

日本ダービーに勝ったことは嬉しんですけど、やっぱり皐月賞(レース前に右前肢跛行で競走除外)のとき、自分の決断が間違っていなかったんだなと。ああいうことがあっても馬を大事にしていれば応えてくれるので、すごく感謝しています。中間はまだいいとき時のデサイルの走りではなかったですけど、この前よりは良かったので、きょうは自信を持って乗れました。
(※ インタビューより 一部抜粋)

出典:下記記事より

出典記事 ↓

ダービーを勝てたから
皐月賞での競争除外の判断が
正しかったというのは、
ハッキリ言って 結果論に過ぎない。

競馬に絶対はないのだから、
負ける確率だって十分にある。
ましてや9番人気の評価の馬である。

これが もし大敗でもしていたら、
「やはり皐月賞で勝負しておくべき
 だったのではないか…」
と言われても
仕方がなかったかもしれない。

何しろ、競争除外と判断した根拠は
騎手自身の感性だったのだから。
(後の検査で、正しかったことが分かる)

自らの判断で、
多くの人の人生を左右しかねない場面

周りが「Yes」を求める中、
そこで 自信 と 勇気 を持って
「No!」と言えるかどうか

私は このインタビューと
皐月賞からの経緯を振り返って、
その 騎乗技術 以上に
プロフェッショナルの凄みを
感じたのだった。

お読みいただき、ありがとうございました。

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Naseka@令和の哲学者
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