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[書評] シンプルに生きる

みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。

私は「シンプル」とか
「ミニマム」といった概念が好きだ。
ミニマリストとまではいかないが、
比較的シンプリストには近しいと思う。

ただ、シンプルが好きと言いつつも
十徳ナイフ的なマルチユースなものも
好きで、持ち物は
「少数多機能」的な意味での
少数精鋭が好みである。

基本的に ひとつの用途にしか
使えないというのは、
あまり好みではない。

もっとも 作り手側が
そう言っているだけで、
そのアイテムのポテンシャルを
引き出すのは使い手側の
知恵と工夫だとも思っているのだが。

持ち物に対して
そんな趣向を持つ私だが、
昔からそうだったわけではない。

どちらかといえば物欲が大きく、
部屋と頭の中は 常に多くの物事で
ごちゃついていた。

そんな私が今のような
趣向と思考に至ったのは、
ひとえに この本に出会ったからである。


禅問答のような本

この本を読むまでは
シンプルというものに
美意識を見出してはいなかったのだが、
なぜか不思議と当時の私は
この本に手が伸びたのである。

書店を散策中に
平積みになっていたのを見て
手に取った記憶はあるのだが、
なぜ興味を惹かれたのかまでは
残念ながら覚えていない。
まぁかれこれ10年以上前の話であるから、
致し方ないところはある。

不思議といえば、この本は
読む度に不思議な感覚に囚われる。

文体は(それこそ)シンプルな
「です・ます調」なのだが、
なぜか著者と対峙して
禅問答を受けているような感覚になるのだ。

よく
「読者に語りかけるような本」
などというが、
これぞまさしく というやつである。

です・ます調の本など
これまで いくつも読んできたが、
ここまで著者自身の輪郭を感じた本は
私は出会ったことがないかもしれない。
(思い出せないだけかもしれないが)

日本文化の精神の行方

筆者はフランス生まれながら、
日本の精神文化にも理解が深く
禅や侘び寂びといった概念が
その身に修められているようである。

対して現代では
私を含めて日本人の方が、
欧米化・グローバル化や
高度な文明化によって
その精神を忘れがちなのかもしれない。

もちろん それらが
皆 悪いとは言わないが、
とはいえ それらによって
却って苦しんでいる人も
少なくはないように思える。

欲するが故に
手に入れられぬ苦しみを味わい、
満足できぬが故に
常に何かを求めて駆け回る。

100年前の人々から見れば
驚くほどに便利なものに囲まれて
十分どころか
過剰なものに溢れていても、
現代人は どこかで何かが
足りないと思っている。

その正体不明の欠乏感と対峙し、
自身が真に満足する状態が何かを知る。

それが豊かな暮らし、豊かな人生を
送るためには欠かせないのだ。

資本主義を好むのか否か

そもそも私たちは
(少なくとも日本人は)
生まれたときから資本主義社会の中で
育ってきているから、もはや無意識に
その原理が刷り込まれている。

資本主義とは
「今日より明日」
「今年より来年」
が成長していくことを
前提としたシステムであるから、
経済的な視点からは どんどんお金を
市民に消費してもらわなければならない。

そうでなければ 設備投資も借金も、
文字どおり ただの
「負債」になってしまう。

だから我々は、ごく自然に
「足るを知らぬ」状態に
誘導されているのだ。

そんな資本主義が導く世界は、
資金や資産を多く持つ者が楽しみ、
持たざる者は いつも渇望に苛まれる。

その善悪をここで論じるつもりはない。

私だって資産家ではないが
少なからず資本主義の恩恵を得ているし、
他のシステムよりは
幾分 理に適っているから
これだけ世界に広がっているのだろう。

だが 私は、「価値観」としては
あまり資本主義は好きではない。

飽くなき欲望を剥き出しにするよりは、
慎ましくありたい。

少なくとも物質的な面においては、
「足るを知らぬ」者より
「足るを知る」者でありたい。

この本を読んで禅問答を繰り返すうちに、
私の内には そんな価値観があることに
気付くことができたのだ。

まとめ

私がシンプルが好きと言いつつ
多機能で ごちゃごちゃした
アイテムを好むのは、
元々 雑多な中で生きてきたところに
この本でシンプルを愛することを
覚えたからだ。

これはこれで良し悪しがあるが、
私なりの個性や感性として
それなりに気に入っている。

あなたが 多く物に囲まれた
今の生活を愛してやまないのならば、
それをとやかく言うつもりはない。

でも 心のどこかで満たされない思いを
感じているのならば、
一度 この本を読んでみることを
オススメしたい。

あなたが真に求めている
暮らしのあり方が、
筆者との対話の中で
見えてくることだろう。

こんな人にオススメ!

・シンプルライフについて
 知りたい人や興味がある人
・旺盛な物欲に悩んでいる人
・どこか満たされない思いを抱えている人
・品性を身に着けたい人

こんな人には合わないかも…

・たくさんの物に囲まれるのが幸せな人
・侘び寂びの世界が合わない人

お読みいただき、
ありがとうございました。

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Naseka@令和の哲学者
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