[書評] 資本主義の次に来る世界
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・エッセイスト・書評家 として、
自らを定義しています。
そもそも「資本主義」とは何であろうか?
私は この世に生を受けて以来、
一貫して 資本主義 の世界に生きている。
そして おそらく、
これを読んでいる あなた も
そうではないだろうか?
(note の ボリュームゾーン的に推定して)
「当たり前」となっているものほど、
意識して考えるのが難しいことはない。
私たちは今、どんな世界に生きているのか。
そして、その次に来る世界は
いったい どんな姿をしているのだろうか。
飽くなき成長を求める資本主義
以前 私は「資本主義」と「貨幣経済」の
違いについてのエッセイを書いた。
資本主義 と 貨幣経済 が
当たり前の時代を生きる私にとって、
この両者の違いを理解することは
長らく できていなかった。
両者を混同したことから、
「資本主義は必要不可欠」
「資本主義なしで世界は成り立たない」
と考えていたが、この本を読んで
初めて その認識の誤りに気付いた。
私が「必要不可欠」だと考えていたのは、
「資本主義」ではなく
「貨幣経済」の方だったのだ。
「貨幣経済」そのものには、
「成長」という概念は含まれない。
あくまで経済を動かす手段や媒体として
「貨幣」を用いるというだけのこと。
それに対して「資本主義」は、
常に成長を求める。
いや、正確に言えば
「『常に』成長することを
前提とするシステム」
なのだ。
資本主義が破壊するもの
だが、考えてみれば皮肉なものだ。
私たちは日常生活において
「成長」というものを尊んでいる。
子どもが すくすくと育っていくこと、
自身のスキルが向上していくこと、
大人の考え方ができるようになること…
なのに、成長を是とする資本主義に関しては
その成長が仇となってしまう。
本書の中で
「ジェヴォンズのパラドックス」
という理論が紹介されている。
これによると、技術的な成長により
「より少ない資源の消費で
同じ成果を生み出せる」
ようになったとしても、経済は
「同じ資源の消費で
より多くの成果を生み出す」
方向に進んでしまうらしい。
実際には それどころか、
「より多く資源を消費して
より莫大な成果」を生み出す。
故に、資本主義経済における
「成長」は資源の消費を
止め処なく加速させてしまう。
何しろ資本主義は
「『成果』の成長」を
是としているからだ。
これが近年叫ばれている
環境問題にも繋がっている。
資本主義は、まるでマルチ商法のようだ。
際限なく成長を求める。
マルチ商法における資源(=対象者)が
有限であるが故に
破綻が避けられないのと同様に、
資本主義も 資源が有限である以上
どこかで必ず破綻は避けられない。
その訪れが 10年後なのか、
数世紀 先なのか の違いだけである。
個人でも資本主義からの脱却はできる
日本に住んでいると気付きにくいが、
世界を見渡せば 社会やインフラの
成長を求める人は まだまだ多いだろう。
だが、全世界規模で見たときに
そこに「資本」「経済」の成長が
必要かと言われれば 疑問が浮かぶ。
世界の富の分布は、残酷なほど不公平だ。
最も裕福な1%の年収の合計は、
世界の GDP の 1/4 相当に匹敵する。
私を含めた庶民から見れば、
生きていくのにそれほどの富は
必要とは思えない。
つまり、成長ではなく
不平等の是正(再分配)こそが、
環境保護(資本主義の暴走を止める)と
幸福度の向上 のカギである。
だが、言うは易く行うは難し。
資本主義の世界は
周りの全てが成長を求めるから、
自らが成長を止めることは
周囲に置いていかれることを意味する。
もっと直接的な表現をすれば、
「ひとり負け」の状態になってしまう。
これを国や企業といった
「集団」に求めるのは、
残念ながら非常に難しいだろう。
だが、集団には無理でも
「個人」では できることもある。
企業側の宣伝に乗せられるのではなく、
自らの価値観の下で消費行動をとる。
新製品が発売されたからと言って、
条件反射で飛びつくようなことはしない。
それは 本当に今のあなたに
「必要」なものだろうか?
「欲しい」と「必要」を混同してはいまいか?
「みんなが持っているから欲しい」
と言うとき、
あなたは自分で考えることを
放棄してはいまいか?
これらを一言で表すと
「足るを知る」ということである。
「足るを知る」ことが
できる者が増えていけば、
きっと資本主義の暴走に
ブレーキをかけることができる。
願わくば、それが
取り返しのつかない事態になる前に
実現することだ。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
という有名な言葉があるが、
この問題は歴史から学ぶことはできない。
この先にある「未来」を考えて、
「今」の行動を変えるしかないのだから。
まとめ
資本主義と貨幣経済の違い、
そして資本主義の抱える問題に
気付かせてくれた 啓蒙的な一冊である。
格差是正を主張する者(政治家を含む)は、
この本にあるデータを根拠として
声を大にして 訴えればいいのではないか。
根拠なき主張では響かないし、
主張しても響かないのであれば
弁論術を磨くべきだ。
もしも この先
資本主義を見直す動きが出てきたら、
そのムーブメントの中心には
この本の存在があるかもしれない。
私が生きている間に、
その激動を目にすることはできるだろうか。
こんな人にオススメ!
・資本主義への理解を深めたい人
・今の資本主義の世界に疑問を持つ人
・格差是正を訴える人(政治家を含む)
こんな人には合わないかも…
・資本主義への批判を受け入れたくない人
お読みいただき、ありがとうございました。
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